第11話 家族に残念な報告

 俺は村に到着後、自分の住んでいる家に向かったんだが、母親以外居なかった。どうやら親父も兄貴も開墾作業に従事しているらしい。


「あらクーンおかえり。」

「母さんただいま。まだ開墾しているんだって?」


「そうなのよ。村総出で反対しているのだけど、領主様がもっと奥まで行けの一点張りでねえ。このままでは1年しないうちに魔境に到達する勢いなのよ。」


 既に緩衝地帯の半分ほど開墾していたはず。

 そして絶対に超えてはならないのが魔境だ。

 これを超えるとどうなるか分からない。

 もしかしたらとんでもなく強い魔物が即やってくるかもしれない。

 この場合魔境を超えた奴だけ襲われるのか、あるいは村ごと襲われるのか。

 魔境を超えた奴だけならいいが、万が一村ごと襲われるなんてなったら大惨事だ。

 手に負えない魔物、つまりそうだなあ、例えばあり得ないがドラゴンがやってきたら?絶対に勝てない。

 戦おうものなら一瞬でブレスの餌食だな。

 きっと村もあっという間に全滅だ。

 そんな事を思っていると、親父達が戻って来た。


「帰ったぞ・・・・ってクーン、戻っていたのか。で、どうだった?」

 親父の顔色がよくないな。開墾がきついんだろう。

「ただいま親父に兄貴。食事が終われば話すよ。」


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



 5人で昼食を食べた後、俺は報告をした。


「・・・・そうか、たった一つか。厳しいな。」

 2人の兄貴はそれぞれ5と6だったようだ。

 だからここに残って親父の手伝いをしている。

 まあ普通農民とはいえ、長男はそのまま後を継ぐから残り、次男はまあ万が一の時の保険みたいな扱いらしい。

 これはクツーゴ領では当たり前らしいから、きっと他所でも似た感じなんだろう。


「あ、クーンにいだ!おかえり!!」

「おかえりクーンにい!」


 弟と妹は別の場所にいたようで、昼を食べに戻ってきたようだ。


「えー!クーンにいが一つなんて信じられない!」

「だって戻って来た他の人ってクーンにいってきっと10持ってるぞって言ってたよ?」


「いや待てどうしてそうなる?」


 後で聞いた話だと、どうやら俺が【土】スキルで色々作っていたのを、そして弓で鳥を仕留めているのを見たりで勘違いをしていたらしい。


 因みにこんな感じだったらしい・・・・


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「なああのクーンってやつ、すげえな。」


「あ?どうしてだ?」

「だってよお、あいつどうやら多属性持ちらしいって言う噂だぜ?」


「まじで?あいつ土魔法じゃねえのか?」

「いやあいつが鳥を仕留めるの見ただろう?どう見ても風魔法を使っているだろ、あの距離だぞ、俺達の力で矢が届くわけねえ。」


「あ、それ私も気が付いていたわ。弓のスキルもあるんじゃない?それに道具作成とか細工かしら?」

「あいつ料理スキルも持っているだろう?それに解体の速度もそうだし、きっとあのナイフの扱い、剣術も持っているぞ?それよりあいつの異常なほどの採取量、採取は確実だな。」


「ええとじゃあさ、土と風、採取に道具作成と細工、弓に剣、解体に料理か?」

「これだけで9個だぜ?それよりもさ、あの頑固おやじ共に妙になつかれるのってスキルか?」

「話術か・・・・あいつやっぱり10持っているな。」


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 とまあ、これが俺達と同行した連中の俺に対する認識らしい。

 いや色々おかしいだろう?


 俺達農民なんだ。採取ぐらい誰でもできるだろう?

 それに弓や剣ぐらいこの村に住んでいれば6歳児でも扱えるぞ?


 うーん、なんでだ?俺こそあんた達が羨ましいというのに。


 そんな事を思っていると親父が、

「クーンよ、お前は魔力まだ余っていないか?」

「まだ大丈夫だけど、開墾を手伝うのか?」

「ああ頼む。俺はもう魔力の枯渇寸前さ。こいつらもだ。」


 だから顔色が悪いのか。

「分かったよ、じゃあ食事をしたら案内してよ。」

 早速【土】スキルを使って開墾か。


 食事が終わると俺は親父達の後を追い、開墾の手伝いをした。

「うわ!でっけえ木が生い茂ってやがるな。」


 大人が数人手を繋いでも一周出来ないほどでかい木がそこにはあった。しかもこれを取り除かないとどうにもならないとか。

 それに所々にある大きすぎる岩。

 村長宅ほどあるぞ?

 こんなのどうやってどかすんだ?


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