第511話

「神谷、神社庁の方から情報が提供されたって、今、言ったよな? その内容は分かるか?」

「一応、こちらになります」


 新しく印刷された用紙を受け取り、印刷された文章に目を通していく。

 そこには、俺達を襲ったのは、星の監視者の配下である十二支精霊であること――、それは星の権能を有している存在であり人類に友好的な存在と記載されている。


「まったく友好的には見えなかったが……」

「桂木警視監は、戦ったのですよね?」

「まぁな……」

「星の監視者と?」

「そうなるな。配下だが、それと戦ったってことは星の監視者と戦ったって事になるんだろうな」

「神社庁は、星の監視者は八百万と同じ扱いというのが組織的な意向らしく、戦闘は避けるというのが定石になっているようです」

「つまり、神社庁が情報は提供してきたが、こちらに関与してくるということは――」

「今回の件では、中立の立場をとると思われます。ただ、事前に情報を知らせてきた事を考えますと、事を荒立てたくないというのが透けて見えます」

「――で? 警察の方としては、どう動くつもりなんだ?」

「警察組織としては、自然災害と同じ扱いで動くようです。正直、超常的な力を有している存在を相手にする上で、警察組織の火力ではどうにもなりませんから」

「まぁ、そうなるよな……。――で、俺への依頼は?」

「ないようです。日本政府としても、今回は廃校同然の建物が一つ崩落しただけと考えているようで――」

「日本政府も事を構えたくないということか」


 まぁ、これが人死にが出ていれば話は別なんだろうが、今回は廃校が崩壊しただけと考えている事から見て日和見を決め込んだのだろう。

 それに下手に動いて事態が悪化すれば、ガス爆発と言う事で、事件を治めようとしている事も波及しかねないだろうし。

 何より情報が出回った時に、面倒な事になると考えているのだろう。


「しかし、十二支精霊ね……」

「何か思い当たる節でも?」

「――いや、特に何もないな……」


 俺は言葉を濁す。

 思い当たるところはないが、少なくともアイツらの目的の一つは聞かされている。

 それは、俺を仲間にしようと接触してきたことだ。

 しかも、まるで俺が仲間になる事が当たり前のような態度をとっていた事から、何か深い事情があると言うのは容易に想像がつく。

 問題は、俺を仲間にして何を企んでいるか。

 それが分からない以上、放置するというのは危険極まりないと思うが、安倍晴明が戦っていたと前鬼が言っていた事を考えると、前鬼に話を聞いてから指針を決めた方がいいだろう。


「桂木警視監?」


 考え込んでいた俺に話しかけてくる神谷に、俺は視線を向ける。


「どうかしたのか?」

「次の報告になりますが、校舎が崩落して休校扱いの山王高等学校の扱いについてですが、文部科学省の方から、すぐに授業が始められるようにと、幾つかの学校を選んで山城理事に提案する予定のようです」

「なるほど……」


 俺は資料に目を通す。

 その廃校の数は、やたらと多い。


「それにしても廃校の数が多いな。美浜区だけで幾つあるんだ……」

「更地にするにも費用が掛かりますから、文部科学省としては再利用できる建物は再利用したいと考えているようです」

「まぁ、候補が多い事は良い事なんじゃないのか?」

「ただ、今回の校舎崩落についてですが、文部科学省と教育委員会の方から、廃校中の建物の修繕費や掃除費用、インフラ設備の設置を含めて、今年度の予算がオーバーしており、すぐには予算が下りないと」

「予算が降りないって……、勉学の場を提供するのは国の義務だろ」

「ですが、このような短期間に校舎が2回も崩落するような問題を起こす学校ですと、厳しい目で見られることも仕方ないかと」


 いや、それは不可抗力だろ。

 攻められる謂われはないんだが?

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