第21話 受付のお姉さんに聞いてみる

 父上からの連絡によれば、クツーゴ領はドラゴンにより破壊されたらしい。

 クツーゴ男爵とその取り巻きが生存しているかどうかは不明らしいが、まず生きていないだろう、と。


 そりゃそうだ。

 3つの領地をブレスで焼き尽くされたら、その場にいた生身の人間が生きていられるわけがない。


 さて今後はどうするか。

 2人の弟、妹の事もある。

 今の所薬草採取で生計は立てられそうだが、長期的に俺はこの2人とずっと行動を共にすべきかどうか、考えてしまう。

 いや、かわいい弟と妹だ。

 出来ればずっと一緒にいてやりたいが、それは過保護と言うものだ。

 実際ニールスにいは10歳で独立し王都暮らしをしているんだ。

 弟はそれでいいかもしれないが、問題は妹の方だな。

 小さな女の子が一人で生きていくにはあまりにも厳しい世の中だ。

 せめて15歳になるまでは傍に居てあげたい。


 ああそうだ、女の子と言えば昨日もそうだが2人組の女の子を見かけたんだっけ。

 今日なんて買い取りの時にすぐ近くに居たから驚いたが、冷静に考えれば暗くなる前に買い取りにやってくるんだから、時間的にも同じになるのは当然。

 しかし気になる。何だかじーっと見られていた気がするからだ。

 同じぐらいの年代に見えるけれど、2人で暮らしているのだろうか?

 それに近くに控えていた爺さんだな。

 さっき近くで見たからわかるが、あれは強者だ。

 それもとてつもなく強い。

 うん、お姉さんに聞いてみよう。


 俺は受付のお姉さんに、このお姉さんはどうやらこの部屋を出るまで同席するつもりみたいだから、近づいて聞いてみた。


「なあ、一つ聞きたい事があるんだが、答えられる範囲で教えてほしい。」


「あら、何かしら?」

「昨日もそうだが、今日も俺達が薬草採取の後にあんたの所で買取をしてもらっただろう?その後2人組の女の子があんたの所にやってきたはずだ。あの2人と後ろに控えている爺さんってな、あれは一体何者だ?薬草採取をしていると、少し離れた場所にいるのを見かけたが、どう見てもいいところの、つまり身分のある女の子だろう?」


 すると受付のお姉さんは微妙な表情を。

「あら、クーン様はあのお二人がお好みのようね。特に隠し立てするような事でもありませんし、この近辺では有名ですからね、教えて差し上げないでもないですが、クーン様はどちらが好みだったかしら?」


 うん?何を言っているんだこのお姉さんは?


「なあ、好みとか関係あるのか?まだ小さな女の子じゃないか。それに俺が薬草採取をしている近くでわざわざ採取しているんだ。気になるだろう色々と。危険がないのかとか何か仕掛けて来るんじゃないかとか警戒して当然だと思うんだが。」


「ま、まさかあ?あのお二人がそのような事をするはずがありませんわ。あのお二人はクーン様同様一つスキルなのですわ。そのせいでパーティーを組めずにああしてお付きの老執事の警護の下、薬草採取で身を立てようとしているのですわ。それにきっと、あのお二人はクーン様の薬草採取の効率の良さを目の当たりにし、どうしたらいいのか聞きたいのではないかと思いますのよ。」

「なあ何を言っているんだあんた。あの2人は俺と同じ一つスキルなのか?それは今はどうでもいい。俺の薬草採取が効率いい?農民出身ならこれぐらい当然だと思うんだが、他に教えられるような人はそこらにいるんじゃないのか?」


 薬草採取なんて誰でもできるだろう?

 現にティーデとヒセラは俺と同じ程度に採取をしている。


「いえいえ、スキルも無いのにあれほどの量と品質の薬草を採取するとかどう考えても異常ですよ?」

 俺は異常なのか?だが俺以外にも現に採取しているんだが。

「もしよろしければあのお2人と一緒に薬草採取をして頂けませんか?あの2人は一つスキルでさえなければそれなりに良い所に嫁げたのですけれど、1年前の祝福の後、破談になってしまわれて、なんてお可哀想。」


 うわ、これ絶対貴族だ。それも上位の。

 こんな厄介ごとに農民を巻き込むなよ!


 そしてこれは絶対あれだ、おなじみのあれだ!


 【異世界あるある】来たああ!!!!


 【美少女イベント】来たあああ!!!!

 ここは薬草採取を教える事で親密になり、その後同じ一つスキル同士として【パーティー】を組む【イベント】ですね!!


 また変な考えがわいてきたぞ。なんだか俺の頭の中はおめでたいようだ。

【美少女イベント】ってなんだ?

 確かに顔は整いすぎているから美少女?美しいというよりまだ10歳前後だから可愛いだろう?

 その後は【親密】になるのか?

【パーティー】を組む事になる?

 どう見ても足手まとい。

 厄介ごとの臭いがプンプンするんだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る