第26話 超えた一線
「…………綺麗だ」
気づけば、自然とその言葉が口をついて出ていた。
「んっ、そりゃ、あたしは敵に背中は見せないし、一切の逃げ傷がないのが自慢なんだからね……って、だから、女子力ないとか言われ――」
「違う。そうじゃないんだ」
利家の言葉を遮り、信長は感動を隠さず伝えた。
「そうじゃなくて、本当に綺麗なんだ。利家の背中」
「え?」
肩越しに振り返った利家と視線がかち合う。
白く美しい背中を晒しながら、自分を抱きしめる見返り美人。
その姿は、まるで温泉に浸かる天女のようだった。
信長のなかに芽生えた欲望が、熱さをそのままに、違うものへと変わった。
「ワンコ。俺はさ、ワンコのこと、女子力低いとか、思ったことないぞ」
「ノ、ノブ? 急にどうし、あっ」
利家を振り向かせ、布団の上に押し倒すと、信長は彼女の両腕をつかみ左右に開いた。
「や、やぁっ……ノブ、だめぇ……」
言葉とは裏腹に、抵抗する力はあまりに弱かった。
それに、信長はあれほど見たかったおっぱいを一瞥だけして、あとはもう利家の瞳にくびったけだった。
「ワンコ。大好きだぞ」
優しく笑いながら告白すると、利家の目に涙が浮かんだ。
「おい泣くなよ」
「だ、だって……だって子供の頃からずっと好きだったんだもん……」
そう言って、利家の目からは、とめどなく涙が溢れた。嬉しそうにはにかんで、幸せそうに頬を染めながら、
「ずっと、ずっとノブのこと好きで、いつもノブのことばかり見て。だから、みんなから女子力低いとか言われるたびに、あたしじゃノブに愛して貰えないのかなって、ずっと不安だったんだから……」
初々しい、乙女な想いを口にされて、信長は溢れる想いを噛み殺した。
――ヤヴァイ。ワンコ、マジで可愛い。普段の凛々しいお前はどこに行ったんだよ! やっぱりワンコは俺の嫁だ!
抑えきれなくなった想いに、できる限りの手綱をつけながら、信長は利家にキスをした。
深く舌を絡ませてから、彼女の耳元で謝る。
「その、負担、かけちゃったらごめんな」
いまの信長は、利家の肉感的な体に対して、ただの邪な感情ではなく、慈しみたい、という想いでいっぱいだった。
ただそれでも、やはり信長も男なわけで、どれほど好きな女の子、いや、好きな女の子だからこそ、あまりにも性的魅力が強すぎる、その煽情的な肉付きに、力が入ってしまうかもしれない。こればかりは、信長でもどうしようもなかった。
だから、利家を抱きしめる前から、信長は言いようのない罪悪感に押しつぶされそうになる。なのに、利家は熱く濡れた瞳で、甘ぁく言うのだ。
「いいよ。ノブになら。ノブに、痛くしてほしいの……ノブに、消えない痛みを刻みつけて欲しいの。あたしが、ノブだけのものだっていう……」
――ッッッッ~~~~~~~~~~ッッッッッッ‼‼‼?
その晩。信長は利家の外とナカ、両方の体温を堪能し尽くした。信長の想いはどれだけ溢れさせても尽きることがなく、ふたりが意識を失ったのは外が白みはじめてからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます