第833話 企業乗っ取り計画(3)
役員たちの視線が一斉に、俺に媚び諂ってきた伊角へと向けられる。
「――わ、私を見るな! ――と、とにかくだ……。私は、この会社からは手を引かせてもらう! 桂木優斗殿、私と伊角商事と伊角グループは桂木優斗殿とは敵対する意志はありませんので」
「分かった」
「神楽坂静香氏、様々な無礼を働いたことを謝罪する。これからも、伊角商事と良好的な関係を続けてもらいたいと思っているが――」
「それは必要ない」
俺は伊角商事の言葉を遮る。
「優斗君!?」
静香さんが俺の名前を呼んでくるが、俺は構わず伊角信孝の頭を掴む。
「――ひっ! ――こ、ころさ――」
「殺しはしないから安心しろ」
そして伊角信孝の記憶を読み取ったあと、手を放す。
「ふむ……。伊角商事が神楽坂グループと取引をしていたレアメタルについては俺が供給しよう。だから、伊角商事とは神楽坂グループが関わることはない」
「――なっ!」
俺の言葉に伊角信孝が声をあげるが、殺気を混ぜただけの目で伊角を見ただけで伊角は腰を抜かすが、「伊角商事が神楽坂グループに提供しているタングステンなどの鉱物は、海外でも希少で、それらをいくら桂木優斗殿とはいえ、供給元を確保することは――」と、のたまう。
それに対して、俺は笑みを浮かべる。
「何を言っている?」
俺は会議室の椅子を掴む。
そして粒子構成から原子構成までを一瞬で組み替える。
そうすると目の前にはオールタングステン製の一脚の会議椅子が出来上がる。
「え? 椅子の材質が代わって――」
立ち上がった伊角信孝は、震える手で椅子をしばらく触ったあと、驚愕した眼差しで俺を見てくる。
否、伊角だけではなく役員たち、さらには静香さんまで何が起きたのかを確認するかのように伊角信孝を注視する。
「す、すべてタングステンで作られて……。手を翳しただけで? どういう理屈で――、いや……それよりも……」
「この俺の力を持ってすれば粒子と原子の再構成なぞ何の問題もない。わかったな? 伊角」
「……あ、ありえない……。こ、こんな――」
「伊角」
「はっ! わ、わかりました」
「なら、さっさとこの場を去れ。それと、俺の身内や都に手を出した場合、貴様の三親等以内の親族は皆殺し確定だからな? それでも、良いと覚悟したら手を出してこい」
「――い、いえ! とんでもありません! ――わ、私は! 退室させていただきます!」
慌てふためくようにして会議室から伊角信孝は出ていく。
「優斗君?」
「ああ、すまない。話の途中だったな?」
静香さんの俺の名を呼ぶ声に応じた俺は、役員たちに視線を向ける。
「さて――」
俺はタングステン製の椅子を元の会議室の椅子に戻して座り足を組む。
その動作に役員たちは、体をビクッ! と、震わせる。
「お前たちは、神楽坂グループに対して裏切りを行ったわけだが、本来であるなら都の父親が社長である神楽坂グループを裏切った時点で殺すことは確定なんだが――」
静香さんの方を見て、俺は溜息をつく。
本来であるのなら俺は敵対者には確実は死を制裁を加えてきた。
だが、企業の運営していく以上、それを行っていいのか? と、思考してしまう。
とくに静香さんの目の前で血生臭い行動は……。
「お前たちが、これから心根を入れ替えて神楽坂グループに貢献するのなら生かしておいてやってもいい」
「何を言って!」
役員一人が何か言った途端、そいつの首が飛ぶ。
――と、同時に会議室の中に血飛沫が撒き散らされる。
「ひいいいいいいい」
「あああああああー」
「うあああああっ」
唐突な事態に会議室内に上がる悲鳴と叫び。
「黙れ」
俺は床に落ちた頭を右手で拾うと、頭を失って生命活動を失いつつあったふらついた本体――、体の方を左手で支えたあと、拾った頭を接合する。
「う、うあああああああっ!」
「無事で何よりだ。どうだ? 臨死体験した感想は」
「――ひっ! ひいいいいいい」
会議室の床に座り込んで頭を抱えながら俺を恐怖の眼差しで見てくる首を飛ばして修復した役員。
まったく、この程度のことで全員が恐慌に陥るとはな。
異世界ではよくあったことだぞ?
「さて、もう一度確認するぞ? お前たちは、俺の敵になるか? それとも神楽坂グループに、これから貢献するか? どっちだ?」
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