第73話 雲外蒼天とワンチャンスのメンバー
ニールスは一人城壁を超え、地面に降り立った。
そして天馬から降り、
「君も戦えるのであれば、君より劣る相手でいいから数を減らしておいてくれないか。」
【我は天馬だ。そこに居るドラゴン以外であれば対等以上に渡り合える。ではそこのトロルなどを仕留めておこう。】
天馬はA級扱いの魔獣である。
その上のS級となるとフェンリルやドラゴン等となるが絶対数が少なく、今現在王都を襲っている魔物の多くはB~A級。
それでも王都周辺で活動している魔物の多くがF級であり、少し奥でもせいぜいがE級である事を考えると、B~A級という魔物はとてつもない脅威なのである。
天馬はそれらをいとも簡単に仕留めるという。
一体クーン達はどうやって天馬をテイムしたのか。
そんな事を思っていたが、
【では参る。】
ニールスは天馬を見送った後、自身も剣に炎を纏わせ戦い始めた。
・・・・
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ニールスが一人で魔物相手に無双している頃、ティーデとヒセラは少し離れた場所で既に魔物を多数仕留め、躯の山を築いていた。
先に到達しているはずのセバスチャンが何故この場に居ないのか?
それはフロリーナが急に引き返したのに気が付き、セバスチャン自身もフロリーナの元へと向かった為だ。
「ヒセラ、何で誰も来ないんだろうね?」
水を勢いよく出し魔物に大きな穴を開けて仕留めていくティーデ。
「もしかして場所間違えたかなあ?ねえティーデ、あんた男でしょ?どうなのよ。」
風で魔物を切り刻んで仕留めているのは双子の妹ヒセラ。
2人はクーンがわんこと呼んでいる従魔に乗ってここに来たのだが、2人を先行しているのは天馬のみ。
このせいで2人は実際適当に指示を出し進んでいたのだ。
その結果ニールス達とはずいぶん離れた場所に到達してしまっていた。
そしてその後ろを追いかけている【雲外蒼天】のパーティーメンバー達だが、彼女達は王都を熟知しているので辺境方面へ迷う事なく進んでいた為、2人と合流できなかった。
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フロリーナはふと背後を見る。
自分のすぐ後ろを追ってくると思っていたマースの姿が見えなかったので、戸惑ってしまった。
あら?マースさまはどうしたのかしら?
フロリーナは現在マースに淡い恋心を抱いている。
まだ恋と気が付かない段階。
だが気になる・・・・
す、少しだけ、そう思って何とマースの方へと戻ってしまったのだ。
で、さらに先を行くセバスチャンだが、彼はフロリーナを護るように公爵から密かに頼まれていたので、やはりフロリーナの行動に違和感を感じ、引き返してしまったのだ。
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「何度言われても困るんだよな!仕方がない!少し埋まっておけよ!もし生きていたらまた後で相手にしてやるからさ!」
【だから話を聞けと・・・・】
クーンはトカゲが何度も3人を引き渡せとしか伝えてこないので困っていた。
3人が誰の事か分からなかったからだ。
だからと言って目の前のトカゲ(とクーンが思い込んでいるドラゴン)を相手にばかりはしているのは無理な話で、万が一の襲撃に関し目の前のトカゲが何か関わっていると面倒なので、いったん地面に穴を掘って埋めてしまう事にした。
「じゃあな!」
10メートルほどの深さに掘った穴にトカゲを落とし込み、そのまま埋め戻し固めてしまうクーン。
それを後ろから見ていたヤーナは、
『相変わらず滅茶苦茶ね!あ、また来たわ!どうしようかしら・・・ウィンディーネいける?』
【勿論いけますわ。では行ってきます。】
ヤーナは【ウィンディーネ】を呼び出し、目の前にやってきた魔物に向かうよう頼む。
ヤーナはクーンの事を滅茶苦茶だと評していたが、ヤーナも大概ぶっ飛んでいるのだ。
何故なら今ヤーナの四方には【イフリート】【ウィンディーネ】【シルフ】【ノーム】といった4大精霊を全て呼び出し、同時に使役しているからだ。
「ヤーナもなかなかやるな!」
クーンはヤーナの精霊が魔物を次々と仕留めていくのを見て、そう褒めた。
「そ、そうかしら?でもクーンの方が凄いわよ?」
どうやらお互い褒めて伸びる子だったらしい。
そんな事を言われ、ますます張り切るのだった。
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