第779話 都との会話(2)
「都……」
俺が見てる前で団地の階段を下り切った都が、俯いたかと思うと口を開く。
「こんな遅くまで何をしていたの?」
「仕事だ」
俺は端的に答える。
「そうなの?」
「ああ。――で、都は、どうしてこんな朝早くに俺の家の近くに居たんだ? そもそも、静さんは、ここに来ることを了承したのか?」
「うん」
うんって……。
静さんは、俺について都に対してきちんと説明しなかったのか?
俯いてはいるが、都は怒っているようには見えない。
俺が静さんにお願いしたことをキチンと伝えているのなら、普通なら都は怒っているどころか会いに来ることすらないというのに。
どういう心境なのか予想がつかない。
「そっ、そうか。とりあえず、最近は物騒なんだから、自宅まで送っていくから」
「待って!」
都に提案するが、俯いたまま都が否定するような言葉を口にしてきた。
「どうかしたのか?」
「えっとね……。優斗、少し話せない?」
「話を?」
どういうことですか? 静さん。 ――と、思わず心の中で突っ込みを入れつつも、断るのも不自然かと考え――、
「うん。駄目?」
「駄目じゃないが……」
「それに仕事が終わったのよね?」
「これから、残業が――」
「残業?」
何故か断ったらいけない気がしてくる。
「――いや、何でもない。――そ、それで話というのは?」
「ここじゃあれだから……」
「……わかった」
携帯電話でタクシーを呼んだあと、ポートタワーの近くまで移動する。
幸い、午前7時前という事もあり人の数は少ないというか殆どいない。
タクシーを降りたあと、二人して何の会話をすることもなくポートタワー近くの海岸線を歩く。
しばらく歩くと石の階段と堤防が見えてくると共に、干潮時なのか砂浜が目に入った。
「ねえ。優斗」
都が足を止めて俺の名前を呼んでくる。
俺は都がどういう理由で、俺を朝方に自宅近くで待っていたのか分からず無言で彼女からの言葉の続きを待つことにする。
「優斗は、どうして私に隠し事をしているの?」
「隠し事?」
それは、俺が異世界で都を失ったことか?
――いや、だが、それは都を含めて地球の人間で知る者はいないはずだ。
「うん」
後ろを付いてきていた都の方へと視線を向けるが、彼女は未だに俯いたままで何を考えているのか予想がつかない。
「だって、優斗は私のことを守ってくれているよね? それも優斗自身じゃなくて、白亜さんに任せているよね?」
「――!?」
どうして、白亜に護衛させていることを都が知っているんだ?
もしかして白亜が口にしたのか?
そんな報告を一切受けていないが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます