事実上の追放

第17話 双子と共に

「行ってきます!」

 俺は家族に別れを告げた。


 ぶっちゃけ親父達も逃げるらしいが、逃げた先は王都とは限らない。

 なので、もしかしたら今生の別れになるかもしれない。

 だけど親父は、

「いいか、領地には可能な限り戻るな。そして俺達の行方が分からなくなっても決して探すな。万が一の場合だがニールスは王都に住んでいる。俺達はニールスに連絡ができる。そしてニールスに知らせがなければそれ即ち俺達の死だ。クーン達が生き延びる事を優先しろ。」


 最後に親父はそんな事を言って送り出してくれた。

「あの子達を頼みますよ。」

 お袋も俺に弟と妹を託してくる。双子の面倒を見てほしいと。


 本来なら王都での用が終われば2人は領地に戻る。だが今回ばかりはそれがどうやらできなさそうにない。


「ないと思うがお前達が領地に戻る状況だった場合は、戻る前にニールスに知らせろ。」


 だそうだ。


 そして今回は王都に向けて出発する人数が多い。

 まだ8歳ぐらいの子供も多数いる。

 そして護衛に関してだが、大人が1人もいない。

 ぶっちゃけ俺と似たり寄ったりの子供が20人で護衛として同行するようだ。

 どうやら今回は王都への護衛にかこつけて、1人でも多くの子供を逃がす算段らしい。


 だが大丈夫なのか?

 俺の時は2週間でずいぶん人が減ったぞ?それに案内人ではなく護衛と言う名目になっているのも気になる。

 だがこのまま領地に残っていても死を待つだけだからと、少しでも生き延びる可能性があるならそれに賭けたいらしい。


 ぶっちゃけ他人の生死には責任が持てん。

 せいぜい弟と妹を守るのみだ。

 こっそり親父に言われた事なんだが、

『万が一どうにもならない場合は双子と共に、それも厳しいのであればお前だけでも逃げろ』と。

 そんな無責任な事はしたくないが、全滅よりはましだからと最後に念押しをされた。

 悲しく辛い念押しだ。そうならない事を切に願う。


 そして移動を開始するも、道中他の2領と合流。


 既に話が伝わっていたのか、とんでもない人数になった。

 どう見ても総勢300人は超えている。

 そのうち護衛?と思われるメンバーは50人ほど。

 大人は、誰一人としていなかった。

 やはり他の2領もクツーゴと同じ状況らしく、1週間以内には領主が魔境へ向かうらしい。3領での競争。巻き込まれた俺達はたまったもんじゃない。

 しかも場合によっては死が待っている。いやその確率は高い。

 だから領民は皆逃げ出す算段をしていて、その前にできるだけ領地から人を逃がしておきたい、だから無理してまだ10歳未満の子までこうして送り出している。

 8歳までであればなんとか自力で王都まで歩く事が出来るだろう。

 其れより幼いと自力では厳しすぎる。


 そして今回こんなに大所帯だ。食料はどうなんだ?

 前回は現地調達、水もどっかで汲んだ。


 そして今回も現地調達らしい。

 だが今回は人数が多い。多すぎる。

 しかもまとめ役の大人がいない。

 せいぜい15歳ぐらいの独立前の年上が数人いる程度。

 15歳になれば否応なしに独立させられるからな、長男と次男以外は。

 長男は跡取り。そして次男は以前にも触れた気がするが万が一の場合に備え残すらしい。

 万が一って。


 まあ今回は良くも悪くも護衛が多いから、周囲は護衛に囲まれた形になっている。

 そして護衛の一部は狩りに出向く。

 今回は王都には早めに着いてもいいからと速度重視で移動している。

 護衛はそれなりに体力もあるから、こうして狩りに向かう事になる。



 狩りは順番だ。

 俺も例外なく駆り出された。

 まあ狩り以外にも魔物の駆除もあるんだが。

 そして俺の弟と妹なんだが体は年齢の割に小さいのに、家の手伝いで体力を随分つける事が出来ていたようで、問題なかった。

 そしてたまに俺は2人を連れて狩りに行った。

 2人は、俺が思っていたよりも強かった。

 それぞれ魔法の属性が違い、弟は水、妹は風だ。


 今にして思えばまだ祝福を受けていないのにどうして魔法が使えたのか甚だ疑問だが、俺自身そう言った知識に疎かったから、疑問にすら思っていなかったりする。


 そして今回ぶっちゃけ楽だった。


 流石に王都に到着するまで魔力切れを起こすのはあまりに危険だから、いつものように寝る前に魔力を枯渇させ、気絶しながら寝る、という事はしない。

 なので?俺は魔力が有り余っていた。

 だから魔物は片っ端から俺が仕留めた。

 まあ色々な【土】を試しつつ魔物を仕留めていたら、いつの間にか近づく魔物は全て俺が仕留めていたといった感じなのだが。

 だって試すのに魔物は都合がいいんだよ。


 地面の土を魔物の真下から槍状に出現させたり、拘束してそのまま別の土の塊で魔物を仕留めたり。

 いやあ案外土って使えるな。

 仕留めた魔物は護衛の人数も多いから、皆片っ端から解体してくれるしさ。

 おかげで素材の回収はしなくて済んだ。ありがたい。

 気が付けば俺は魔物を仕留める担当になっていた。

 勿論俺だけではないが。


 今回は3週間程で到着した。

 どうやら1週間程早く到着してしまったらしい。

 まあそれはいいんだ。

 そして肝心の手続きはまだ先のようだ。

 宿を確保しないと。

 その前に宿代はあるのか?

 どうやら仕留めた魔物の素材が沢山あったので、1週間?いやいや300人が2週間は十分暮らしていけるだけの金額になったらしい。

 一緒に行動した人数は多かったが、魔物の素材も人数が多かったおかげでかなりの数を王都に運ぶ事ができた。

 そして今回は・・・・犠牲者がなかった・・・・なかったよな?俺は少なくとも誰か消えたとか聞いていないぞ?

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