〇カクヨムは覇権作品を生み出すべきとかそうじゃないとか
ここ最近、創作論ジャンルでは「カクヨム、ひいては小説投稿サイトは覇権作品(平たく言って世間的なヒット作)を生み出すべきか否か」という議題がホットです。卑俗な発想ではありますが、カクヨムコンへの準備も終わって手隙の筆者も便乗してみようという次第です。
とはいえ、この話は「星評価偏重主義の運営が悪い」「流行りジャンルの追従ばかりする作者が悪い」「現状に甘んじている読者が悪い」……などという「誰が一番悪いか」に終始するような話ではないと思います。現実問題、これをどうにかすれば解決するというような魔王はいません。倒してもハッピーエンドにはなりません。
あえて言うのであれば、「運営も作者も読者もゆる~く悪いところがある」といったところでしょうか。運営も十年近くなる大手の小説投稿サイトで、作者も読者も多数いるのですから、当然ですが一枚岩ではありません。コンスタントに書籍化作品を出して話題性を保ちたい運営の気持ちも分かりますし、評価を得るためには書くジャンルが限られる作者の気持ちも、簡単に人気作だけ見たい読者の気持ちも分かります。
……けれども、現状が続けば暗雲が立ち込めるでしょう。
運営が評価されている作品ばかり書籍化すればジャンルは偏りますし、評価や収益の欲しい作者は人気ジャンルに一層偏りますし、読者が人気ジャンルのみに集まるのも道理です。この状態が続けば、柳の下のどじょうがいなくなるのは必定。異世界転生ものが栄えて早十余年……「そろそろ現状を変えなければ危ういのではないか?」という危機感が蔓延してもおかしくないでしょう。端を発したのが今回の議題だったのかもしれません。
ならばどうすればいいのか?
正直、研究しているわけでもない筆者では、特効薬を処方することはできません。むしろ知りたいくらいです。
しいていえば――運営・作者・読者のそれぞれが意識を改革することでしょうか。
でもこれって、そう簡単にできることではありません。
――運営は人気ジャンル以外にもスポットが当たるような工夫をする。ポイントの計算方法の見直しを行い、凝り固まりやすい空気をイベントを用いて適宜かき回す。
――作者は人気におもねることなく新たなジャンルを開拓する。
――読者は人気作にばかり目を向けずに、自力で作品を見定めて開拓していく目を養う。
本当にこんなことが可能でしょうか? 言うだけなら簡単です。けれども、上記のどれもが現実的ではないとも思います。運営は人気ジャンルという客寄せパンダを見限れませんし、それは作者も読者も同じでしょう。「カクヨムは一小説投稿サイトでしかないのだから、覇権ジャンル誕生に必死になる必要はない」という意見も分かりますが、現状では人気ジャンルが斜陽になるだけで共倒れになる危険性すらあります。楽しい砂場遊びを続けていくためにも、五年先十年先を見据えた体制が必要だと思います。
では、「我々はなにもできず、指を咥えて推移を眺めていることしかできないのか?」と言えば、これにははっきりノーと言いたいです。
検索窓に好きなキーワードを入れて、ジャンルを気にせず新作順に見てみる――これをするだけで、ほんの少し変わるのではないでしょうか。
今は丁度、カクヨムコン前の助走時期。十一月に入ってから、新作もかなり目につくように感じます。それらを少し見てみる、出来たら評価もしてみる。これだけで作者は励みになりますし、それが人気ジャンル外ならば効果は尚更でしょう。
今回の議題で一番問題なのは、「運営が悪い」「作者が悪い」「読者が悪い」と問題を押し付け合って、問題の当事者であるという意識に欠けていることなのではないでしょうか。『カクヨム』は小説投稿サイトです。作者も読者も参加者という意味では立場は同一ですし、運営もまた然りです。誰しもが『カクヨム』をより良くし、また一層悪くする可能性を持っています。その事実を自覚することから、すべては始まると思います。
筆者個人としては、流行外の自作品をもっと見てほしいという気持ちは確かにありますが、なにより乱立しては消えていく他の小説投稿サイトと『カクヨム』が同じ結末に陥ってほしくないと考えています。なにより一番あり得るバッドエンドは、「人気ジャンルの斜陽と共に『カクヨム』が倒れる」という結果なので、『小説家になろう』などの他サイトも無事で済むとは思えません。『カクヨム』が誰かの素敵な作品を見つけられる楽しい場所であり続けるためにも、この文章を読んだ人だけでも少し気持ちが変わってくれることを祈るばかりです。
ちなみに余談も余談ですが、筆者は学園ジュブナイル大好き人間なので、常日頃から『カクヨム』を彷徨い続けています。知らない作品があれば教えてください。求む!
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