第815話 黄金に魅入られた者たち(12) 

 ――その頃、神堕ち島の桟橋に純也が契約した式神が降り立つと、高松海上保安部の船を操舵していた乗員たちを降ろしていた。


「ふう。かなり距離があったな……」


 純也は、多少の疲労を感じながら、「大丈夫ですか?」と、保安部の人間たちに話しかける。


「はい。大丈夫です。それよりも、これは――」

「式神です。まぁ、細かいことは――」

「分かっています。それよりも驚いただけですので……」


 海上保安部の男が、どう反応していいのか分からないと言った表情のまま、純也からの問いかけに答えると、一緒に乗船していた船員たちと顔を見合わせると頷き合い立ち上がる。


「自分達は、風祭さんのところへ行って巨大なタコに襲われたことを説明してきます」

「そうですか。宜しくお願いします」


 桟橋と言っても、そんなに広くはない。

なので純也たちが桟橋に戻ってきたのは風祭達も、すぐに気が付く事となった。

風祭を筆頭に純也の元へと小走りで近づいてきていた彼女たちは、海上保安部の男性と純也の会話が終わったところで到着した。


「峯山君!」

「あ、風祭さん」

「何かあったの? その変なのもそうだけど……」

「それは、私が説明させていただきます」

「あなたは?」

「高松海上保安部の柳沢と言います」

「では、柳沢さん。お願いします」

「はい。じつは私が操舵していた船ですが、島から離れてしばらく進んでいたところ、突如、操舵が利かなくなりました。そして、唐突に海の中から巨大なタコが出現しました」

「巨大なタコ?」

「はい。おそらくは海から出ている胴体の部分だけで100メートルはあろうかという巨体でして、その化け物により船は破壊されました」

「え? つまり、襲撃を受けたってこと?」

「はい」

「峯山君、それって本当なの?」


 風祭からの確認に純也はコクリと頷く。


「そう……」


 顎に手を当てる風祭は、そこで「あっ!」と、何かに気が付いたかのようにして周囲を見渡す。


「峯山君」

「何ですか?」

「竜道寺さんは?」

「あ、竜道寺さんは――」


 言葉の途中で純也は視線を海の方へと向ける。

 すると丁度、海の上を純也たちの方に向かって走ってくる人影があり、それは竜道寺であった。


「私の目がおかしくなってはいないのよね? 何だか、水の上を走っているように見えるんだけど……」

「まぁ、おかしくはなってないですね」


 風祭の戸惑った独り言に反応する純也。

 もちろん、その場にいたSATの隊員たち、海上保安部の人々も、海の上を走って桟橋に降り立った竜道寺を見て信じられないと言った表情をしていた。


「峯山君、お疲れさま」

「いえ。竜道寺さんもお疲れ様でした。それよりも、あの化け物は?」

「倒さずに放置してきたから」

「あー、なんか変な視線を感じましたからね。本気を出すのは止めておいた方がいいかも知れませんからね」


 純也の応対に竜道寺も「そうね」と、答える。

 


  

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