クラウディオ・ケラヴノス 八
今日は仕事が
さすがにちょっと頑張りすぎたかな?もうお腹ぺこぺこだよ。
家についたら、パトリツァ夫人はまだ帰ってないらしい。今日は遅くなると伝えてあったにしても、さすがに遅すぎない?
どうやらエスピーア殿とディナーに行ったらしい。それも
さすがにまずいんじゃないのかな?
いや、高位貴族なんだから外食するのが
でもさ、未婚の男性と二人っきりで個室に夜遅くまでこもっているのは……それも、休憩室付きの個室。さすがに色々と疑われても仕方ないんじゃないかな。
もともと
さすがに今回ばかりはエリィも呆れかえっていた。
僕もちょっと呆れながら私室に戻ろうとすると、子供部屋でアナトリオがひっくり返って駄々をこねていた。どうやらお風呂を嫌がってるらしい。
困っている乳母たちには申し訳ないのだけど、ジタバタ暴れる姿も可愛らしい。もうそうやって自己主張を始める年頃なんだね。
そうだ、いい事考えた。
「ね、一緒にお風呂入ってもいい?」
言った瞬間、周囲の空気が凍り付いた。
……いかん、ちょっと周囲の眼が痛い。
何だかエリィも使用人たちも
でもお風呂を怖がるのはたぶん水が怖いからで、懐いてる人が一緒に抱っこして入る事でだいぶ緩和されると思うんだ。僕が帰って来たことに気付いたトリオがぎゅぅってしがみついてきたので抱き上げて、もう一度一緒にお願いしたら、なぜかみんな諦めたような顔で許可してくれた。
なんだか僕の事を見る目が妙に生温かい気がするけど、きっと気のせいだよね?
お風呂からあがって、ほこほこした可愛いトリオがうとうとしだしたので、このまま寝かしつける事にした。
ちょうどそこに帰って来たパトリツァ夫人と鉢合わせしたので「一緒に寝かしつけします?」って誘ったら逆上されてしまってまた失敗。
なんかお前呼ばわりされたらエリィが怒って「勘違いしてませんか」と夫人を
ちゃんとエスピーア殿の事とかも話し合わなきゃいけないのに、困ったなぁ……
翌朝もトリオの歩く練習につきあってから登庁して政務に励んだ。もちろん月虹教団の摘発が最優先なんだけど、他の仕事もないわけじゃないからね。
あらかた書類が片付いたところで屋敷から急ぎの使いが。どうしたんだろう?
「パトリツァがティコス家の娘と接触したそうだ。随分と意気投合したようだな」
ティコス家のプルクラ嬢と言えば、エスピーア殿が集めてきた子供たちを仕込む役回りの人だよね。エスピーア殿だけでも頭が痛いのに、大丈夫かな……
「念のため早めに帰宅して話をしてみる」
「僕は時間をずらして帰った方が良さそうだね。僕がいると意固地になって聞く耳持たなくなるから」
つい失言して逆上させてしまう僕は、いない方が話を聞きやすいだろう。先にエリィに帰ってもらって、話を聞いている頃合いを見計らって帰宅する。
後で執務室で合流して話を聞いてみると、プルクラ嬢との会話そのものは世間話程度で大したことはなかったみたい。
芝居に誘われたのと、近々屋敷に呼んでお茶をしたいとのこと。人目の多い芝居やうちの屋敷の中ならおかしなこともされないだろうという事で許可したそうだ。
夫人がやる気満々だから今日は寝室を共にしないと、と苦笑していた。苦手意識が前面に出ていて、夫人がちょっと気の毒なんだけど……
お互いに割り切った政略結婚の筈なんだけど、夫人はエリィを
もちろん、政略結婚でもお互いの努力で愛のある家庭は築く事は可能なんだろうけど……見事なまでにお互いその気がないからね。
それでもエリィは夫人を尊重する姿勢は見せてたけど、夫人はエリィの事を所有物扱いだから……最近はエリィも諦めて勝手にしろって思ってるみたい。
本音を言うと、僕もちょっと……いやかなり面白くない。
彼はそんなに安っぽい人間じゃないんだ。
政略でも何でも、せっかく結ばれたんだから大切にしてほしい。僕にはどうあってもできないことだから。
今夜はあまり熟睡できそうにないなぁ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます