12 可愛いンゴねえ~
「日露戦争ンゴでも、この旅順ゴ攻略戦ゴは大変だったンゴ! 二百三ゴ高地、っていう映画にもなったンゴ! 激しい戦いの末に旅順ゴを陥落させ、世界最強の
僕のしぐさを見て、クスッ、と笑う朱雀さん。か、可愛いンゴねえ~。
「でも、この日露戦争ンゴの勝利が、日本包囲網へと繋がっていくンゴ。国際連盟ンゴに加盟した日本は、人種差別撤廃を提案したンゴ。これが受け入れられず、日本は国連ゴを脱退するンゴ……」
「それは何年のことかな」
鼻の下を伸ばす僕を、少し睨み付けるように、鋭い視線を投げかける青龍さん。少し怖いンゴ……
「国連ゴの脱退ンゴは……何年ゴ?」
「私は存じませんわ。思い出せませんか?」
「ン~ゴ……ちょっと難しいンゴね……」
少し考えてから、そう答えた。そう言えば、これは僕の記憶テストのようなものだったンゴね。
「では続きをどうぞ」
「日本は、ロシアの南下を恐れたンゴ。ロシアを抑えるために、朝鮮半島の少し北側、ここに満州ンゴを建国したンゴ。これは覚えてるンゴ! 1932年ゴ! 一方のロシアも、日本との直接対決で痛い目に逢った経験ゴから、どう攻略したものかと策謀を巡らせるンゴ!」
「それ……興味ある」
聞き慣れない声。急に耳元で聞こえた。ビックリしたンゴ~、だ、誰ンゴ!?
「玄武。耕作様が驚かれるではないですか!」
「すまぬ……謀略の話と聞き飛んで参った」
「御話を伺うのは構いません。ですが御静かに頼みますよ」
黒装束に身を包む、小柄な男性。短髪で体つきは細い。朱雀さんと同じように、物音ひとつ立てずに畳を歩く。謀略工作の担当、と言っていたから、そのクセだろうか? 忍者みたいンゴねえ。
「ロシアが一番欲しかったンゴは、不凍港ンゴ。一年中凍らない港ンゴ」
「20世紀でしたら、日本列島にも凍らない港があったのでしょうね」
「ンゴ……そう言えば、今は日本中、全部凍りついてるって言ってたンゴ?」
「はい。氷河期が近付いておりますから」
氷河期、と言われても実感ないンゴ。
「玄武さンゴのために、ここからロシア目線ゴで話を進めるンゴ」
無言で、軽く会釈をする玄武さん。もちろん、その姿は目に見えているのに、存在感が全くないンゴ。
「この時代のロシアは、コミンゴテルンゴによって支配されてたンゴ」
「こみんごてるんご……?」
「ンゴォ~! 違うンゴ! コミンテルン、ンゴ」
「こみんてるんんご……?」
「コミンテルン! コ・ミ・ン・テ・ル・ン!」
「知った名だ」
「世界で共産革命ンゴを起こし、赤く染めるのが目的の組織ンゴね。ロシア革命の
「共産革命ですか」
「ンゴ。特にコミンゴテルンゴが力を入れたのは、情報局ンゴ。情報を独占する事こそ共産党支配を確固たるものとする、と知ってたンゴね。そのロシアが狙ってたのが不凍港ンゴ!」
「先刻も話していたね」
「ンゴンゴ。今は違うみたいンゴけど、僕の……21世紀の世界では、東側の朝鮮半島ンゴ、そして西側のセヴァストポリ、クリミア半島ンゴ。東西の不凍港ンゴを抑え、一年中艦隊ンゴを動かせるようにするのは、ロシアにとって最も重要だったンゴ」
「その朝鮮半島の旅順を……」
「そう! ロシアは日露戦争ンゴで失ったンゴ!」
食い気味に、青龍さんの言葉を強引に遮って、僕は興奮しながら話し続けたンゴ!
「不凍港ンゴを取り戻す、ロシアにとっての最重要ミッションゴ! そこで十年以上かけて謀略を巡らせたンゴ! 日本、アメリカ、この両国の情報メディアと、政治の中枢への浸透工作ンゴ!」
「ほう……」
興味ありげに小さく呟いた玄武さんを無視して、僕は一層熱のこもった弁舌を振ったンゴ!
「例えば日本では、
「ゾルゲは知っ……」
玄武さんが何か言いたげであったが、調子に乗った僕の耳には全く届いていない。構わず話を続けていくンゴ。
「アメリカ側にもコミンゴテルンゴのスパイはいっぱいいたンゴ。ルーズベルト自身がスパイだったかは定かじゃないンゴけど、その側近はほとんどスパイで、ルーズベルトが直接指名した補佐官ゴもスパイだったンゴね。他にもハリー・デクスター・ホワイト! 日本に突き付けた最後通牒、ハル・ノートの草案を作ったのも、このユダヤ人だったンゴ!」
「ハルノ……」
玄武さん、青龍さん。何を言いかけたのだろう? ヤタガラスが、戦前の日本で行われた、共産主義者の工作活動や世論誘導に対して、何らかの情報を持っていたのか。それに抗しようとしたのか。何か大事な話をしようとしたような気もする。だけど僕は全く聞いていなかったンゴ。
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