第749話 修行2日目(4)

「モンスターって……」


 諦めたような呟きの竜道寺と対照的に、「そういえば、以前から気にはなっておったが、桂木優斗」と、後ろに立っていた伊邪那美が俺の名前を呼んできた。


「ん?」

「お主、妖怪とかがモチーフではないのじゃな」


 そんな非科学的なモノと俺は戦ったことがないから、エリアを作ったとしても配置できるわけがない。

 神とかの存在なら辛うじて理解はできるが、妖怪などと交流を持ったのは、地球に戻ってきてからだからな。


「まぁ、モンスターの方が分かりやすいからな」

「ふむ。それはゲームから取り入れたと言ったところかの?」

「そんな感じだな」


 まぁ、そもそも実際に戦ったことのない魔物は俺でも再現することはできないが。

 

「師匠っ! あの! 青い液体みたいなのは!?」

「スライムだな」


 大きさは、高さ30センチ、幅は1メートルほどの液状の青い物体がズルズルとした音を立ててゆっくりと近づいてくる。

 ついでに言うと、血が乾き黒く薄汚れた石畳の床は、スライムが這いずったあとは綺麗に磨かれているように茶色の石肌を見せていた。


「まずは戦い方を教える」


 俺は、竜道寺に下がるように指示を出したあと、一足飛びに這いずっているスライムの頭上へと移動し、スライムが体内に隠している透明な核を手刀で突き破壊する。

 核を破壊されたスライムは、俺の音速を超えた手刀の抜き差しにより生じた穴から強力な硫酸をまき散らしながら絶命した。

 俺は飛び散ってくる硫酸から身を翻し空中を蹴り距離を取ったあと、竜道寺の方を見る。


「まぁ、こんなところだな。どうだ? 見てたか?」

「――え? あ、はい! ――あ、あの! し、師匠」

「どうした?」

「今、身体強化は殆ど使っていないように見えましたが……」

「そうだな。その方が見やすかっただろう?」

「そ、そうですね……」

「ちなみに――」


 俺は、もう一匹、出現したブルースライムを横目で見ながら身体強化をしたうえで手刀を振り下ろす。

 その速度は、音速の遥かに超えた領域であり、大気を切り裂くことでダンジョン内の天井と床を衝撃刃により一刀両断し、物理的現象を伴った真空の刃がブルースライムを消し飛ばした。

 途端に、周囲に爆風と爆音が巻き起こりダンジョン内に木霊す。

 数十秒間、ダンジョン内に音が反響し、止んだあとには、ダンジョンの通路が崩落するどころが四角い通路自体が拡張されて地下道をシールド工法の機械を使い採掘したように円状に切り裂かれていた。


「身体強化を使うとこんな感じになる」

「もう、これは笑うしかないのう」

「これが師匠の……本気……」


 まぁ、本来の――、全盛期の力ならば本気になれば恒星を両断する程度のことはできるようになるが、それを口にする必要はないか。


「とりあえずだ。ダンジョン破壊するだけの力を出して魔物を倒すのはお薦めしない。自分の力をセーブした上で必要な力で魔物を倒せ」

「分かりました」

  

 



   

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