第22話 四日目 夜

ガチャ

「・・・」

キーーー

「!」

ドアの音に振り返る

だが

パタン

「・・・ふー・・・」

弱く息を吐く

いつもは「ただいま」の言葉があるせいか

ドアの締まっていく音なんか気にしてなかったが

今日は敏感に反応してしまう。

キーっと引き締まっていくドアの音は無意識に“あの”部屋を連想させる

でも

「昨日は・・・」

昨日はこの時点で音が聞こえた。

その瞬間がフラッシュバックして脳裏をめぐる

「ダメだ!」

声でかき消した。

思い出してはダメだ・・・

だって音が聞こえないということは

今日は何もないということ・・・

それを自分からまたそういった方向にもっていくことはない。

そうやって散々怖い思いをしていたじゃないか・・・

そう思いそのまま無心を心がけて中に入る。

「あ、そういえば・・・」

無心でいるつもりがその思いをすぐに上書きした

なぜなら

「お塩・・・振ったほうがいいか?」

それはたぶん今の俺にはいい効果をもたらすものだった。

お葬式のあとは両肩に塩を振る。

なんかそんなのがあった気がした

清める?というやつだったか

効果はわからないでも今の俺には気休めだとしてもよかった。

「お塩、お塩・・・」

買ってきた物をそこらへんに置き

台所をあさる

「なんか作法みたいのがあった気がするけど・・・」

そういって塩を手に肩にふってみた

「・・・?これでいいのか?」

疑問が浮かぶ

そして

「あ、スマホで・・・」

そういって検索をかける

「え~と、・・・あ、これ玄関でやるんだ」

お葬式に参列するのは初めてではないけど

こういう作法というのかそういうのは詳しくはない。

参列中も周りを見ながら何となく行った時の記憶を取り戻しておこなっていた。

そのためかあまりろうそくや遺影をみないでやっていた気がする。

それは故人に失礼かもしれないが

その場から逃げ出したり叫んだんだり

取り乱すよりいいかな?

そんなこんなでリビングでネクタイを緩みて

Yシャツのボタンを開ける。

なんとなくぼんやりとした気分でいた。

昨日は部屋に入った時そのときにはもうすでに・・・

「あ、また・・・」

なんか自分が情けなく

そして自信もなくなっていた。

「やっぱり俺・・・病院行った方がいいかな?」

考えすぎだ。

帰ってくるたびに怪奇現象を思えば

そりゃ、そうでないとしてもなんでもそう感じるだろう

きっと・・・

てかこの考えも何回目か・・・

毎回同じことの繰り返し

きっとはっきりしないこと

未知のことが起こってそれを納得させるための答えを探している

ずっとずっと・・・

だが、堂々巡りで結論はでないけど・・・

「あ、テレビ・・・」

リビングでテレビを見るが画面は壁をむいてる。

昨日の出来事がそのままでコンセントもテーブルの上に転がっている。

「うーん・・・」

何もすることが・・・

ない

「・・・寝るか?」

自分に問いかける。

ここ最近まともな睡眠はとれてない

しかし、今なら・・・

ここ最近の疲れもあってこの前みたいに

寝ているかもしれない・・・

「とりあえず着替えようか」

ともにもかくにも部屋着に着替えることにした。

正直慣れない服でかなり窮屈な感じをずっと感じていた。

そのせいもあってか先ほどのように疲れがたまった

そう感じている。

もちろん今日起きたさまざまや藤井さんについても考えて考えて・・・

そんなことばかりだったから疲労感はかなり高かった

あとは

「シャワーですこしだけ・・・」

すっきりした状態でベットに向かうために

準備を進める。

なんだろうか?

今日はなんか・・・

「やっぱり思いすぎだった・・・そんなところかな」

そういって苦笑いを浮かべながら

浴室に入る

帰ってきたときほど昨日やその前そして

今日のことを考えてない。

その分今やることしか頭に浮かばないためか

恐怖感はなぜかあまり感じてない。

ただシャワーをあびてベットに行くだけ・・・

逆に普段みたいにあれがやりたいとか

これがしたいみたいなことができないから

行動はいたってシンプル

どうしようみたいな考えが湧かない分いいのかもしれない

それだけ余裕がないことの裏返しかもしれないが・・・

今回は良しとしよう。

昨日は入れなかった分

シャワーが心地よく感じる。

あとこの水といっしょにいろんなことが流れていってる

そんなふうにも感じる。

頭からお湯をかぶり

そのまま顔を伝い落ちる水の勢いが気持ちよかった

今の俺には十分だった。

さらにいうとやっぱり体的にもう限界なのだろう

考えるのを放棄し始めている。

そう堂々巡りを繰り返しているより生産的だ

いつもの調子とはいかないが寝ることに恐怖は薄れてきた。

それと同時に浴室をでて

部屋着に袖を通す

すると不思議と疲れのおかげか目が重くなっていく

「ああ、なんか久しぶりな気がするな・・・」

心が脅かされないで

そのまま眠りにつけるなんて

気持ち的には幾年もちゃんと眠りをとれてなかった

そんな気分

大げさかもしれないが・・・

ただそれほど心を擦り減ら知ったんだ。

今日ぐらいは・・・

そんな思いとともにベットに入る。

するとこの日は不思議なぐらいゆっくりと寝りに落ちていった。

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