第12話 穢れた血

計算高く鋭い洞察力を持ち、持ち前の感の良さから今まで何度も沙那恵とぶつかり合い彼女への歪んだ嫉妬心が周囲を巻き込み、茨の道へと招き入れ身も心も壊し、蝕み続ける。


そして用済みになった者は皆、ボロ雑巾のように捨てられ本人のみならず周囲を巻き込み残酷な末路を辿る。


【毒蛾】《ドクガ》それが彼女の付けられた名の由来だ―――――。


毒蛾は妖艶に相手に近づき少しづつ自らの毒で相手を洗脳し自分の懐に取り込み手懐ける。――――時に甘く。時、冷たく飴と鞭を使い分け華菜枝色に染めていく。


態と牽制のために大袈裟に演じ、この現状を楽しんでいるのだろう。


元々、華菜枝は服部を気に入っていた。自分よりも若く賢く優秀。優れた洞察力と感性、行動力を併せ待ち端正な顔立ちとルックスの良さが人目を引いた。


自らの傍に置き愛でてて楽しむだけではなく繭に閉じ込め精気を吸い尽くす。欲しいと思ったモノは如何なる手段を遣おうと手にしてきた。


そんな華菜枝にも屈しない存在がいた。沙那恵と服部耀だけは彼女に屈することなく歯向かい続けた。欲しいと望んだ全てを手にしてきた華菜枝は怒りと嫉妬に身悶えた。


――――どんなに欲しいと望もうと、手に入らない唯一の存在。それは時に華菜枝を地の底に叩きつけ、この世に絶対的、支配下などないのだと思い知らされたような絶望が我が身を襲い、心が震えた。


華菜枝は現実を突きつけられ、どうしようもない虚無感に苛まれた。


沙那恵と服部から醜い姿を晒した華菜枝を嘲笑い遠ざけ離れていったと感じ取った――――そんなこと…あるはずもないのに·····華菜枝は自ら2人と距離を置き、遠ざけ会う度に悪態を吐き2人を傷つけた。


そうすることで自分を守り、これ以上、傷つかないようにしていたのかも知れない。――――それが、どんなに醜く歪んでいようとも1度、狂いだした歯車は止まることなく廻り続け悪しき連鎖が続いていく。


今まで犯罪と呼ぶに等しい悪しき行いに身を染め、多くの犠牲を重ね手に入れてきた全てのモノが指の隙間から意図も容易くポロポロと零れ落ち消えていく。そんな恐怖に身体が――――心から震えた。


彼に好意を抱き出した時から·····。この恋は実らないと分かっていた。


それでも愛してやまない――――彼の心が欲しくて欲しく堪らない。


彼への秘めた想いは募るばかり――――同じ双子、同じ結月家の高貴な血が身体中に巡る由緒正しき家柄の才女…。それなのに·····それなのに。また自分だけが取り残される。·····また自分だけが除け者にされ独りぼっちになってしまう――――。


「――――あの子さて生まれなければ·····もっと早く殺しておくべきた·····」


心の声が溢れた――――。


「――――わたしは醜い!醜い!醜い!!この身体はケガれている·····」


細くガリガリの身体を必死に自分の腕で抱き締めた。


「――――さむい。凍えてしまうわ…」


そこには幼いまま身も心も大人になってしまった哀れな女の姿があった――――




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