第28話 裏・三国志

 中華三国時代。呉の国の南に大越、現在のベトナムがあり、呉国は何度もこの地へ侵攻を繰り返していた。

 それを幾度となく食い止めたのが――


「全軍! 私に続けぇ!」

『おおおおおおおおー!』


 戦象にまたがり、チュウ・アウは次々弓矢で呉軍の兵を射殺していく。

 その射撃は正確無比であり強烈。

 全ての矢が呉兵の顔面や首を貫いき血肉を抉る。

 アウの後ろを、他の騎馬隊や騎象隊、歩兵隊がついてくる。

 前方に敵長槍兵部隊が見える。

 長槍で象の足や鼻を狙う気だろう。


「甘い!」


 アウは戦象から飛び下り、両手で自慢の大戟、巨大なハルバードを構える。


「はぁっあああああああああああああ!」


 裂帛の気合と同時に振るった横薙ぎの一撃が、一度に一〇人の首を飛ばした。


 そこからアウの猛攻が始まった。


 高速で回転しながらアウの体にまとわりつくようにして動く戟は最強の鎧。

 彼女の周囲に近づく兵は一人の例外もなく肉片となり死亡。


 投擲された槍や弓矢させ弾き砕いて、騎兵に至っては馬がアウを怖がって役に立たない。


 ベトナム最強の戦乙女、チュウ・アウ。

 彼女一人による獅子奮迅の戦いで呉軍前線は総崩れ、歩兵が勝手に撤退を始めた。


 五〇年前に三国最強の武将、呂布奉先が死んだが、まさしくアウは女版呂布と言える最強の女戦士だった。


 強く。

 気高く。


 いつ何時も凛とし佇まいを崩さない彼女に、ベトナム軍の兵達は自然と鼓舞され戦った。


 だがその時、呉軍から一人の男が現れた。

 呉軍武将、陸胤だ。

 身なりから身分の高い者と見抜き、アウは首を取ろうと駆ける。

 だがそれよりも先に、陸胤は叫ぶ。


「一騎打ちを所望する!」

「何?」


 アウが足を止めると、陸胤は剣を地面に突き刺すと、両手の拳を打ち合わせ、服を脱ぎながら声を張り上げる。


「チュウ・アウ! お前はこの陸胤様が直々に討ち取ってやる! 貴様ら手を出すな! これは俺とこの女の戦いだ!」


 呉兵が武器を下ろすのを確認して、アウは上半身裸になり、靴も脱ぎ始める陸胤を見据える。


「ふむ、どうやら本気らしいな。いいだろう、その挑戦、受けて立――って、貴様どこまで脱ぐ気だ!?」


 アウが言う間に、草鞋を脱ぎ終わった陸胤は素足も晒して、さらに下帯にてをかける。

 陸胤はこともなげに。


「何を言う。男の勝負となれば裸一貫が当たり前ではないか、ほれ!」


「!?~~~~ッッッッッ!!??」


 陸胤は下帯を脱ぎ捨て、仁王立ちになって自らの下半身を堂々と晒した。

 アウは口をあわあわと動かし、目を丸くして、次の瞬間。


「いやぁああああああああああああああああああああああ!」

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