第46話 僕たちの深い信頼関係
結局、レゾンデートルは見つからなかった。
一応カードストリートファイトの胴元を探ったらしいが、レゾンデートルとは一切関係の無い裏組織だったようだ。
つまり、レゾンデートルは東京の
◇◇◇
僕は自室で正座をさせられていた。
静子、姫香、レティーシャに上から見下ろされており、両横にはシュクモと
いかにもこれから静子による説教が始まりそうな雰囲気だが、僕は今回は何も悪いことはしていない。
事情を話せば分かってくれるはずだ。配置から見てもシュクモと
――強気に行くぞ!
「へへ、ちょっと足が痺れてきたから、足を崩して良いかな?」
「ハガネ様。めっ、でございます」
「はい……」
愛想笑いをしながら正座を崩そうとしたら、右横から頬を膨らませたシュクモがペチと僕の足を叩いて正座を促した。
弁護人からの裏切り行為であった。
僕は左横の星辰天に助力を求めることにする。
「星辰天ちゃんは、今日はどうしてここに?」
「クラマスの
「はい……」
レゾンデートルと対峙した場にいた
そして、星辰天は機嫌が良い時も悪い時も僕に対して攻撃的だが、今のやり取りは機嫌が悪い時の口の悪さだった。
――え? 四面楚歌ってこと?
まずいぞ。怒られる理由に見当がついていない上に味方がいない。
見上げると、笑顔の静子と目が合った。
今だ、今しかない。とりあえず謝ろう。しかし僕の決意も虚しく、静子に先手をうたれてしまった。
「ハガネくんはどうして一人でカードストリートファイトに出てたのかな? 危ないって思わなかった?」
「いや、一人で行ったわけじゃなくて……あれ? やっぱり一人だったかな?」
誰かと一緒にコロッセオに行った気がするのだが、思い出せない。
考えているうちに、姫香が抗議の声を上げる。
「ハガネさん、私たち、パーティですよね? 戦うような場所に行く時はせめて連絡しておくべきだと思います!」
「でも、連絡したら姫香ちゃんとシュクモちゃん、一緒についてきそうだし……。ああいうところは危ないからさ」
「ハガネ様。3めっ、でございます」
横からシュクモが僕の足をペチペチペチと叩いてきて抗議に加わる。めっ、が3に増えてしまった。
自分で言っていても徐々に旗色が悪いことに気付いてきてしまった。姫香やシュクモが一人でカードストリートファイトに出向いたら僕だって注意するだろう。これはそういう話なのだ。
レティーシャが瞳に涙を貯めながら話に加わる。僕のことで泣いているのかと思うと胸に突き刺さる。
「ぐすっ、どうしてすぐにそういう危ないところに行くのよ! し、死んじゃうところだったのよ!」
確かに、あの場にコウさんたちが駆けつけなかったらどうなっていただろう。
最悪、僕一人とレゾンデートル四人との戦闘になっていたかもしれない。命を落としていた可能性もある。うん、やっぱり姫香とシュクモは連れて行かなくて正解だったな。
「ごめんごめん、皆。次からは必ず連絡するよ。絶対に危ないことはしないって約束する」
僕はしれっと嘘をついた。
次回に同じようなことがあったなら、今回と同じように一人で行くだろう。
危ないところに女性を連れていくぐらいなら、一人で行ったほうがマシである。これは単純に命の価値の問題で、ぞんざいに扱うなら一番安いものを使うべきだ。
しかし、僕たちは深い信頼関係を築いているので、これぐらいの反省しているフリは通る確信があった。
「絶対ウソついてるよね?」「絶対ウソついてるって思います!」「絶対ウソでございますね」「絶対ウソついてるわ!」「絶対ウソじゃん」
「……」
信頼がゼロだった。どうして。
静子はため息をつき、判決を下した。
「ハガネくん、このマンション、部屋が空いてるんだよね? 私も今日からここに住んでハガネくんを見張ります」
「わ、私も一緒に住むわ!」
「……アタシは住まないから」
静子の発言にレティーシャが乗っかり、星辰天は乗っからなかった。
「横暴だぞ! 静子ちゃん! 僕にだって人権はあるんだぞ!」
「ハガネくんが本当に嫌がることはしないよ。私とレティーシャちゃんが同じマンションに住むの、ハガネくんは嫌なの?」
「嬉しい!」
「じゃあ決まりね」
静子はニコリと笑って宣言する。
鮮やかに言質を取られてしまった。甘んじて受け入れるしか無さそうだ。
それに、こちらにもメリットはあった。
僕の全力の拳を、
強くなるためのカードは既に手元にあるのだ。
【名前】性愛の女神の権能
【ランク】S
【カテゴリ】パッシブスキル・永続・神性
【効果】
神性たち、もしくは恋人たちとの絆が深まるほどに祝福を受ける。
まずは、僕自身が、誰を、どう想っているかに向き合っていく必要があった。
静子とレティーシャが近くに住みはじめるのは、その助けになるかもしれない。
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