魔術狩り
黒白 黎
第1-1話
この世には、魔法と魔術の二通りがある。
魔法は一般に公開され、安全面に徹底している。危ないことをする前に緊急停止(ストッパー)が働き事前に止まる機能がある。たとえ怪我をするような状況でも傷一つ与えず鎮まる。
こうしたことから魔法は広く親しまれ、今では魔法なしでは暮らしてはいけないほど進歩している。魔法はみんなに公平に使うことが許された魔法なのだ。
一方で魔術は世界中で禁止されている。なぜなら魔法とは違い、支払う代償が異なるからだ。
魔法は魔素(マナ)と呼ばれる自然のエネルギーを消費することで発動することができるが、魔術はそれとは異なる方法で生み出すため、禁止されたのだ。その代償があまりにも重すぎるのだ。
世界中で禁止しているとはいえ、素直に守る人なんていやしない。魔術は魅せられれば魅力を感じるほどだ。そんなものを視ずに過ごすなんてことはできやしない。
監視塔――罪人を見張るために看守たちが住居として使っている塔だ。看守以外が立ち入ることはめったにない。なぜなら無数に降り注ぐ雷に避けて通れた者がいないからだ。たとえ避けていけたとしても看守の中は巨大な迷路で、生きて目的地にたどり着けた者はいないほど複雑な回路で作られている。
そんな場所に興味本位で近づいた変わった人がいた。
「アリシア。今日も非番なのですね」
アリシア。そう呼ばれて振り向く赤毛の女性。監視塔に勤務してまだ三年だが、監視塔の迷路を知り尽くしたベテランのひとりだ。
「ええ。今日はお暇を頂いているのですよ」
ニッコリと笑うアリシアに女性はひけらかす。
「そんなんだからいつまでも新人(ルーキー)のままなのですよ。そろそろ罪人を引き連れて『魔術狩り』にでも出かけたらどうですか?」
「残念ながら、私はとても不器用なのですよ。ですから、先輩方にお任せしております」
「ほーんと才能はないって生きている価値はありませんね」
カッカッカッカと笑いながら女性は去っていった。
「愚かな人。いつまでも先輩面していられるだこと……迷路の道順を知ることはとても名誉あることなのに……」
監視塔の入り口から出口まで到達した人はアリシアを含めて三人しかいない。アリシアは迷路を知り尽くした人物のひとり。今日も、新人を招待するべく入口へと赴いた。
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