Black Parade

しうまい

プロローグ 遺書

第0話

デュラン・L・クリフデン 殿


 〝この手紙を受け取った〟ということは、〝僕の看取りに間に合わなかった〟ということだろう。けれど、そのことについては気にしないでくれ。葬儀屋の社長である君が多忙というのは、創設者の一人である僕にとっても嬉しいことだ。

 さて、君宛に手紙を残したのには理由がある。付き合いの長い君ならば、すぐに察しが付いただろう。彼女——〝ベル〟の件についてだ。

 彼女はまだ〝人生〟というものを知らない。〝死〟とは何なのかを知らない。僕の身に訪れた〝死〟については、おそらく理解出来ないだろう。理解できても、今の彼女ではその事実を受け入れることが出来ないハズだ。〝僕〟という存在が、彼女の未来に対する足枷となってしまう。それだけが唯一の、心残りだ。

 デュラン、最期の頼みがある。ベルが〝僕〟を乗り越えられるように、未来へと進むことが出来るように、できる限り彼女の事をサポートしてあげてくれ。僕が彼女と一緒に居られたのは、五年という短い時間だった。けれど、僕は知っている。彼女には多くの人を救う力があることを。そしてその力は、今はまだ危ういものであるということも。その力を正しい方向へと向けられるように、手を貸してくれ。

 さて、最期に伝えておくことは以上だ。親友である君とはもう十分、互いのことを語り合ったからね。昔ばなしでもして盛り上がるのは、いつか君がこちらへ来た時にしておこう。その時まで紅茶でも飲みながら、楽しみに待っておくよ。

 おっと、最後にもう一つ。この手紙とは別にもう一通、封の閉じられた手紙が入ってるはずだ。それはベルに宛てたものだ。彼女はもう大丈夫だと、君が判断したときに渡してほしい。念のため言っておくが、勝手に封を開けて中身を見ないでくれよ。ベルが読まなければ、意味のないものだからね。


レオント・テトラテーマ




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