第48話 VS伊達政宗
彼女の後ろには最高の主であると同時に最高の仲間である直人が見ていてくれている、この世界で唯一自分を認め、信頼し、女の自分を戦士としてこの戦いを任せてくれた人がいる。
これで力が出ないはずがない、誾千代の一振りが政宗の頬をかすめ、血がにじむ、今回は早く決着が着くと直人が思ったとき、水樹が自分に向かって走ってくる。
「先輩?一体どうし・・・・・」
水樹は直人の腕をつかむと無理矢理引っ張っていく、直人は駐車場の入り口まで引っ張られしまった。
「いきなりどうしたんですか先輩?」
水樹は息を切らしながら懸命に言葉を発する。
「お願い・・・今ならまだ間に合うわ・・・・早く逃げて!」
涙を流しながら叫ぶ水樹に直人は戸惑い尋ねる。
「なんでですか?だって誾千代は勝って・・・・」
「違うの・・・・」
「・・・・えっ?」
「まだ政宗君は本気じゃないの!政宗君が本気になったら本当に直人君ごと誾千代さんを殺すわ!だからお願い!!」
涙ながらに叫ぶ水樹に直人は少し気圧され、少しの間彼女をみつめるがすぐに聞き返す。
「じゃあなんで先輩はあいつの腕輪を捨てないんですか?」
その質問に水樹は一瞬、驚いたように目を開くと口ごもってしまうが直人の問いは続く。
「だってそうでしょう?あんな人をかんたんに殺すような奴の言うこと聞く必要ないじゃないですか!?なんで先輩はあんな奴の言うことを聞くんですか!?」
「・・・それは・・・・・」
水樹は悲しそうな顔でうつむき少しの間だまっていたが、しばらくすると小さな声で語り出した。
それは彼女が政宗と出会ったときの話でその内容は衝撃的なものだった。
長城(ながしろ)水樹(みずき)、彼女の体はガンに冒されており、もう何年も生きられない体らしい、前に彼女から感じた死のにおいはそれだったのだろう。
彼女が助からないと知ると両親は彼女一人を残し蒸発、親戚達も余命数年の少女には冷たく、誰も助けてはくれなかった。
罪滅ぼしのつもりなのか家と多額の貯金を残しての蒸発だっため残りの人生の生活には困らないがすでに生きる希望など失った彼女は死ぬことを決意し病院の屋上から飛び降りた時だった。
自分の服が何かに引っかかったように体が止まり、上を見ると政宗が腕を伸ばし彼女の服をつかみ落下を防いでいたらしい、そして政宗はこう言った。
「おい女、捨てる人生ならば俺によこせ」
と、血縁者中から捨てられ、見放された自分を唯一必要としてくれる存在、それが政宗、たとえ政宗がどんなに酷いことをしようと、ただそれだけが彼女の救いになったのだ。
直人は反論出来なかった。もし自分が水樹の立場だったらどうしただろうか、そう考えると彼女を責めることが出来なくなってしまう、しかし水樹が政宗に協力する理由はわかったがそれと自分が逃げるのは別だ。
「先輩・・・・・・先輩は政宗のことが好きなんですか?」
「・・・えっ!?」
水樹は突然の質問に驚き目を大きく見開き赤面した。
「なな・・・なんでそんなことを?」
それに対して直人ははっきりと言う。
「俺は誾千代が好きです」
突然の言葉に水樹は硬直した。
「で・・・でもだったらなんでさっき、一緒に戦わなかったの?誾千代さんのこと心配じゃないの?」
「違いますよ先輩、好きだから手を貸さないんです」
直人はなんの疑いもない晴れやかな顔で言う。
「俺は本当にあいつのことが好きだから信じているんです、あいつは負けない、誾千代が任せろって言うんだから間違いないですよ」
そう言って今度は直人が水樹の手をつかみ誾千代と政宗が戦っている場所まで引っ張っていく。
誾千代は自分が世界で一番愛した人だから、今までの人生で一番信頼している人だから、神弥直人は立花誾千代に全てを委ねた。
二人が戻るとちょうど政宗が盾に使った青い車を誾千代が両断している最中だった。
戦いは誾千代の優勢、政宗の兜ははずれ、鎧にも多くの刀傷がついている。政宗は体勢を立て直すために距離を取る。
「・・・っ・・・この俺が女なんかに・・・!」
「愚かだな、誰との絆も持たず、ただ自分のためだけに力を振るう貴様に勝利はない!!」
誾千代の言葉に政宗は怒りを爆発させる。
「だまれ!情など人を弱くさせる物でしかない!守る者など弱点にしかならん!!女風情が偉そうに・・・・そうだ、女の・・・・っ・・・・」
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