②ー⑤ 私たち3人、どうやら同じ人に恋しているみたいですね

「案内してくれて、ありがとうございます。」


『三人で話しがしたい。』そう言ってきた、ひろくんの幼馴染……優奈ちゃんのことを、私と日奈ちゃんでは屋上まで案内した。

……この学校の屋上、解放されているけど、ほとんど人が来なくて安全だからね‼


「ううん、別にいいんだよ。優奈ちゃん、まだ入学したてでこの学校のこと、よくわからないだろうし。」


ひろくんが、

『すっごく優しい人』

と評価している日奈ちゃんは、そう、優しい声で優奈ちゃんに向かって言う。


「……その、先輩方に聞きたいことがあるんですけど。」


優奈ちゃんは、聞きにくそうな、言いだしにくそうな顔をしながらそう言う。


「なんでもいいよ。どんなことでもいいから聞いてみて。」


そう優しい声で言った日奈ちゃんは想像もしていなかっただろう。

優奈ちゃんが、


「私、広葵先輩のことが好きで、広葵先輩の彼女になりたいと思っているんですけど……お二人も、広葵先輩のこと、好きですよね?」


と、そう聞いてくることを。


________________________________


『私、広葵先輩のことが好きで、広葵先輩の彼女になりたいと思っているんですけど……お二人も、広葵先輩のこと、好きですよね?』


優奈ちゃんのその言葉を聞いた私は、言葉を失ってしまった。……すっごくわかりにくいけど、優奈ちゃんのその言葉のせいで、私は言葉を失ってしまったのだ。


「な、ななななななななんで、そうおもうのかな?」


できるだけ、平静を装い、優奈ちゃんにそう聞く。

……平静を装うってどういう意味だったっけ?


「まず、お二人の広葵先輩を見る目です。……あれは、あれは確実に、『恋する乙女』の目、でした。」


「……。で、でも、目だけじゃ勘違いかもしれないよ?」


ひろくんとのことをできるだけ知られたくない私はそう聞く。


「そうですね。目だけなら。……先輩方、それなら質問があります。」


優奈ちゃんは、私たちの目を見ながらそう言う。


「先輩方はなんで、私と広葵先輩が話している時、話しに入ってきたんですか?」


そ、それは……。


「『優奈ちゃんのことが気になっていたから』ってことじゃ、納得してくれないかな?」


……。た、確かに、その可能性もあり得る‼ 日奈ちゃんナイス‼


「……確かに、その可能性もあり得ますね。……でも、先輩方、私のこと、あまり見ていませんでしたよね。どちらかというと、広葵先輩に目がいっていたような……。」


……。だ、だって、仕方ないじゃん‼ 私、ひろくんのことが大大大好きなんだから‼ ……でも、これはまずいことになったよ。もうこれ、言い訳できないじゃん。


「……。私も、わたしもひろきのことが好き。……さっきまで黙っててごめんね。優奈ちゃん。」


日奈ちゃんは、ひろくんのことについて、熱く、語り始める。


「優しいところとか、こんな私にも、気を使ってくれるところとか、全部全部、大好きなの‼ ……優奈ちゃんとか、なずなちゃんとは、恋のライバルになっちゃうのかもしれない。……でも、でも私は、ひろきのことが好きだから‼ 大好きだから‼ 

……だから、絶対にあきらめたりしない。最後の瞬間まで、あきらめないから‼ 」


……これ、私、どうやってひろくんと付き合ってることを言えばいいの?

……ううん、うじうじ悩んでいても仕方がないよね‼


「ごめん、優奈ちゃん、日奈ちゃん、今まで黙ってて。……実は私、ひろくんと付き合ってるの。」


私は、二人に向かってそういった。


「……え⁉ 」


日奈ちゃんは、驚いたような顔をしている。

……優奈ちゃんはというと、なぜか、不敵な笑みを浮かべている。


「……先輩、なずな先輩と広葵先輩って、まだ付き合っているだけなんですよね?」


「……そうだけど。」


あたりまえだ。だって、わたしたちの年齢だと、まだ結婚はできないんだから。


「なずな先輩と広葵先輩。二人はまだ、結婚していないわけです。……それなら、今はまだ付き合っていない私たちにも、チャンスはありますよね?」


「……確かに。」


「……なら、私は最後の瞬間まで、勝負をさせてもらいます‼ ……日奈先輩はどうしますか?」


優奈ちゃんは、日奈ちゃんにそう問いかける。


「もちろん、もちろん私も勝負するよ‼ だって、ひろきのこと、大好きだもん‼」


こうして、私たち三人の、恋のバトルが始まったのだ。


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