ツインレイ

望月しろ

プロローグ

1.幼馴染が好きな私


───私は……幼馴染が好き。


 子供の頃から一緒に過ごしているうちに、いつの間にか好きになっていて。

 中2の今までずっと、片想い中。



「ねぇ!亜妃!……ちょっと来て」


 お昼休み、仲良しのクラスメートに呼ばれて付いて行くと、廊下の隅で何やら深刻そうな面持ち。


「大変だよ、亜妃」

「え?!何が……?」

「平岡くん、彼女できたらしい」



 え……うそ……?

 今朝一緒に登校したとき、そんなこと何も言ってなかったのに……。



「……ふ、ふ〜ん。そうなんだ」


 明らかに動揺してしまう。


「ちょっと亜妃?!そうなんだ、じゃないでしょ?!いいの?平岡くん取られちゃって平気なの?!」

「……平気も何も……、私達ただの幼馴染だもん」


 誰にも柊への気持ちを話せてない私は、こうして誤魔化すことしかできなくて……。



「もー……、いつまでそんなこと言ってんの?!

 いい加減自分の気持ち認めなよ〜!」


 まったくー、ってため息を吐いて、呆れたように去って行くクラスメート。



「もうとっくに認めてるよ……」


……独り呟く。


 そりゃあ、あれだけモテていたらそのうち彼女できちゃうんだろうなって、思ってはいたけど……。


 まさか本当に、柊にカノ……「あき?」


「あ、柊……」

「どした?何こんなとこでぼーっとしてんの?」


 思考を遮るように耳慣れた声が聴こえてきて。見ると、柊が不思議そうな顔して近づいてくる。


「……ううん、別に何も?」


 横をすり抜けて教室に戻ろうとすると、




「───…待って」


 肩を掴んで、止められた。




「……なんかあったっしょ?」


 昔から勘の鋭い柊。私の些細な心の変化を、いつも誰より早く察してくれる。


「………」


 何と言えば良いのか分からず黙ってしまう私。



 でも……彼女ができたってことは……


 きっと今までみたいに仲良くしてたらダメなんだよね。他の女の子と一緒に登下校するところなんて、彼女さんは絶対見たくないはず。




「……ちょっと私、今日は用事あるから先帰るね」

「え……?」

「明日の朝も、あと明日の帰りも、明後日も……えっと……」


 もう今までみたいに柊の近くにはいられない。そう考えてたら、だんだん泣きそうになってくる。



「──それって、もう俺と一緒に通学したくないってこと?」


 悲しそうな目でじーっと私を見つめて聞いてきた。


 私はまた……口篭ってしまって。






───しばらく沈黙があった後、柊はカラッとした声で、キッパリと言った。


「そんなん無理」

「……え?」

「何か理由があんなら言って?理由ねーなら、無理」


 何年一緒に通学してると思ってんの?って、さも当たり前かのような口ぶりで。



「──でも……彼女さん…きっと嫌がるよ?」


 “彼女”という言葉を口にした途端、現実を突きつけられた気分になって、また落ち込む。




「は……?え、お前何言ってんの……?」


 柊は目を見開いてポカンとしている。


「え、だって、彼女できたって聞いたから……」

「……彼女って、誰のこと?」

「分からないけど、さっきクラスの子が言ってた」


 柊は難しい顔をして何かを考えた後、


「あ……、なるほどね」

 謎が解けたとでも言わんばかりに、独りで何やら納得していて。


「亜妃、それ誤解だから」

「へ……?」

「俺、彼女なんていねーもん。笑」


 そう笑って、私の頭をポンポンしてくれる。



「──てことで、今日も帰り校門前で待ってて?」

「……わかった」


 じゃあな、って笑顔で柊は教室へと戻っていった。


 なんだ、勘違いだったのか。よかった……。でも、一体なんで柊に彼女ができたなんて噂になってるんだろ?


 不思議に思いながらもほっとして、私も教室へと戻ったのだった───

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