第747話 修行2日目(2)

「ご主人様。妾も、晴明に関してはほとんど情報をもっておりません故、奴らが何のために清明を殺しにくるのかまでは分かりませぬ」

「白亜って、そういえば福音の箱は安倍晴明から頼まれて守ってきたんじゃないのか?」

「――いえ。正確には安倍晴明の子孫です」

「ふむ……。子孫か……。そうなると、安倍晴明が今の時代に生きてる可能性は?」

「玉藻前様から、聞いた限りでは、その望みは薄いかと」

「薄いか……」


 コクリと頷く白亜。

 

「あ……。それなら直接聞いた方が早いんじゃないのか?」

「直接ですか?」

「いるだろう? いい人材が」

「分かりました。すぐに連れてきます。それに、これから必要なのでしょう? ご主人様」

「だな」


 すぐに白亜はベランダに出ると風となって姿を消す。

 そして10分後にパンドーラと、伊邪那美を連れて姿を現す。


「――なんじゃ。ずいぶんと急ぎのようじゃな。桂木優斗よ」

「悪いな。少し気になることがあってな」

「ふむ……。それは、最近、おぬしを襲撃してきている者たちのことか?」

「よくわかったな」

「そのくらいはな……。――で、何が知りたいのじゃ?」

「俺たちを襲撃してきている連中と、その目的を知りたい」

「目的は分からんのう」

「分からない?」

「うむ。考えてみるとよい」


 そう話し始めながら、伊邪那美はソファーに座る。

 そんな伊邪那美を見るのは、桂木優斗、エリカ、白亜、竜道寺、胡桃、パンドーラと、家に滞在している全員であった。


「神と、それ以外ではな。価値観自体が異なる。とくに妾は、黄泉平坂――黄泉の国の女王である」

「つまり立ち位置が異なるから予想は出来ないということか?」

「そうなるのう。正者が何を求めているかなぞ、妾には分からないのう。むしろ、おぬしの妹の方が分かるのではないのか?」

「胡桃が?」

「私が? 分からないから」


 手をブンブンと振りながら、分からないアピールを必死にしてくる妹の胡桃。


「それなら白亜さんとか、エリカちゃんの方が分かるんじゃ――」


 そう胡桃が言いかけたが、「それは無理じゃな」と、伊邪那美が両断してくる。


「狐も、そっちの亜神の力を借りて術を行使している異邦人も、桂木優斗と契約をしているのであろう? ならば、すでに立場は、この世界の存在ではない。そんな存在が、この世界に存在している生命体の考えを推し量るのは難しいと思うがの」

「そうなの?」


 胡桃が伊邪那美の説明に首を傾げながら疑問を呈する。


「それでは、私とかは……」


 竜道寺が恐る恐ると言った様子で口を開いたが、そんな竜道寺の言葉にも伊邪那美は頭を左右に振る。


「下手な仙人よりも長生きしているのじゃから人外に足を踏み入れているお主も違う意味では、白亜とエリカと同じじゃ」

「人外……」

「それに妾の手料理を何年も食べておったのじゃ。その理由は分かるの?」

「――え? ――ど、どういう……」


 伊邪那美の言葉に、竜道寺が顔色を変えた。




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