箱庭放浪記
紅沢みあい
『 』の章
それでも生きたかったんだ。お前と一緒に。
そう願い、手を伸ばすそのモノは、黒き獣に成り果ててもなお己が愛した対だった。たとえいつの日かその手が世界の終焉を招こうと、世界にたった二人きりになろうとも。共に生きようと手を取ったあの日の誓いを違えることなどありはしない。
世界のすべてが敵に回ったその時は、森羅万象尽く、神さえ滅ぼしてお前を選ぼう。
なんて、その手を神の血で染めて彼は笑うのだ。あの誓いの日と、子どもの時と、同じ夢を追いかけたあの青春と、同じ顔をして彼は、笑う、嗤う。
さて、捉われたのは、捕らわれたのは。一体どちらが先だったろうか。
そこは次元を渡る神々とそれ以外の種族が共存する世界。最初はどこかの神サマが気まぐれに作った小さなハコニワだった。それから様々神が面白がって参入し、もちろん中には真面目に世界を創造せんとした神もいた。
そうして始まる下層世界からハコニワへの昇華によって様々な多元世界から原初の種族たちが集められた。が、こいつちょっと有能じゃね?だの、この子タイプだわ~♡だの、わりと適当な神や女好きが災いして浮気を繰り返し、奥さんに洒落にならない復讐を末代にまで巡ってされる神も結構いたおかげでそこそこカオス空間だったことは否めない。
とまぁそんなことをかれこれ繰り返し。次元を渡る神々が気まぐれと慈悲と思い付きで呼び込んだ種族を繁栄させ、時には放棄し、思いつきで神託を授け、時には終焉を仄めかし、その度に住人たちは生き永らえる為の進化と衰退を繰り返した。原初の種族はそれはもう溜ったもんじゃねぇと最初は殺意さえ神に向け戦争も勃発させたが。大抵は『大勝利ざまぁw』と笑う神々勢の勝利で終わっていた。それでも箱庭が続いているのは、なんだかんだとしつつも目をかけ昇華させた可愛い可愛い下層世界人たちの子孫であったから。
それから幾星霜、近所に神サマが住んでいるのが割と普通な安寧と混沌の時代。
それは寄る辺を求めた二人の男の物語、進み、そして遡る物語。
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