第45話 わんこライダー

 わんこが固まって俺達を見つめている。

『どうしたというのですか。気配が違いますし、その人間は?』

『済まぬ。ワシは手傷を負いすぎてな、そんな時、よりにもよって人間のテイマーに見つかってしまい、テイムされてしまったのだ。』

『そんなあり得ない!我が一族が人間如きにテイムされるなど聞いた事もない!』

『そうは言うが、そこにおるのが今の儂の主だがよく見ろ、わかるはずだ。』

 なんだか俺わんこに注目されている?

『・・・・おい!何故人間があれを所持しているのだ!』

『それは分からんが、我がテイムされてしまった理由が分かっただろう。』

『ぐ、仕方がない・・・・このまま座して死を待つのも無念だが、人間に付き従う事の方がもっと屈辱ではあるまいか?』

『そんな事はない。我の見立てでは主は中々に面白い命を持っておる。たかだか100年ほどの辛抱だ。我は受け入れた。其方達も受け入れるのだ。』


 何か重い話をしているのだが。


『少し時間をくれ。話をしておきたい。』

『主よどうする。』

「どれぐらい時間がかかる?それにそんなに長い時間放置してしまえば、こいつら耐えられないのじゃないのか?」

『人間我等を見くびるな!このまま数日は問題ない!!』


 数日と言っているが、明日までもたないのでは?

『主よ、テイマーは5体までと言っていたが、ここには11体おる。このままでは6体を見捨てる事になる。主の信用が置ける人間を連れてこれぬか?』

「テイムさせるのか、それぞれに?」

『そうだ。無理か?できれば一族を離れ離れにはさせたくないのだが。』

「ここから王都までどれぐらいで到達できる?」

『我の背に乗れば、夕方までには行って戻ってくる事が出来るはず。』

 うーん、どうする?俺が行ってもいいが、マースが取り残されるし、マースでは俺の家族やあの2人組に話をする事なんて無理だろうし。


 そう思っていたら一頭俺の所にやってきた。


『私をテイムする事を許そうではないか。私をテイム後に回復させれば、人間2体を素早く乗せ移動できる。』

 選択の余地はない。

「マースできるか?」

「あ、多分できます!さっきのでレベルアップしているので。それに対象がテイムを許可しているので問題ないと思います。」


 意外な事にもう一頭のわんこもあっさりテイムできた。


 そしてシロを経由して俺の魔力を新たなわんこに・・・・何故か名前は【モフ】となったようだ・・・・モフモフだからモフなのか?いいのかそんなので?

 そしてそのまま【モフ】は回復した。


 シロは思った。我の名付けの時はもっといい加減だったと。それなのに今回、主が抱いた不満・・・・根本的に感覚がズレている、シロはそう思ったのだった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



『ちゃんと乗ったか?』


 俺とマースはわんこの背に乗っている。

 ライオンぐらいはあると思ってほしい。

 流石に象ほどの大きさは無いが馬ほどはある。

 そして馬乗りには乗れないので、抱き着くようにしている。

 毛を掴んでしがみ付く感じだ。

 モフモフに埋もれていい感じなんだなこれが。


『主の臭いを辿ればいいか?』

「それは任せる。俺達は森の向こうの草原からやってきた。もし別のルートの方が良ければそれはシロの判断で移動してくれ。俺は森に詳しくないんでな。」

『わかった。人里方面へ移動していく。しっかり掴まれ!』


 俺とマースはわんこの背に乗って移動を開始した。

 魔法の効果でもあるのか、流れるような景色とは裏腹に風を感じないし、息苦しさもない。そして獣の背に乗っているというのに、揺れを全く感じないのだ。

不思議な感覚だ。


 そしてあっという間に森を抜けた。


『あそこにメスがいる。』

メスって・・・・

 見るとフロリーナとヤーナだった。

 セバスチャンは俺達に気が付いているのかどうかは分からんが、わんこに気が付き警戒しているな。

 


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