第14話 パーティー名は、爆炎の剣
爆炎の剣
剣士ゴードンをリーダーにした、4人パーティーの、パーティー名だ。
レックは彼らに誘われ、よく荷物運びをしていた。アイテムボックスと言う、とても役立つ能力を持っていたからだ。実は、すでにチートだったのだ。
特技が、あったのだ。
「さて、改めて今回の依頼内容だが………レックは知っていると思うが、モンスターとなったイノシシについてだ。まずはレック、サイズについて教えてくれ」
森へと出発する前に、打ち合わせは大切だ。ゴードンの旦那に問われたレックは、答えた。
倒れても、見上げるほどのイノシシのモンスターであったと、そのサイズはすでに、ブロンズの中級で生き残れるはずがないレベルだった。
おかげで、懐は暖かく、マヨネーズ伯爵の援助がなくとも、バイクに武器にと、購入するほどであった。
「なるほど~、それだけ、今回の依頼はヤバイってことね………」
「ただのモンスターなら、倒せるだろう。レックはリボルバーも持っていたから、木の上から狙えばいい。むしろ、おいしい獲物だ。ただ――」
「木々をなぎ倒すサイズだったのが、レックの不幸ね………ホント、良く生きてたよ」
心配してくれている、それは保護者の目線である。
村を飛び出したレックだが、守られる気分は、悪くない。好意は素直に受け止めた。相手を選ぶ必要はあるが、目の前の皆さんは、良い人々なのだ。
レックは、彼らの役に立てると思うと、うれしかった。
だが――
* - * - * - * - *
ピンチだった
ボスが、現れた。
魔法使いのカルミー姉さんが、最初に気付いて、教えてくれたのだ。
「ボスって言っても、中級魔法でやっつけられるレベルだから、安心してね?」
「はは、それって、オレたちの最大威力の攻撃じゃないか」
「みんな、オレには期待しないでくれよ、ザコ専門のガンマンなんだぜ?」
「ガルフ、ザコい?」
「ちょ、ゼファーリア、オレにオブラートして、もっとオブラートしてっ!」
なんだか、余裕だった。
とくに、ゼファーリア姉さんと、ガルフ兄さんのやり取りなどは、新鮮だった。前世なら、『言い方っ!』と、叫んだのだろう。
ボスが、姿を現した。
「ゴブリンのボスが一匹だけ………なら――」
レックは、ハンドガンを捨て、ショットガンに持ち替えた。撃てるのは4発だけだが、威力は上だ。アイテム・ボックスからショットガンの弾を取り出した
焦りながらも、なんとか、ショットガンの補充は完了した。これで、使える武器はマグナムと、ショットガンの二つになった。
マグナムは、切り札に残しておけそうだ。
剣を構えて、ゴードンの旦那さんが、覚悟を決める。
「まだ、いるぜ………ビッグ・スライムだ」
「ねぇ、あっちからも、スライム来たよ?」
「スライムのボスが2匹と、ゴブリンのボス………か、旦那、いっそ逃げ――」
「あら、反応は4つよ?――あぁ、上か~」
巨大な鳥が、現れた。
陸生のモンスターだけであれば、何とかなった。動きはさほど、早くない。火力を集中させれば、何とかなるのだ。最悪、逃げ出すことも出来る。
空は、スナイパーライフルと言うより、ガトリング・ガンでもほしくなる。
「レック、マグナムは温存してるな?」
剣士のおっさん、ゴードンが剣を構えつつ、レックに振り向く。レックがピンチでも、最後まで使わないようにと、それは本当に、最後の手段だった。
「はい、言われたおとりに」
ショットガンを敵に向けたまま、レックは答えた。懐から、いつでも取り出せるようにしてある。アレほど巨大なのだ、近づかれれば、どこに撃っても、当たるだろう。
命中率の悪いレックでも、ショットガンでけん制、マグナムで狙い撃つくらいは、できそうだ。
「じゃぁ、私が鳥さんね?魔力込める間、時間稼ぎよろしく~」
「ふ、別に倒してしまってもいいのよねっ!」
「まて、ゼファーリア――レック、とりあえず撃つな、同士討ち注意だぞ。目の前に来るまで、我慢だぞっ」
レックはあわてて、返事をする。
先ほどのように、あわてて引き金を引けば、危険だ。今回は、みんなと一緒に戦うのだ。自分さえ守ればいい、そんなわけにはいかない、本当のパーティーの戦いである。
魔法の攻撃の一つや二つ、身につけていればよかったと、レックは遅すぎる失敗に、歯噛みする。
レックは、お調子者、楽しい事を優先と言う悪い癖を、いまほど呪ったことはない。手榴弾と同程度の破壊力など、魔法の力を持っていれば、手ぶらでも放てるのだ。
しかも、マジカル・ウェポンシリーズよりも、威力や範囲を選べるのだ。これが、魔法使いがいなくならない理由である。あくまで、底辺冒険者の攻撃力の、底上げなのだ。
カルミー姉さんの周囲に、光が集まっていく。
「オレも、本気を出すか」
ゴードンの旦那さんは、腰に下げていた袋から、なにかを取り出した。アイテムボックスではない、その能力をもつ、アイテム袋である。
レックほどの容量はなく、お値段もそれなりであるが、アイテムボックスの能力を持つ人物を雇い続けるお値段との比較は、悩みどころだ。
甲虫のパーツのような、なにかを取り出した。
色は、赤だった。
「これが、オレの、真の姿だぁああああああああっ」
剣を天に掲げて、吠えた。
どうやら、この世界の住人は自覚なく、不治の病『中二』を患っているようだ。どのような仕組みであるのか、甲虫のパーツが空中でくるりと円を描いて、ゴードンの旦那さんの剣に、肩に、胸元に、足にと、装着されていった。
ヒーローアニメでお約束の、パワーアップアイテムであった。
パーティー名である『爆炎の剣』は、ここから取られたらしい
「へぇ~、ゴードンの本気武装、久々に見たわね~」
魔法に集中しつつ、カルミー姉さんは、余裕だった。
「へっ、レックと一緒の時には装着しなかったのによ、一人前だって、認めたってわけか」
「そうか、13歳だったレックちゃんがもう15歳………私も年を取るわけだよ」
ガンマンのガルフ兄さんも、ファイターのゼファーリア姉さんも、余裕だった。敵が目の前に近づいてくるのに、これは、経験の差なのだろうか。
レックは、冷や汗をかきながら、おかしいと気付く。
話しながらも、懐から、アイテム袋を取り出していた。
「待たせたな、オレの相棒は、二つで一つ………長く眠らせていて、悪かった――」
ガンマン兄さんは、浸っていた。
ザコ専門と
レックのハンドガンよりも、やや大きなハンドガンを、両手にしていた。
腕を、クロスに交差させていた。
「私のこぶしが震えて叫ぶ、敵を倒せと――」
ゼファーリア姉さんは、いきなり、どこかの格闘漫画っぽいセリフを口にして、魔力を高めていた。瞬発力では、パーティーで一番の、金髪のポニーテールが、逆巻いていた。
セリフも、燃え上がっていた。
レックは、緊張が吹き飛んで、あきれた瞳だ。
「余裕だなぁ~………」
みなさま、不治の病『中二』を患っているようだ。ボスを前にして、この余裕に、レックは微妙だった。本来、あわてない姿に尊敬の気持ちを抱くべきだろう、そういう感情がわきあがると、悔しい気持ちになるのだ。
レックも、負けてはいられない。ショットガンを、むしろ温存すべきなのだ。魔力を高めて放つと、威力が上がる武装である。
直射の、狙い打っての攻撃は、むしろリボルバータイプである、マグナムなのだ。
マグナムを顔の隣に引き寄せて、目を見開いた。
「オレのマグナムも、火を噴くぜっ」
昔、どこかで耳にした、なにかのセリフだった。
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