第17話 四日目 朝

煌煌と天井から光が降り注ぎ

窓からの陽ざしにはあまり気づくことなく

朝を迎える

「・・・あさ・・・か・・・」

長かった

そう、やっぱり長かった

昨日一度寝たはずなに体はずっしりと重く

考え切った頭はもう考えることをやめて

ぼーっと何もない空間を見つめていた

たまにどこから物音がするとびくっと

体を浮かせてそのたびにいたるところ調べた

後半は何に恐怖しているからわからず

ただ神経質な人間がいらいらと物音に気をまわす

そんなようにもなっていた

「なんか・・・頭が・・・」

痛かった

鈍痛というのか

重く響くというか

最悪の朝は“あの日”から記録をのばしていく

「俺・・・どうしたんだろうか?」

自分でも不思議になってた

ここ数日でこんなにも日々が変わってしまうものなのか・・・

いつもなら朝はギリギリまで寝て

ほんの少しの準備時間を経て

仕事に行って

変わった職場ながらやることはだいたい同じ

悪臭やグロテスクな現状なんか非日常が広がる世界だが

そんななか仕事が終わったらまた日常に戻っていって

夕方から夜寝るまでのプライベートタイムを

ゲームや動画で楽しみその日を終える

そんな日がいつもの生活

そう俺の日常だった

“あの日”までは・・・・

変わってしまった・・・

朝は最悪の気分

時間をあり余してしまうほどの時間を抱えて出勤

なんとも言えない心地悪さをはなつ現場

グロテスクなことはないが気味の悪い写真が散らばる部屋

唯一変わらなかったのは悪臭くらいで

帰ってみたら謎の現象に謎の夢

そして

「藤井さん・・・」

上司の突然の死・・・

はたから見ればもしかしたら

俺の周りが変わったのではなく

俺が変わったように見えるだろう

それはもちろん悪い意味で・・・

「そうだ・・・喪服・・・」

仕事柄作業着が多いためそう言った

フォーマルというのか

スーツの類が家にはあまりない

「・・・買いにいこうか・・・」

そうつぶやき出かける準備を始める

昨日同様

いや

それ以上に緩慢な動き

歯ブラシは軽快な音を潜めて

ゴシ・・・・ゴシュ・・・・・・ゴシ

と不規則に鈍く遅く

鏡にはうつろげな目で

その下にはくまを昨日より濃くした自分の姿

頭が重いせいなのか

普段の支度時間とは比べようのないほどの時間を費やして

やっとの思いで支度を終える

「・・・」

無言

だが外はほんの少しにぎやかだ

「・・・うん、いこうか・・・」

自分に言い聞かせるように足を動かす

カチ

つけたままにしていた電気を消す

すると部屋は朝なのにも関わらず

ほの暗く影を落とす

すると昨日光景が何となく脳裏に浮かび

この部屋から早く抜け出したい気持ちが襲う

「っ・・・」

息を噛み殺し

外への扉のドアノブに手をかける

そしてほんの少し力を込めて扉を開く

外への開放

それとともに今日一日が動き出した

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