俺のことを振ったはずの学校一の美少女が、なぜか俺の彼女のような態度をとってくるんだが?
種蒔 フラワー
1
プロローグ
タッタッタッタッ
そんな音を立てながら、急いで階段を登る。大好きな人が待つ屋上に向かって、隣にいたいと、これから先、一緒に人生を歩んでいきたいと思っている相手のもとに向かって。
ガタン
そんな音を立てて、私の後ろにあるドアが閉まる。午後四時、屋上の空はオレンジ色に染まり、わたしを待つ男子、
……まあ、これが告白だと決めつけている私も、ちょっとヤバい気がするけど。
でも、結局のところ、わたしか、広葵君かのどちらかが告白をすることになるのだから変わらない。私が、私が振られない限りは、今日、授業中から私がしている妄想と、何ら変わらない結果になるだろう。
……いや~、本当に今日の授業は楽しかったな~。まあ、話しなんて全く聞いていなかったけれど。
[回想]
「
昼休み、学校内にある自動販売機で、炭酸飲料を買っていると、夏休み前の7月……いや、6月から、ずっとずっと、想いを寄せ続けている広葵くんがそんなことを言ってきた。『大事な話』高校生男子が、そう表現する話なんて、たった一つしか思いつかない。そう、『告白』だ。実をいうと、私は今日、この広葵君に、告白をするつもりでいた。
なぜ今日なのか。
それは、今日が広葵君の誕生日だからだ。本人は、全く気付いていないけれど、広葵君は、かなりモテる。ありえないくらいにモテるのだ。優しくて、元気で、気遣いができて、話していて楽しくて。そんな男の子が、モテないはずがない。すっごくモテていて、広葵君のことを好きな女子も多いのに、私が告白してこなかった理由。それは、振られるのが怖かったからだ。……いや、だって仕方なくない?私、『学校一の美少女』とか、言われちゃっているんだよ?振られたなんてことになったら、さすがに恥ずかしすぎるでしょ⁉……でも、そんな私でも、さすがにそろそろまずいと思ってきた。だから今日、広葵君の誕生日である今日、告白をしようと考えていたのだが……。
「わかった。放課後、屋上に行けばいいんだね?」
本当は、本当はもっと、広葵君に、優しく接したい。優しく接したいのだけれど、なんか、何でかわからないけれど、冷たく接してしまう。
「うん。ありがとう。それじゃあ放課後、屋上で待ってるね」
こんな私でも、冷たく接してしまう私でも、広葵君は優しく接してくれる。
そういうところがあるから、女子たちにモテるし、男子からも好かれているんだろうな。
[回想終わり]
まあともかく、そんなことがあったわけなんですよ。はい。いや、さすがにこんなこと言われてさ、授業に集中できるわけなくない⁉ 大好きな人から、こんなことを言われても、授業に集中できる人は、人間じゃないと思うよ⁉︎
と、私がそんなことを考えていると、
「躑躅さん。それじゃあ話し始めるね」
そう言って、広葵君が話し始めた。
「ずっと前から、優しくて、話していて楽しくて、存在自体が可愛くて、そんな、そんな躑躅さん……いや、なずなさんのことが大好きです‼ これから先、ずっとずっと、なずなさんにそばにいてほしいし、なずなさんのそばにいたいと思っています。なずなさん。どうか僕と、付き合ってくれませんか?」
まっすぐに私の瞳を見つめてそう言ってくれる広葵君。本当にかっこよくて、すっごく尊い。うん、本当に。ずっとずっと、ず~っと大好きだった広葵くん。そんな人から告白された私は、広葵君に向かってこう言った。
「ごめんなさい、(私から告白をすることができなくて。本当は今日、広葵君に私が告白するべきだったのに、広葵君に、今日が誕生日の広葵君に告白をさせてしまってすいません。私も、わたしもずっと前から、広葵君のことが大好きでした。私でよければ、付き合ってください)」
そう、私が言い終わった(と思った)とき、前を見ると、そこには誰もいなかった。
あれ?いつ広葵くん、いなくなっちゃったんだろう?
広葵くんのことを語る時、文字通り、周りが見えなくなってしまう私は、そんなことを考えた。
そう、この時私は、広葵君に、『ごめんなさい』しか届いていないことを、知らなかった(気づいていなかった)のだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます