第491話

「おかえりなさいませ。お嬢様」

「ただいま」


 執事に言葉を返しながら、俺は2階の自室へと入り、用意されていたワンピースに着替え、制服をハンガーに掛けたあと風呂場へと向かう。

 風呂場で服と下着を脱いだあと、体を洗い、露天風呂へと入る。


「はぁー」


 思わず声が漏れる。

 学校での授業といい、陰陽庁の管理職との話し合いといい、疲れることが多すぎて、風呂に入るだけで、声が出てしまう。

 やっぱり風呂は最高だぜ!


 風呂から出たあとは、メイドに身支度をしてもらい部屋に戻る。

 そして、ベッドで横になったところで、スマートフォンが鳴る。


「都か? どうした? こんな遅くに――」


 すでに時刻は、午後9時を示している。


「ねえ、優斗。知っている?」

「知らん。主語は、何処に行った?」

「今、学校で話題になっている七不思議!」

「あー。たしか伝説の木の下で告白した男女は永遠の愛をなんちゃらって奴だっけか」

「うん! それでね! 優斗」

「何だ?」

「七不思議って、全部を知ったら死ぬらしいよ?」

「だろうな。俺の知っている七不思議は、そんな感じだよな?」

「うん! それで、危ないと思わない?」

「別に住良木がいるし、純也もいるだろう? 神社庁の連中が、学校に居るんだから、本当にヤバイ伝説は、アイツらが何とかするはずだ」

「でも、万が一ってこともありえるよね?」

「まぁ、可能性としては無くはないな」


 それでも、都と知り合い以外は、どうなろうと俺は気にしてないから、態々、関わろうとは思わない。

 

「優斗、それでね……」

「ふむ」

「私も付き合いで参加することになったんだけど……」

「はぁー、それで怖いから付いてきて欲しいと? 悪いが、俺には霊力とか霊視の力なんて無いぞ? あくまでも物理現象――、科学的に戦っているに過ぎない。本当に非科学的なモノが絡んできたら、対処に困るんだ?」

「優斗でも難しいの?」

「相手が、物理的に干渉してくるのなら物理世界に引き摺りだして存在を固定して殺すことはできるが、それが出来ないとどうにもできない」

「そうなんだ……」

「だから、そういうヤバイモノには極力近づかないようにするように。友達との付き合いであっても、遊び半分に他人の領域に首を突っ込むと命を落とすことになりかねないからな」

「うん。分かった」

「じゃ、俺は、もう寝るから、また何かあったら電話してくれ」


 


 翌朝、学校に登校すると――、


「凛子さんっ!」


 いきなり純也に話しかけられた。


「どうかしましたか?」

「四条さん。俺! じゃなくて私と一緒に校内で夜のデートをしませんか?」

「しません」

 

 即断即決で純也からの提案を一刀両断で斬り伏せた。





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