ビッチになった幼馴染との関わり方。
エパンテリアス
プロローグ「いつもの仲間+微妙な再会」
人の縁とは分からないものだ。
ずっと小さい頃から知り合いで、大人になってもずっと親友で居続けることもあれば、いつの間にかお互いの存在を忘れる事もある。
どんなに結婚しないと言っていても、出会い一つでそんな考えがころっと変わって結婚して行く人だっている。
人との関係というものは、良くも悪くもどんな経緯を経て、どんな結末に至るかは誰にも分からない。
そして、その結末は最期に「あいつとはこうだったな」と静かに思う時に分かるわけで。
生き続ける限り、いつどこで一旦疎遠になって二度と関わることはないと思ったり、存在を忘れてしまった相手がいたとしても。
運命というやつはまるで引いていた二本の平行線を、少しだけお互いが向き合うような角度にずらしたり、下手すればこの二本の線を消して新しく交わるように引き直すレベルのことをする。
要するに、極稀に決まったかと思うそいつとの結末を、いとも簡単に上書きをする。
いや、上書きするとは勝手に振り回された気になっている当本人が勝手に思っているだけなのだが。
※※※※※※※※※
「あんた、今日から新学期でしょ! もうこんな時間なのに、なんでそんなにのんびりしてるのよ!」
母親の声が、寝起きでトーストをかじる俺の頭にキンキンと響く。
何故に母親の声とは、こんなにも不快に頭に響きやすいのか。
そんなことを思いながら朝食を取るのはこの俺、原田悠太。
昨日まで春休みだったが、今日からは高校2年生になり、新学期が始まる。
入学早々で道に慣れていないなら、こんなに急かすのも分かるが、もう一年も登校している。
十分に間に合うと俺の中では確信している。
「いってきま~す」
中学生の妹、原田海咲がこんな俺と母親のやり取りを気にすることもなく、家を飛び出していった。
海咲は真面目な性格で几帳面、そして俺と違ってもれなく運動も出来る。そして可愛い。
そろそろ変な虫が付きそうなので、結構不安に感じているが、そんな俺のことをゴミのような目で最近見るようになってきた。普通に辛い。
「早く行きなさい!」
「いまぐらいが、いつも行ってる時間だろ」
「新生活で慣れてない人も外に多いんだから!」
何かとごちゃごちゃ言われるので、逃げるように家から飛び出して電車の最寄り駅まで歩みを進める。
特に遅延等もなく、すんなりと高校から最寄りの駅にたどり着き、駅から高校までの道を歩いていく。
「おー、悠太! おはようさんー!」
「お、陸人か。おはよう〜」
「めっちゃ久々〜!」
少し進むと、目の前に爽やかイケメンが登場し、俺に声をかけてきた。
こいつは、俺の友人である窪田陸人。サッカー部所属の運動神経バリバリのイケメン。当然だが、めちゃくちゃモテる。
高校生なんぞ、イケメンで運動が出来るとなると、おぞましい位にモテる。
一年の入学した頃からすぐに仲良くなって、ずっと絡んでいるが、こいつが告白される現場など見慣れてきたくらいにはモテる。
というか、俺経由で想いを伝えてほしいとか言われるときもたまーにある。
ちょっとそういうところは、羨ましいというか嫉妬してしまうが、陸人がいてくれるおかげで俺自身助けられている事が多い。
本当に、良い友人だと思っている。
「有田さんは?」
「あー、晴香? 多分もうちょい行ったところで合流するかな〜」
「じゃあ、先に俺行ってもいい?」
「別にさ、そんな晴香のこと避けなくて良くね?」
こんなにモテるイケメンには、きっちりと彼女もいる。
その女性の名は、有田晴香。
男子がやりがちな学年でトップクラスに可愛い子を「四天王」とか「三銃士」とか言っている中でも特に人気のある娘である。
美人である事に加え、明るくて社交的。ちょっと勉強とか日常生活でも天然感があるところもあって、そういうところも男子に人気がある。
高校一年の秋に、陸人が有田さんに告白してそのままお付き合いが続いている。
「避けてるってわけじゃないけど、やっぱり二人でいる方がいいだろうし」
「えー、そういう気を遣うなよ〜。もう付き合って半年くらいにはなるんだぞ? 俺たちの関係に信用性ねぇなぁ〜」
「信用してないわけじゃないけど、何気ない時間だからこそ大事にした方がいいじゃん。俺たちは普通に学校の休み時間に話せるし」
「って言ったって、クラスバラバラになるかもしれないぞ?」
「いや、文理選択とかその他方向性全部同じなのに、同じにならない方がおかしいわ」
クラス替えがあるとはいえ、陸人とクラスがバラバラになるとは思っていない。
そもそもお互いに理系を選んでいるし、その他生物物理とかの選択諸々一致しているのに、過去の傾向も見てバラバラになるわけがない。
「久々の再開だってのに、冷たくね?」
「いや、お前がメンヘラみたいなってるだけ。有田さんに甘えてんの?」
「うむ、そうかもしれない」
「はいはい、惚気惚気」
割と棘のあるような話し方をしているが、こういうのが俺の自然体。
この話し方のせいで、だいたい仲良くなる前に9割方離れていく。
しばらくそんなやり取りをしながら進んで行くと、スカートを少し短めにして腰に上着を結びつけたスタイリッシュなスタイルで有田さんが現れた。
「おっはよ〜」
「おー、おはよう」
「おはよう御座いますー」
「お、悠太までいるじゃん! 元気だったか〜?」
「変わらず元気ですよ〜」
「うんうん、そのよそよそしい敬語も変わらないね!」
朝から元気な有田さんから、そんな言葉をかけられた。
有田さんはかなり自分にフレンドリーだが、俺自身は敬語のスタンスを取っている。
わざとらしいが、はっきりとそれなりの距離感を取るために、俺が敢えてしていることである。
「悠太はいつまで晴香に敬語なんだよ……」
「いや、ずっとだよ」
「何にも気にしなくていいのに〜」
「こっちが気になってしゃーないんすよ……。じゃ、俺は先に行くんでごゆっくり〜」
この二人はよそよそしい感じが出るから、止めてほしいとのこと。
だが俺にとって、有田さんとなれなれしくすることをタブーと勝手にしている。
理由としては、可能性としてはごく僅かだが、この二人の関係を壊すリスクになるかもしれないから。
あり得ないとか自分に自惚れ過ぎとか思わないこともないが、どこからどんな流れ弾が当たるか分からない。
今は仲が良いが、心に余裕がない時とかに彼女が他の男と仲良く話してたら、心中穏やかではない。
一足先に高校に到着し、クラス分けが発表されている掲示板前に歩みを進める。
各クラスごとに名前が列になって並んでいる。
「多分、俺の選択的に3組になるはず……。お、あった」
3組のメンバー一覧の名前の列を辿っていくと、自分の名前を確認出来た。
「とりま陸人と有田さんの名前もあるか、確認しとこ………。問題なくあるな」
あれだけ陸人がバラバラになることを不安だと言っていたので、ちょっと自分も確認する時に不安になったが、問題無かった。
「他に誰がいるんだろ……」
文理選択とかの時点で、一年の頃に絡んでいた他の友達は3組に配属されそうなメンバーはいなかったので、あまり期待は出来ないが。
「有田さん以外に、美人さん居たりしないかな〜」
やはりと俺としても、美人がクラスに一人でも多く居てくれると嬉しい。
普段から自然と視界に美人が入る。素晴らしい。
それに、クラスが同じでさえいれば格段に接する事が出来る機会が増える。
「……!」
改めてじっくりと名前を目で一つずつ追っていくと、ある名前で思わず止まってしまった。
「弘瀬……瑠璃……」
弘瀬瑠璃。その名前を知らないわけがなかった。
美人四天王の一人。その中でも、有田さんと人気を特に二分する女子。
「あれぇ、悠太? もしかして、私の名前呼んだ?」
振り返ると、見慣れた姿……とは少し違った印象。
甘ったるい声で、こちらを見ながら笑っている。
間違いない。いや、間違えるわけがない。
「……別に」
こいつは、俺の幼馴染である。
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