第790話 神社庁と大阪府警(4)
「そうか。重要な説明中に無駄話は止めてもらおうか?」
岩本警視正は、額に血管を浮かび上がらせて、純也と桔梗を睨みつけるようにして忠告する。
そんな様子を竜道寺は見ながらも、薄々と岩本という男がどういう人間なのか? と、言うことを理解していく。
「(どうやら、この岩本という人物は、スルーされたり無視されたりすることを極端に嫌うタイプみたい? それか……、自分を中心にして考えている?)」
神社庁から派遣されてきた二人を――、とくに桔梗に対して警戒するような面持ちをしている岩本警視正に対して竜道寺は抱いた感情を心の中で整理していく。
「申し訳ない」
純也が空気を読み謝罪する。
一応は、クラスの中でも中心人物であり、陽キャグループに立ち位置を持つ人間ありがちな行動であった。
「分かったのならいい」
そんな純也の謝罪の言葉に若干気分を良くした岩本警視正は、純也からの謝罪を受け取る。
その様子は、第三者から見れば高校生が年配に気を使ったようにしか見えない。
ただ、それを岩本警視正は俯瞰的に見ることが出来ずにいた。
そんな様子を見た他者が、どういう感情を抱くのかを理解することもなく。
「――では」
岩本警視正は、神社庁から派遣されてきた純也と桔梗に、これから行うことを説明していく。
説明の時間は10分ほど。
殆どの資料は、陰陽庁から神社庁から事の経緯を含んで共有されていた事もあり、大阪県警から説明された情報は、その1割程度にとどまっている事には、純也も桔梗も気が付いてはいたが、余計なことを口にすることはなかった。
そもそも、二人とも陰陽庁しいては桂木優斗からの依頼で来ていたに過ぎないからであり、今回の封印されていた島への上陸と島民消失という原因不明の事件解決に対する調査と責任は大阪県警と大阪知事と大阪威信会が持つということであったから。
「では、これからSATと合流する。現地は、少し距離があるが既に車は回してある」
「そうですか」
純也は、相槌を打つ。
余計なことを言うと、疲れる相手だという事を純也は学習していたからだが。
「――で、集合場所は?」
「先ほど説明したが、高松海上保安部に向かうことになる」
その説明に、話半分に聞いていた純也は「高松市に今から!?」と、心の中でツッコミを入れつつ「そうですか」と小さく頷いた。
――大阪城の敷地から出た一行は、岩本警視正の案内どおり車両が停まっている場所へと足を運ぶ。
到着した場所には、すでにワンボックスカーが停まっていた。
「あれですか」
「そうなる」
凡そ警察車両とは言わない一般人の運転するような黒塗りのワンボックスカーを見て純也が確認すると岩本警視正は『何か、問題でも?』と、言った様子で純也を見る。
「いえ。警察車両で向かうのかと思っただけで」
「そういう目立った行動は控えているだけだ」
ぶっきらぼうな言葉で純也からの質問に答える岩本警視正は、苛立ちを隠すこともなく答える。
最初に顔合わせをしたときとは打って変わってぞんざいな扱いをされる純也は、岩本警視正という人間に対していい感情を抱くことはなかった。
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