4話
「いや、異世界とかじゃないんかい」
新聞を片手に那緒は突っ込んだ。
**********
高そうな布団を再起不能にした翌日の朝、那緒は朝食を届けにきた宇久森と気まずい再会を果たした。
顔を見た瞬間、頭に浮かんだのは謝罪の二文字。いくらやんごとなきお家の御令嬢でも、人様の寝具を刺激的なゴミに変えたのだ。それ相応の謝罪と誠意を見せねばなるまい。
那緒は布団から足を抜いた。
正座をし両手を肩幅に開いてベットに付ける。中央に頭を入れ、そのままゆっくりと肘を曲げーーーーー
「おはようございます、那緒さん。刺されて胃が弱っていますから朝食はお粥をご用意しました。食欲があるようでしたら、冷蔵庫にゼリーがありますので持ってきますね」
ーーることはなかった。
明るい声色に勢いよく顔を上げる。そこには笑顔を見せる宇久森がいた。
「わずかな振動でも痛みを感じるようでしたので、かなり煮込んできましたが、なるべく咀嚼するようにしてください。問題なければもう少し米を硬くしますね」
「え、あの」
「それから水は常温の物を。普段から飲み慣れているから平気だと思いますが、冷えた水は刺激が強いので飲まないようにお願いします」
「は、はぁ」
完璧な大人の振る舞い。
昨日の惨劇がまるで無かったかのような対応で微笑みかけ、あたかも怪我で食欲が無いと言い切った。大人だ。彼は全人類が見習うべき大人だと那緒は内心で涙を流す。
申し訳なさで胸が苦しい。
「僕がいると食べづらいでしょう。30分ほどで食器を取りに来ますので、ゆっくり食べてくださいね」
後ろ手に脱臭○んを部屋の隅に配置する宇久森。那緒は無言で微笑んで彼を見送った。
やっぱり、うっすらと部屋に残る酸っぱい臭いにが気になったらしい。
すまない....気を使わせてすまない....。
朝食のお粥はすこし塩辛かった。
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