第12話

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王宮では毎年の祭日に紅白の落雁が出てお終いだが、今年はそれに加えて祭りに参加をする人たちと同じように、新五郎の豪華仕出し弁当が支給されることになっている。これは長兵衛が王宮の職員の声をまとめて王様と相談してして段取りをつけたものである。


長兵衛[与兵衛寿司の料理と寿司それに菰被りの特大清酒樽の送り先の手配がすべて整いました。タエさんのリストももちろん入れています。こちらがリストです。][ご苦労さん。こんなもんだな。


いよいよ祭りの当日になった。

鯛国国王は約束の刻限の5分前に天照大神宮に到着をしたが、新門辰五郎と若頭の大前田栄五郎が出迎えた。辰五郎はここの氏子総代になっているので顔も効く。

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辰[どうもいらっしゃいませ。私が新門辰五郎です。][今日はお世話になります。]辰[小頭の総一が1日お相手をいたしますので、なんでも言いつけてください。小頭、神輿の担ぎ方を教えてやってくれ。]総一[へい。承知しました。王様こちにどうぞ。]


タエのところの山車は幕も全部張られ準備がすべて整った。世話人も全員が揃いいよいよ出発である。そこにミーシャが現れて会計の世話人のところに行き、ご祝儀10万円を申し出た。


世話役はびっくりしていたがすぐに領収書を書き、習字の半紙に金壱拾萬円也ミーシャと書き込まれ山車の横腹に貼り出された。祭りで拾萬円を払ったのは今までに新門と王宮ぐらいだったのでみんなが驚いている。


世話人が首をかしげていたのでタエがあの人は本物の歌手のミーシャで、王様の義理の娘だと言ったらようやく納得した。


鯛の王様は神輿を担ぐ前に世話人に20万円のご祝儀を申し出た。最高の額である。

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すぐに辰五郎に知らせが行ったのでかけつけてきて丁重にお礼を述べた。その後に町内を練り歩き肩が赤く腫れあがり、腰がヘロヘロになるまで頑張っていた。


タエの町内の山車は王宮の町内ということで、年番と同じで8台並びの1番目に引き回された。[一番は気持ちがいいジョー。]ター坊は笛もうまくなっようで交代をしながら吹いている。タエ[こういう才能を他にも発揮すればいいのに。][そうだジョー。ター坊はお祭りの天才だジョー。]


[結婚式の時と同じように先に神輿が5基が、バードサンクチャリーの芝生に揃い休憩をしている。王宮の祭り要員は総出で酒におつまみそれにペットのお茶に、今回からの初めての試みで新五郎の豪華仕出し弁当を配っている。そしてそれぞれの部落の会計の世話人には10万円のご祝儀が渡された。]


山車8台も揃いぴっとこ踊りのパフォーマンスが始まった。30分ぐらいだけどもここが見せ場なのでそれぞれで力が入っている様だ。ミーシャは飛びぬけてセンスがいいので、皆の目が釘付けになっている。

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鯛の王様は新門の若手と酒を飲みご機嫌のようだ。こういう楽しみを求めて来たのもしれない。踊りのパフォーマンスが終了したので、弁当や酒に子供達にはジュースにお菓子も渡された。


ター坊[新五郎の仕出し弁当はごぼうが柔らかいし味もいい。高価な材料ではないけれど、美味いし満足度は高いな。]タエ[そうね。私達が作っているお惣菜とはランクが違うわ。]


[皆の頑張りに報いる知らせだけれど、マダムユリのブランドはパリの有名ブランドを入れても売上げがトップになってる。したがってコミッションもかなりのものになっています。約束通りに半分がこちらで残り半分が3人に権利があります。]

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すず[これはいいことを聞きました。ところでユリちゃんは長生きできますよね。][はっはっはっ。すずさんがここに勤めている間はここで仕事をしているかもしれないな。]


[それはいいことです。プチセレブのこの環境を手放したくありません。]サスケ[はっ.はっはっ。ずいぶんと力が入っていますよ。]


王宮の正面前で皆の休憩の頃合いを見計らって、王様と志野が壇上に立ち王様がこの度のお祭りで歓迎してくれたことにお礼の挨拶をした。その後に辰五郎の木遣りに続いて1本締めをして、正面から下がっていった。

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祭り要員はまだまだ大忙しで、与兵衛寿司と菰被りを届けなければならない。新門の事務所に予定数量が届けられたので、一家の手伝いの奥様連の車に積み込んで猿回しの親父やまんじゅう屋それに北斎や広重に写楽達に届けられた。


子供たちは裏門6時に集合して王宮に入っていった。

タエ[私の予定のところは全部に届けました。][それはご苦労さん。さあ食べてくれ。]志野に昴やサスケやすず達も一緒に箸をつけた。すず[やっぱりネタが違います。これは特上の上ですよ。]


少し遅れてミーシャもやってきた。[さあ、ミーシャも食べなさい。祭りは面白かったかな。][はい。とてもエキサイトをしました。毎年やりたいです。ここのお寿司はとてもおいしいですね。こんなにいいものは初めてです。]

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すず[10日前に予約をしましたんで、今日に合わせていい材料を仕込んだんですよ。普通では食べられません。][鯛の王様はどうなったかな。]


タエ[はい。日本酒を飲んで出来上がっちゃった感じですね。お連れがいますのでその人に任せればいいと思います。][そうだな。酔っ払いの相手までしてられんわな。それでいいよ。]


[昴はどうだ、美味しいかな。][はい。やはり本店の方がおいしいです。][まあ、今日のは特別なネタだからな。お土産はいつもの通りかな。][はい。よっちゃんにター坊は5人前づつにタエちゃんは無しそれに独身者は私を含めて2人前を持ち帰りです。]


[タエちゃんは実家で充分に確保していると思うけど大丈夫かな。][はい。余るようにセットしてあります。]

[はっはっはっ。そうでなくてはいかんな。それでは祭りはまだ続いているのでお開きにするか。あ、ミーシャは家族同様だからお土産は無しだ。では解散。]よっちゃん[家でお寿司を待っているジョー。]ター坊[ボクの家でも待っているので早く帰ります。]

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翌日、鯛の国王が王宮にやってきた。

鯛国王[どうもいろいろお世話になりました。おかげで楽しかったです。タエさんとミーシャさんにも伝えたのですが皆さん犬達を含めて全員を鯛宮廷料理に招待します。]


2・3日前に言ってくだされば準備をしますので、こちらの大使館員に連絡願います。]

[それはどうもありがとう。来年は正式に招待をします。][では来年もお願いします。失礼します。]





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