テイム

第39話 マース・フリッケマ

 Side マース・フリッケマ


 僕の名前はマース・フリッケマ

 最近祝福を受けた10歳の男です。


 その時得たスキルはテイム。

 担当をしてくれたおばちゃんは驚いていましたが、テイムという事は動物を調教、そして使役できるスキルらしいです。

 こうしたスキルを得ると、テイマーと呼ばれるようですが、僕の場合何をテイムできるのかまでは分からなかったそうです。


 魔物、魔獣、家畜等々。

 場合によってはもっと恐ろしい何かを使役できるようですが、果たして僕にそのような事が出来るのでしょうか?


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 僕が祝福を受けて1年が経ちました。

 一つスキルと言うのを隠し、二つスキルという事にしています。

 通常4属性の何かを必ず得るようで、一つスキルの場合、例えば火魔法だけになるそうです。

 僕にはそう言った属性魔法を得る事ができず、何故かテイムだけ。


 水を生成する事のできる魔道具が偶然手に入ったので、僕は水魔法を使えるテイマーという事になっています。


 しかしこの王都ではテイマーとしての仕事は殆どありません。

 あっても僕には条件が厳しすぎて、活動が難しいのです。

 魔物が多くいる森等に出向き、魔物をテイムし持ち帰るという依頼はあるのですが、僕とパーティーを組んでくれる人は皆無で、テイムをするにも危険な場所に1人で向かう事が出来ないので、小動物を細々とテイムしているのが実情です。


 そしてその小動物は、残酷ですがテイムした後に殺し、肉と毛皮を得ています。

 こうして何とか1年は何とか食いつないできましたが、貯えも尽き限界が近い状態となってしまいました。


 そんな時怪しげな商人が僕に声をかけてきました。

 パーティーメンバーを紹介するから魔物をテイムし連れて来いと。

 実際にパーティーメンバーを紹介してもらいましたが、彼等に守られながら森の奥でテイムできたのは最初の1週間程度でした。


 得た金の大半を彼等は護衛代と称し僕から奪っていき、そのお金で飲み食いをし、後は何処かで酒を飲んだり女の人と何やらしたりと酷い有様です。

 そして約1ヶ月が経ち、例の怪しげな商人の人に催促されましたが、護衛なしで森に行くのは無理。

 途方に暮れていた所に、最近よく見かける少年を平原で発見。

 どうやら薬草採取で生計を立てているようで、僕はもうどうにもならない状況まで追い詰められていたので、声を掛けました。


「は、初めまして、そ、そのちょっといいですか?」

 何だろうと言う顔をしていますね。

「どうしたんだい?困った時はお互い様、最も手助けできる範囲でだけど。」

「こ、今度、も、森にい、一緒にい、行ってくれませんか?」


 うわ、思いっきり緊張してしまった!


「危険がないならいいが、そう言うのは依頼を出すかパーティーを組んで一緒に行ったらどうだ?」

 それが出来れば声を掛けなかったんです。

「ぼ、僕、【テイマー】な、なのですが、そ、その、だ、誰もあ、相手ををその、してくれなくて。」


「ああ君って【テイム】の一つスキルだっけ?」

「え?何故僕が本当は一つスキルって知っているんですか?」

 初見で見破るとか、なんて恐ろしい人なんだ!

「ああ俺が一つだからな。君もそうなんじゃないかと思ったんだ。」

「そ、そうでしたか。僕は二つスキルと認識されているのですが、何故か魔法を得られずテイマーだけなんです。スキルはテイムなのでテイマーと言う職業を名乗っています。」


 その後僕がどうやって活動をしているのかを伝え、どうなるだろうと思っていたのですが、迷う事なく僕の願いを快く聞き入れてくれたんです。



「じゃあまず今日だけでも試してみるか?俺の名はクーン・カウペルだ。君の名は?」

「は、はい、ぼ、僕はマース・フリッケマと言います!」


 馬をどうしようかと思ったのですが、何故かお爺さんがやってきて、

「この馬を預かれば宜しいのですな。」


 そう言って引き受けてくれました。

 確かこのクーンと言う人と一緒に、あと女の子2人と共に薬草採取をしているお爺さんだったよね。


 僕はこうしてクーンと言う人と森に向かう事になりました。

 レベルの低い僕は同時に複数の使役は出来ないので、こうして馬を人に預けないと駄目なのです。


 彼との出会いが僕にとって今後どうなるのか?

 神のみぞ知る、かな?

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