第15話 三日目 午後

ガチャ

「・・・」

いつもなら思わずでていた「ただいま」

でも今は何も口を開くことができず

ただドアを開けてしめた

「きょ・・・・は・・・・じ・・・・・ぃ・・・・」

「え?」

誰もいないはずの部屋から声が聞こえる

「なんで!?」

急いでリビングに行く

するとそこには昼間の情報番組が明かるげに

芸能人が食リポをしていた

「・・・」

呆然とその様子を見つめる

(なんでテレビが?)

必死に今朝の記憶

そして

昨夜の記憶も丁寧に思い出そうと目をつむり

頭の中の引き出しを開けていく

(まず今朝は・・・)

今朝は陰鬱な気分の中ただただ支度をしただけ・・・

リビングでは・・・

何もしてない

うん、それは確かだ

(昨夜は・・・)

テレビはつけた・・・

動画とかゲームとかをやったのはたしかだけど・・・

テレビは?

あの時・・・

そう前のようにまた突然つかないように電源は本体から切った

(え?なんで?いまついてるの?)

混乱した

もちろん戸締りはしっかりしている

誰か入ってつけることなんて・・・

ありえない

真夜中起きてからもとくには・・・

と考えてると

「このパスタほ」プツン

お笑い芸人の食リポの途中にテレビは消え

暗い画面がそこに残る

「・・・」

またも呆然とした

(何が?)

単純に謎が残る

なんとも言えない恐怖が胸に襲い掛かる

しかし

「・・・あれかな?このテレビ壊れちゃったかな?」

そうだ・・・

たぶんこれはもうテレビが壊れてしまって不調を起こしたのだ

「はぁ~びっくりさせて・・・新しいテレビ・・・買おうかな?」

そんなことを考えて少し笑った

夜中から嫌なことが続いた中のほんの一瞬の笑い

陰湿な空気が漂っていた部屋に

本当に少し明かりがさすような気がした

今のこの部屋はまるで“あの”部屋のようだったから

(そうだよな・・・現実にはまだたくさんの問題があるけど今は・・・)

そんな考えをしていた最中

プチン

テレビの画面が明るくなる

(あ~本当に完全にダメだなこれ・・・)

と思ったのも刹那で

画面に映し出された映像に驚愕する

「!?・・・っこれって!?」

言葉を出すのが精一杯だった

映像の中には“あの”部屋のにあった

男女が並んだ写真・・・

そして

「・・・いるはずがない!!なのに・・・なのに・・・おまえは!!!」

と男の声が大音量で聞こえ

女性の顔を削るとるようにボールペンを揮う

「これって・・・」

言葉が詰まりながらも見た映像に凍り付く

その最中も「くそ!」などいう言葉とともに

写真が入れ替わり次々女性の顔は消されていく

まるで夜中にみた夢の再生・・・

いや、正確には再生ではない

この映像は俺が夢の中で眺めていた

“あの”部屋の住人であろう男性・・・

その男性の目線だ

どうなっているかという混乱の中で

何とか行き着いた考察した

その時

「・・・」

映像は壁を映したまま止まった

男性の声もしない

だが次の瞬間

「ワシャグチャワシュグチャ、プチチチ」

「ドン!!」

床に額をたたきつけた鈍く響く音

画面は素早く壁から床に移る

ビクッと体が後ろに慄く

(これはあの時の・・・)

夢で見た映像と今の流れている映像が頭の中で照合される

「ドン!!!!!」

「ドン!!!!!!」

壁から床へと移る画面は素早く鋭くなっていったのに対して

音はさらに大きく鈍く鳴り響く

画面は歪み何か赤い色彩が画面上を覆っていく

(無理だ!!!)

もう見てられなかった

今朝と同じだ

(消さないと!!)

この状況がわからないがとにかくもう見たくないという一心で

テレビに駆け寄り電源ボタンを押す

だが

「あははははははははは!!!!!!」

男性の笑い声が響きだす

もう一度ボタンを押すが

「はははははははははははははははは・・・・・」

「なんで消えないんだよ!!!」

そう言ってボタンを連打する

カチカチカチカチカチ!!!

だが

「はははははははははははははははははははははははは!!」

声は心なしか大きく聞こえ始めた

それは,まるで俺の方に迫ってくるような勢い

「くっ!!!!」

切迫感にもう耐えれなくなり

コンセントの線握りしめてそのまま勢いよく

ブン!!

と引っ張る

すると

バチンと電気が火花を散らす音とともに

声はなくなった

「はぁ・・・はぁ・・・」

ゴクリ

今朝の寝起きのように喉を鳴らす

そして荒くなった呼吸をしながら

画面を確認する

「・・・・はぁー・・・・」

暗い画面には何もなく

覗き込む俺の姿が暗い画面に反射していた

安堵感が広がる心

「よかっ」

ジリリリリンジリリリリン!

ジリリリリンジリリリリン!

ビクン!!

体が浮き上がる

けたたましくなる俺のスマホ

その音に言葉を言い切る前に遮られて

驚きのあまり舌を噛みそうになる

そして急いでスマホをポッケっとから取り出して画面を確認

するとそこには

『社長』の文字

再び硬直していた心が緩和した

そして

「もしもし・・・」

「あ、今大丈夫かな?」

「あ、はい・・・」

「どうした?なにかあったかい?」

「いいえ、大丈夫です」

「うん・・・そうか。で今日言っていたあの件だが・・・」

と社長は話し出す

声が動揺していたのか心配をしてもらったが

何とか冷静を装う

だって今起きたことを話せるか?

今でさえ何がなんだかわからないのに・・・

そんな思いを胸に隠して社長の話をきいた

するとどうやら藤井さんの葬式に参列が許されたようで

親族の方もその日の様子を俺から聞いたいということだった

明日おこなうということで時間などを聞く

「はい、わかりました・・・はい、では失礼します」

スマホ越しに通話が切れたことを確認して

俺もスマホをしまう

「・・・ふー・・・」

ため息がつきない

どうなっているのか・・・

何がおこったのか・・・

言葉にできないでいた

(社長とはちゃんと会話できていただろうか・・・)

(てゆうか、今のはいったい・・・)

不安や疑問は胸の中で今もうずまく

もうテレビが壊れていたとかそういう問題ではなくなった

こんなことはっきりいうと

ありえない

俺の精神がおかしくなったのか?

それとも本当に?幽霊とか?

そんなはず・・・

だって・・・・

考えて身震いする

怖い

その感情は増幅していく

タタタッタ!

ベットに走り寄ってそのまま布団に身を隠す

「・・・」

言葉のにしようにもできない恐怖から

自らの身を守るように

布団をたてにしていた

「・・・・」

何も言葉は出さず

ただじっと身構えた

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