第765話 銀行襲撃(2)第三者Side
千葉駅と、商業デパートを繋ぐ通りには、多くの人が信号待ちで足を止めていた。
そんな中で、拳銃や自動小銃を手にした覆面の男たち十数人が、衆人観衆の目を無視したかのように、その前を走り去っていく。
そんな光景を見た信号待ちをしていた衆人観衆は、どうしてミリタリーの恰好をした人々が列を成して自分たちの前を通って行ったのか? と、疑問を覚えることはあったが、平和ボケした日本人特有の危機管理意識が麻痺している人々には、本物の拳銃を手にした人間たちが目の前を通り過ぎたなど思いも拠らなかった。
男たちの恰好は、完全武装した兵士そのものであり、完全に街中では浮いた存在。
だからこそ、それが非現実的なモノであると一般人に錯覚を起こさせていた。
「アルファ」
リストラされた男たちのチームを指揮していた柳は車の中でモニターを見ながら男たちに指示を出す。
「アルファ部隊は、銀行内を制圧。ベータ―部隊は、民間人を銀行の外へと出せ」
「「了解」」
50代の男たちは、軍隊のような動きで一糸乱れずに銀行入り口へと到着する。
そして――、銀行に入ろうとしたところで一人の20代の女性が入り口で仁王立ちするかのように立ち塞がった。
女性の出で立ち――容姿は一言で言うのなら10人がすれ違えば10人が振り返るほどの美貌であった。
漆黒のツインテールは、腰まである事から、かなり髪が長いということは、一目で分かるほどであり、またその髪質は生まれた赤ん坊のように輝いていた。
プロポーションもグラビアアイドル顔負けなほど整っており、男たちの視線が、その女性の豊満な胸に釘付けになったのは、雄の性からして仕方ないことであった。
「――そ、そこをどけ!」
魔性とも言えるほどの美貌を兼ね備えた女性を見ていた男はハッ! と、すると口早に、そして高圧的に命令をした。
「その言い分は聞けない」
まるで男のようにバッサリと切り捨てる言葉遣いをした女性に、男たちは自分たちの行動が邪魔されたと判断し銃口を女性に向けた。
それと同時に、全員が昏倒して倒れた。
「問答無用で殺気とか、本当に困るなあ」
竜道寺は、深くため息をつきながら身体強化をした上で周囲の音を拾う。
すると、少し離れた位置に応答しなくなった男たちに対して指示を何度も口にする男の声を、その強化された聴覚が拾った。
「事前に事件を解決するのも警察の仕事か……」
嫌々そうな顔をしたあと、竜道寺は黒塗りのハイエースへと向かう事にする。
もちろん常駐している警備会社の人間には、昏倒した男たちを警察に引き渡してくださいと、警察手帳を見せて説明をしたあとに。
男たちの指示をしていた男――、柳は唐突にカメラが壊れたこと――、そしてアルファ、ベーターチームと連絡がつかなくなったことに動揺し、作戦は失敗したと判断し運転席へと移動したあと、エンジンをかけて逃走を図ったが――、車が走り出した途端に、ハイエースのタイヤがパンクしたことで動かなくなる。
「――な、なにが起きた!」
柳は、慌てた様子で車から出るが、そこには竜道寺が立っておりニコリと笑みを浮かべる。
その微笑みは女神の如くであったが――、「千葉県警察本部、竜道寺警視だ。拳銃の不法所持及び、強盗未遂現行犯により逮捕する」と、確固たる視線でそう告げたのであった。
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