第30話 フェスタ当日
『それではこれより、フェスタを開催する!』
ヴァルハラ城下街第一コロッセオ。
その壇上で、北欧神話の主神オーディンは宣言を上げる。
海上の全ヴァルキリーとベルセルク達は歓声を上げ、今、ここにフェスタ、全ギルド参加型、最大規模ヴァルバト大会が開催されたのだ。
優勝ギルドが得られる名声と賞金は計りしれない。
ヴァルキリーとベルセルク達は、それぞれの思いを胸に参加する。
◆
「えーっと、フェスタの一回戦の会場は、と」
コロッセオの外に出ると、エイルは魔法で投影画面を展開。
地図を表示させて、直隆達が覗きこんで来る。
「へぇ、いきなりヴァルハラ城下町の外に出るのか」
「ええ、一回戦はトレジャーらしいから。たぶん森か山に行くんじゃないかしら?」
「詳しい競技内容秘密とかケチくせぇよな」
直隆に続いてカラミティがエイルに言うと、ゼノビアが艶然と笑う。
「不測の事態に対応するのも英雄の資質というものですわ。では、我々も向いましょう」
「そうね、じゃあ駅に行きましょう。切符はちゃんと四人分とってあるわよ」
エイルはポケットから四枚の切符を広げて見せた。
◆
「えー! き、切符が使えないってどういう事よ!?」
改札前で駅員に怒鳴るエイル。駅員のヴァルキリーは申し訳なさそうに縮こまってしまう。
「すす、すいませぇん。でもあのこれ、予約日が明日なので、今日の列車に乗せることはちょっと、すいません……」
「え?」
エイルが凍りつく。
改めて予約した切符を見ると、確かに日付は明日だ。
どうやら予約するさい、日にちを間違えたらしい。
振り返ると、直隆達が白けた目でエイルに視線を送っている。
エイルは慌てて、
「ま、まあたまにはこんな事もあるわよ! あは、あは、あはははは」
直隆達は『バカ』とも言ってくれない、無言のままに背を向け、三人で会議を始める。
「どうするよ? 城下町の外までって俺らの馬で行っても結構かかるぞ」
「あたしらの中で一番機動力あるって言ったら、ゼノビア、お前の戦車どうだ? ライダー適性あるんだろ?」
「残念ながら、ワタクシの長距離移動用の四頭立て戦車でも時間に間に合う自信はありませんわ。空きのある駅を探しましょう」
「それなら任せて!」
三人の間に割り込み声高らかにエイルが投影画面を表示する。
「えっとこの時間の全部の駅の、ヴァルハラ城下町西門前駅に止まる列車で空きはね」
投影画面の文字を次々タッチしながら操作するエイル。
少しでもギルドマスターとしての威厳を取り戻そうと必死だ。
「よし、この中から一番近い駅は」
「じゃあ皆さん行きますわよ。ワタクシについてきなさい」
「「おー」」
「ゼノビアァアアアアアア!?」
エイルが素っ頓狂な声を上げた。
「なな、なんであんたが仕切ってるのよ! ていうかあんた魔術師じゃないから投影画面使えないでしょ!?」
早口にまくしたてるエイルに、ゼノビアは当然のようにして駅員の、ちょっと気弱なお姉さんを指差した。
「駅員さんに聞いたらすぐ教えてくれましたわ」
「お役に立てたでしょうか?」
エイルの視線が、ギロリと駅員のお姉さんを射ぬいた。
お姉さんは可愛そうに、小動物みたいな悲鳴をあげて縮こまってしまう。
「おら行くぞエイル」
「おらあたしらに遅れんなよ」
「早くしなさいなエイル」
「ムキー! みんなあたしをバカにしてぇ! あたしはヴァルキリーなのよ! 偉いんだからね!」
「解ったよバカルキリー」
「わかったよサルキリー」
「解りましたわ駄ルキリー」
「ムッキー!」
エイルは頭から黒煙を上げて怒った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます