第23話 2人の追放令嬢

 Side 2人の少女


「ど、どうしましょう!」

「どうと言われても、当たって砕けるしかないでしょう?」

「く、砕けるのですか?これ以上砕けるのはもう耐えられそうにありませんわ!」

「何を仰いますか?もう私達は実家を追放されて1年になります!既に退路は断たれている上に、この生活も限界です。手持ちの宝石類は全て換金済みですし・・・・」


 は!これは失礼。ご挨拶遅れましたわね。私はロッベモント王国に於いて5つしかない公爵家の一つ、フェラウデン家の5女として生を受けましたの。

 フロリーナ・フランカ・フェラウデン

 現在11歳。


 親しい方は私をフロリーナと呼んで下さいますので、どうか今後はフロリーナと呼んで下さいね。


 あ、そうそうもう一人の女の子ですが、こちらは私の学友で、幼馴染の

 ヤーナ・アンネリース・レインチェス

 レインチェス侯爵家の3女。やはり11歳ですわ。


「え?ヤーナ、何かしら?」

「先ほどから何を仰っているのですか。また妄想ですか?いい加減その妄想癖はお止めにならないと怖いです。」


「し、失礼ね!」


 今私とヤーナは冒険者ギルドにおりますの。

 そして既に隠居した爺が私達を哀れに思ったのか、ずっと傍に控えてくれておりますの。


 本日も薬草採取を終え、換金すべく受付に向かったのですわ。

 いつもの受付の女性に、と思ったのですがどうやら先に手続きをしているパーティーがありましたので、番が来るまで待っていたのですが、どうやら担当の受付の女性がその人々と別室に向かったようで、暫く待っていたのですわ。


 待てど暮らせど戻ってこないので困惑していたのですが、ここでつい考え事をしていたのですわ。


「フロリーナさま、あの少年が戻ってきましたよ!」

「ええそうね。でも困ったわ。どう声をかけていいのかしら?こんな一つスキルに声をかけられたら、あちらもさぞ迷惑でしょう。」

「しかし相手は平民のようです。何とかなるのでは?」

「しかし追放されたとはいえ、私もヤーナも元は貴族ですわ。平民出身の少年であれば、元貴族の子女とはかかわりになりたくないのではありませんか?今までもそうだったでしょう?そもそも公爵家を追放された小娘に関わろうとする人が、そうそういるとも思えませんわ。」

「今更です!それにもう手持ちのお金が底をついているのですよ?私達では薬草採取しか身を立てる術がないうえに、未だコツがわかりません。しかし昨日も見たでしょう?件の3人は信じられないほどの高品質の薬草を、それも大量に採取していたではありませんか!」

「え、ええ。昨日もそうですが、受付で確認しましたが、たった一日で私達2人が10日かかる金額を得ていたようですし。」

「さあ来ましたよ!あ、絡まれていますね。」

 どうやらあまり良くない噂を聞くパーティーに絡まれた様子ですわね。確か唯我独尊という傍若無人な集団だった気がします。

 かくいう私達も、爺がいなければ卑猥な扱いを受けていたかもしれないのです。

 こう言っては何ですが、公爵家や侯爵家の子女は見目がいい事が多いのですわ。これも個性なのですわ。ですが必ずしもいい事ばかりではなく、それにせめて見た目だけでも好みであればまだしも、私達にも選ぶ権利ぐらいはあっても良いとお思いになりませんか?


 あら、どうやら最近活躍している確かニールスと言う少年がリーダーのパーティー、雲外蒼天と言ったかしら?間に入って下さったようね。

 え?兄弟?成程だからあれほどの薬草を。


「フロリーナさまの想い人はクーンと言う名のようですね!」

「お、おおお、想い人?そそそそんなここっ事はありませんわ!」

「思いっきり動揺していますね。しかしどうしますか?ある程度予想していましたが、どうやら彼も一つスキルですね。しかも土魔法・・・・世間では土木魔法と揶揄されているスキルしか得ていないようですが。」


「そ、それでもですわ!私達とパーティーを組むようなお人好しはもうこの王都にはいませんもの。それと土魔法ではなく土と仰っていましたわ。一体何が違うのでしょうね。」

「はあ。あ、今目が合いましたよ!」


「こ、これは・・・・運命?」

「やはり一目惚れでしたか。しかしイバラの道ですよ?どう見てもかなり濃い運命を背負っていそうですし。そしてどう見ても平民でしょう。」

「ねえ、こちらに向かってきていない?」

「来ていますね。」


 そして何やら複雑そうにしている少年が目の前に。


 しかしその少年が何かを言う前に、受付の女性が何やら私達に囁いてくれます。



「その、お待たせしてしまい申し訳ありません、お詫びと言っては何ですがごにょごにょ・・・・」


 何やら先ほどの少年を見つつ、私達に素晴らしい提案をして下さるとは、なんて素晴らしい!受付の鏡ですわ。


「いいのですか?」

「勿論ですわ!私が責任をもって斡旋いたします。」

「では早速明日の朝、ここで待てば宜しいのですね?」

「さようですわ。では明日。」



 何があったの?

 それは・・・・私達は訳も分からず待っていたのですが、そのお詫びに明日クーンと言う少年のようですが、彼と薬草採取をできるよう段取りを整えて下さるとか。

 そして薬草採取のイロハを教えて下さるとか。

 そしてなお素晴らしい事に、彼は今後王都に腰を落ち着けるとか。

 このままパーティーを組んでしまってはいかがですか?と。

 これは、やっと私達にもチャンスが訪れたのですわ!

 最後のチャンス、ラストチャンス?

 たった一つのチャンス、ワンチャンス?


 この出会いが私とヤーナにとってどうなるのか!

 最近お祈りを忘れていましたが女神様、感謝いたしますわ!


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


『あの嬢、わしらは男の神だというのに女神に感謝を捧げておるぞ?』

『うーん、折角神に祈りを捧げてくれたのじゃ。何かしてやりたいがのう。』

『じゃがワシらは直接あ奴らに干渉はできぬが・・・・とそうじゃ!すっかり忘れておったが例の不幸な転生者、あれの記憶を元に戻してやろうか?』

『あ?ああ、なるほど・・・・え?あいつまだ記憶が戻っておらぬのか?』

『ちょっとしたミスじゃよ。何せ時間が無くてなあ。スキルも少しミスってしまったのじゃよ。』

『それ元に戻したらバランスがおかしくなるのではないか?』

『いやもう既にこの世界は破綻寸前じゃ。この際変化も大事じゃて。』


 クーンは前世の記憶は取り戻せるのか?

 そして2人の美少女との出会いはいかに?


『なんじゃお前、結局期待しておるのではないか?』

『娯楽がないからな、それにあのクーンとやら、たった一つのスキルの本質を全く理解しておらぬからのう。』







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