融合
第31話 唯我独尊
「すまないな!」
「いえいえ何を仰りますか。私共奴隷商にとって唯我独尊の皆様は大事な商品の提供元なのです。それが消えてしまえば我々も商売あがったりですからね。こうして多少の無理をしてでも皆様方をお助けした、という訳ですよ。」
奴隷商の商店で会話をしているのは、奴隷落ちしたはずの唯我独尊と奴隷商の店主である。
これはどういう事なのか。
時は少し遡り、唯我独尊のメンバーと子飼いの手下が予め目を付けていた少女2人を確保しようとしていた時、草原で薬草採取をしている4名を見つけ、後をつけていた場面である。
この4人は一番脅威と思われる老執事であるセバスチャンと2人の少女フロリーナとヤーナ、そしてクーンの事だ。
唯我独尊のパーティーは周囲に他の冒険者が居ない事を確認し、まずは老執事を無力化させる事にした。
4人に近づき言葉を交わす。
そして4人の気をそらさせている間に特殊なルートで手に入れた吹き矢を遠方から老執事の首目掛けて吹き、見事命中無力化させる。
こうなれば後の3人はまだ子供だ。
老執事を滅多打ちにした後に拘束し、少女2人の衣類を剥ぎ取りもう一人の子供を蹴り飛ばし頭を踏みつける。
「お前の女は貰っていくぜ!」
クーンをさらに蹴り飛ばし無力化させ、さあお持ち帰りだ!
「きゃあ!やめて下さい!」
「フロリーナさまに無礼な!触るな!」
「おうおう、お前らまだ11歳なんだったか・それにしてはと思ったが胸は・・・・殆ど無さそうだが年相応か?だが顔はいいもんなあ!ちょっと楽しませてよ!いや待てよ、ひょっとしたら着やせしてっかあ?」
こうして少女2人を確保した唯我独尊だったが・・・・
念の為男2人を確認するも、老執事は手足の骨が折れ、もう一人の子供も頭から血を流し身動きすらしていない。
2人を見て安心した唯我独尊のメンバー、2人の少女にこれからどうしようかとへらへらしていたのだが、ここで突然異変がおこる。
「ぎゃあ!!」
「いてええ!!!!」
「あ、足があ!!!!」
「ぐぼべぎゃ!」
突然仲間が叫び声をあげ、倒れたのだ。
2人の少女は拘束が解かれた一瞬のスキをついて脱出、倒れている仲間の元へ駆けつけ、老執事を回復させていた。
アイツ聖属性持ちかよ!
しかも首に命中していた針を取り除いてやがる!
だが唯我独尊のメンバーは気が付けば全員倒れてのたうち回っていた。
この場に立っているのはクーンただ一人。
そして老執事であるセバスチャンが少し離れた場所でクーンの様子を確認していた。
この後唯我独尊とその手下は全員セバスチャンの手により捕縛され冒険者ギルドへ通報され、犯罪者として何処かへ連れられて行った・・・・はずだった。
・・・・
・・・
・・
・
唯我独尊とその手下は全員奴隷落ちとなった。
その後は鉱山で働くか戦場の最前線に投入されるか、魔物とひたすら戦わされる事になるか、もはや未来はないはずだったが隷属スキルを所持している奴隷商の所へ連行され、奴隷にさせられたのだが・・・・
この奴隷商、唯我独尊と裏で繋がっており密かに隷属を解除、そして別の犯罪者を身代わりにして唯我独尊を救出させたのである。
「ノモズラナ様、今後は別の名をご用意いたしますし、新たなパーティーとして活動していただけないでしょうか?」
「仕方がないな。パーティーはどうとでもなるが、冒険者としてはもはや活動できぬぞ。カードを没収されたからな。」
「それは心配御座いませぬ。我々にはギルドにも同志がおりますれば、このように新たなカードを作成するなど容易い事でございます。」
「おおすまんなあ!これでまた・・・・覚えてやがれよあの土木野郎!あいつ一体どういう手を使ったのか知らないが、必ず復讐してくれるわ!」
しかし奴隷商は一度遮った。
「その事でございますが、暫し我慢をして頂く事はできませぬか?急ぎで行っていただきたい事がございますのです。」
「急ぎだと?どうしたのだ珍しいな。」
「はい、どうやら最近辺境の地での出来事なのでございますが、辺境の領主が魔境を超えてしまったようで、魔境の主が激高し魔境周辺の領土は全部滅んでしまったとか。」
「クツーゴ領の事ではないのか?もうそれは皆知っているぞ。」
「流石は唯我独尊のリーダー、耳が早いですな。ですが話は此処では終わればよかったのですが、どうやらドラゴンを中心としたS級認定以上の化け物共が王都へ押し寄せているらしいのですよ。」
「何だと!それは不味いではないか!」
「まあまあそう驚く事はないのですよ。まだ時間的な猶予はございます。恐らくあと1ヶ月。その間にテイムできる魔物を確保していただきたいのですよ、もちろんテイマーはこちらで都合を付けます。」
「うん?どういう事だ?」
「現在多くの魔物が王都へ向かっております。魔境の主であるドラゴンから逃れる為で御座いますが、このおかげで普段滅多に姿を現さぬ魔物が姿を現しておるので御座います。この機を逃す理由はございませぬ。」
「しかしテイマーをそう都合よく工面できるのか?」
「それは問題ございませぬ。1年前に教会で祝福を受けたガキのうち、二つスキルのテイマーがおるようでして、既に話は付けております。」
「二つスキルか、それは残念なテイマーだな。」
「ええむしろそのお陰で話は簡単につけられたのですがね。」
「しかし腑に落ちんな。それではいくら助けてもらったとはいえ、割に合わんぞ!」
「それに関してですが、まずはこちらに手付金をご用意しております。そして続きでございますが、宜しければ高級娼館で・・・・」
「何だわかっているじゃないか!」
こうして唯我独尊のパーティーは名を変え活動を再開する事になる。
但し奴隷商が唯我独尊のパーティーに、秘密裏にテイムの活動をさせるのだ。真っ当ではない何かがある。
しかし奴隷商は此処で大いなる間違いを犯していた。
唯我独尊、奴隷商の予想を上回る使えなさっぷりで、思う通りに動いてくれないのだ。
だがそう言ったジョーカーを使いこなしてこその今回の・・・・
こうして不幸なテイマーが何も知らないまま、毒牙にかかろうとしていたのだった。
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