第7話 夏休みのダイエット大作戦


期末試験が終わり、終業式を迎えた。


試験中は過度な減量は勉強が身に入らなくなるという理由で夕飯を抜くだけにとどまっていたがこれでやっと今から夏休みの期間はダイエットに専念できる、と晶子は思った。


一学期は結局クラスメイトの誰とも仲良くなれることもなくい一学期を終えた。


終業式の後の教室は明日からの夏休みに向けて何をしようかと友達と戯れる女子高生でいっぱいだった。


部活動をしたり、旅行へ行ったり、友達とお祭りや花火、中には他校にいる彼氏とデートする、など楽しそうに盛り上がっている女子ばかりだ。


そんなクラスメイト達を横目に晶子は夏休みは徹底的にダイエットすることに決めていた。


二学期に再びこの教室に来る時は痩せている、そう目標を定めて教室を出た


 翌日、夏休みに突入する前日の夜に晶子はまずインターネットやファッション雑誌に掲載しているダイエットの方法を調べまくって自分に合う方法を探した。

夏休みは日中の授業がない分、昼食が学校の昼休みに食べるお弁当ではなく家で食べることになるので夜は食べない分、昼の分くらいは自分で作ろうと思った。

母親は昼はパートに出ていて家にいない。

学校がある日なら母親が家にいてもいなくても晶子には関係ないが家にいる分にはなるべく昼食くらいは自分で作るようにしようと決めた。


図書館の本でカロリーが低い食べ物は何かをよく調べて、夏休み中の昼食の献立を決める。

ブロッコリーやカリフラワーなどの温野菜にノンオイルのドレッシングをかけたもの、キャベツやニンジンなど野菜をスープにしてみる。

こんにゃくやしらたきに豆腐などカロリーが低い食材を茹でてポン酢をかけて食べる、少量の肉だが満足度が高い低カロリーなワンタン、朝はダイエットドリンクのみ。

そしてパンやご飯、麺類など炭水化物は一切摂らない、など学校がなくて家にいる夏休みは様々な食事方法を試せるチャンスだ。

炭水化物はできるだけ食べないようにするためにご飯やパンなど主食は食べない。


自炊といっても晶子は料理の腕がうまいわけではないのでせいぜい野菜を切って茹でる程度の調理しかできないので比較的に簡単なものばかりだった。

しかしダイエットに合う調理法は油を使わず、茹でる、蒸すといった簡単な調理法で素材を生かす献立が多いのでなんとかなりそうだった。

調理は茹で野菜かすでにできあがっているチルドワンタンをスープで煮込む、程度しかできないのだ。

「もうちょっと料理ができればダイエット食にもバリエーションもてるけど、夏休みの間だけだからそこまで凝る必要はないよね」


そしてダイエット中はもちろん甘い物や高カロリーな食べ物、脂質糖分は敵である。

油や添加物のお菓子は避け、口にしないことを徹底した。


野菜等ヘルシーな食品は腹持ちが悪く、すぐに消化してしまうのか、たっぷり食べても数時間後には物足りなさでやはり空腹を感じることが欠点でああるがそういう時はひたすら水やお茶を飲むか歯を磨いてごまかすことにした。

どうしても固形物が食べたい時はカロリーゼロのゼリーを食べて気分を満たす


一日に食べたものを事細かにノートに記録して、毎朝と夜寝る前の体重をチェックしてノートに書き込む。

一日の反省点を書き込み、自分の体重を管理する。

夏休みは希望者には夏期講習があるが晶子はそれを選択しなかった。

授業もなければ部活もなく学校へ行く必要がないので通学時間や授業がない分の空き時間を運動に当てることもできる。


一学期の数か月間全然運動できなかった分、今度は脂肪を燃焼させるためにカロリー消費の為に運動を頑張るのだ。

晶子は朝のランニングと夕方のウォーキングの時間を一日のスケジュールに入れた。

夏休みでも普段の時間帯と同じ時間に起きる、六時半起床だ。そして朝は外をみっちり一時間のランニングをするのだ。


さらに夕方になれば再び夜のウォーキングに外に出る。

夏の夕方は陽が沈むのが遅い。夜七時まで明るい。それをいいことに明るい時間帯は目いっぱい近所を歩く。

夏の日差しがギラギラに照り付ける太陽の下での運動は大変だった。

わざわざ中学時代に部活動の自主練で使っていたトレーニングウェアまでひっぱり出して、形からも運動に入って本格的な取り組みだった。


 テレビのダイエット特集の成功者は基本的に長期間ダイエットした人達ばかりだ。

半年からもしくは一年間等、長期にわたって食事制限と運動を懲りずに続けて少しずつ体重を落とした結果が二十㎏だとか三十㎏だのの大幅な減量になる。

 一カ月に二キロか三キロなど少量の体重を落とし続けることが大幅の減量の鍵である。

 しかし今の晶子にはそんな時間はない。高校生活はたった三年間しかないのだ。


 そのうちの一年間、一学年で同じクラスの人達に同じクラスのうち、つまり同じ学級のクラスメイトに一年間だけでダイエットの成功を見てもらうにはこの夏休み明けまでの短期間に大幅にダイエットの成功をしなければならない。

 同じクラスの同級生に変わった自分を見てもらうには短期間のダイエットをしなければ意味がないのだ。

 そうなるとどうしても短期間の勝負になる。

毎日の極端な食事制限に加えて運動の時間が加わったが夏休みは学校がないだけまだ楽だった。

休み時間に孤独な自分を誰にも見られることもないし、常に周囲からの視線もない。

一人でいる姿を見られることもないし、学校からバスで三十分の距離になる学校から遠い家の近所なら同じ高校の生徒に会うこともない。


つまりダイエットをしている姿も目撃される心配がない。全てが自分の時間だ。



夏休みはそんな生活で空腹によるストレスもあったが晶子はダイエットを決してやめることはなかった。


毎朝体重計に乗ると日に日に少しずつ体重が減っているのが目に見えるからだ。

その毎日の変化が減量をしていることを数字で見るために

「よし、今日は五十三・三㎏。減った! 順調」

毎朝必ず体重を測り、減っていることが嬉しくてたまらない

その毎日の変化が減量をしていることを数字で見ることで努力が形に見えるのである。

その体重という数字、つまり目に見える形ですぐに結果を見えると一日ごとに次第に減っていく体重の数値が嬉しくてますますダイエットを頑張ろうという気になった。


つまり空腹やダイエットのストレスよりも体重が減ることによる目で見える達成感の方がストレスをはるかに上回っているのだ。


体重が減れば減るほど成果が出て嬉しくなった。


体重が減れば減るほど、以前とは違う自分に生まれ変わったような気がして、まるで変身していくお姫様のように晶子にとっては体重を減らすことはどんどん自分を美しくしていると思えた。


夏休みの間にダイエットで痩せて、二学期からはとても大変身した自分がいる。

もしかしたらそれでようやく自分にとってもあの学校にふさわしい女子生徒になれるかもしれない。


ダイエットが成功すればきっと自分もあのクラスの仲間の一員として認められるかもしれない。

誰からも相手にされなかった自分をダイエットした努力の成果を認めてくれるかもしれない。

そんな女子高生が抱くまだ大人になりきれてない子供じみた発想が晶子を支配していた。




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