第14話 三日目 昼

「今朝聞いた話だと藤井君は夜中の12時ごろ彼の家の近くのマンションの屋上から飛び降りたようだ・・・」

社長が詳細を話し始めた

「住人の通報をきいて警察が駆け付けた時にはすでに彼は亡くなっていたそうだ・・・」

そういって少し間を置き

「即死だったみたいだね・・・」

「あの?遺書とかあったんですか?」

「いや、特にそれらしい物はなかったようだよ」

社長に質問を問いかけるとすぐに帰ってきた

そしてよくある質問だと思いながらも

「事件の可能性はないんですか?だって藤井さん本当に昨日は普通に・・・」

「うん、警察もその可能性がないか調べたそうなんだが・・・」

そう区切ったあと

「現場というのかな?そこには彼と住人あと管理人の指紋や痕跡しかなかったようなんだ・・・」

「じゃ、その中の誰かがとかは・・・?」

「それもないみたいだね・・・警察は調査したがその中に事件を起こすような人間はいなかったみたいだね・・・あと彼が超えたと思われる跡が手すりにあったみたいだね・・・」

「どうして、そんなことがわかるんですか!?」

すこしむきになって社長に聞いてしまう

「うーん、警察も一様ね?守秘義務があるからそこら辺の詳しいことは聞けなかったけど、警察がそう断定したならそうなんだと思うよ・・・」

「!すいません・・・」

食ってかかってしまった自分に驚き謝る

「いや、君は昨日藤井君といっしょだったからね・・・うん、動揺する気持ちはわかるよ・・・」

やさしく諭すように俺に話しかけてくれる社長

気遣いにまた

「すいません・・・」

そういうことしかできなかった

「で、彼から話は聞いたが・・・藤井君の様子だが・・・聞かせてもらってもいいかい?」

「はい・・・」

返事をして昨日の話を始める

いつものように作業にはいっていったこと

昼も変わりなくすごしていたこと

仕事終わりは特につかれた様子はなく

逆に俺の心配をしてその場で解散したこと

「・・・くらいですかね・・・今日の予定も話していたので・・・その藤井さんが自殺なんて・・・」

「そうか・・・予定まで話していたのか・・・うーん・・・」

社長も困惑した表情を見せる

その横で黙って聞いていた上司も動揺に困惑しているようだった

「実は私たちもいろいろ考えたんだがね・・・どうも・・・彼がそんなことするような人間ではないように感じていてね・・・」

「はい、そう思います・・・」

社長の言葉に同調した

「しかも、遺書がないこともそうだが彼の死に方がどうやら珍しかったようなんだ・・・」

「珍しいですか?」

「ああ、警察がいうには・・・彼の顔がぐちゃぐちゃだったみたいなんだ・・・」

「?それは珍しいのですか?」

社長の言葉に疑問を返す

「私も仕事柄そういう話は聞くがその事態が不思議ではないんだ全身打撲で顔もというケースもあるだろうしね・・・ただ藤井君の場合はその体制なんだ・・・まるで顔から地面にむかっていったみたいな落ち方だったみたいなんだ・・・」

「顔から・・・」

「うん・・・いくら自殺するといってもその落ち方は異常だって警察はいっていたよ・・・」

(たしかに・・・いくら死のうと決めて落ちたとしても視線を地面に向けたままなんて・・・)

考えただけで背筋がぞっとした

一瞬だったかもしれない

けれど高所から下を見下ろすだけでも俺は恐怖を感じるのに

その状況を顔を下に向けて落ちていくなんて・・・

「偶然そうなったかもしれないし、まったくないわけではないようだからね・・・ただその・・・即死するにはうってつけの落ち方だってそんな話をちらっとしていたよ・・・」

「「・・・」」

もう一人の上司と俺は言葉を失う

「とりあえず今日は来てくれてありがとう。今後についてはまた連絡するから」

「はい・・・あのお葬式とかは?」

「ああ、その件だが・・・ご家族の意向で親類で行うらしいよ私はいちよう出席させてもらい会社からのそういったその・・・お金の件なども話しないといけないだろうし、ここで聞いた彼の様子も伝えておこうと思ってね・・・」

「・・・あの!!」

「ん?なにか伝えることがまだあったかな?」

「いや、あの・・・私も参列できませんか?お葬式に・・・」

「君が?」

「はい!状況とかその最後の日の藤井さんの様子とか私もいた方がいいかとおもいまして」

「うーん・・・」

思案する社長

そして

「わかったご家族の方と話してみるよ」

「ありがとうございます!」

そういって頭を下げた

さっき言った通り説明をしたいというのももちろんだが

確かめたかった

本当に藤井さんが亡くなったのか

正直ここまで話が進んでいる状態で実は違います

なんてことはありえない

でもあんなに快活な藤井さんが

昨日は「んじゃ、お先に~」って

気軽に言って帰っていったあの藤井さんが

いなくなるなんて・・・

現実味がどうしても持てずにいる

「うん、じゃ結果がわかったらすぐに連絡するから」

「はい、ありがとうございます」

そういってまた頭を下げた

「それじゃ今日はもういいよ、君も夜あまり寝れなかったのだろ?」

そう社長は言った

「え、あ、はい・・・」

「顔、目の下にくまができてるからね・・・今日はゆっくり休みなさい」

「はい、わかりました」

社長の気遣いに感謝してその場を去る

オフィスのドアの前で二人に一礼して出てきた

曇り空の中人通りが増えてきた道を歩く

そして食欲はまださほどないが

お腹は減ってきたのを感じる

空腹感を満たすために自宅に帰る前に軽く食事をとることにした

ファストフード店に立ち寄り

その場で手早くすませて

家路へとついた

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