第464話 神楽坂都side(1)

 ――優斗が電話に出ない。

 さっきまでコール音が鳴っていたのに……。

 どうして?

 どうして?

 どうして?


「都」


 もう、意味が分かんない。

 どうして、私からの電話に出ないの?


「都っ!」


 今まで、優斗が私からの電話を拒否するような事はなかったのに……。

 

「どうしたん? 都!」


 いきなり何かに引っ張られるような感覚を覚えた。


「大丈夫か?」

「…………じゅ……んや?」

「どうかしたのか? 顔色、真っ青だぞ。それに保健室を無言で出て行ったと思ったら、俺の声も聞こえていなかったし」

「……ないの」

「え?」

「優斗が電話にでないの!」

「そりゃ、さっきも住良木さんが、優斗は忙しいからテストだけ受けに来ているからって言っていただろ」

「違うもの! 優斗が、私からの電話を出なかった事なんて一度もないもの!」 

「いや、アイツって一応は警視監だろ? 電話に出られない時くらいあるだろ……。俺、調べたんだけど、警視監って、30万人いる警察官の中でもトップ中のトップで40人もいないらしいぞ? だから、忙しいんじゃないのか?」


 純也が、何か言ってるけど……、そんなの私には関係ない。


「それより、凛子さんの事だけど……」

「……好きにすればいいでしょ」

「――え?」

「純也の好きにすればいいでしょ!」

「ど、どうしたんだよ? なにを怒っているんだよ?」

「純也は気にならないの? 優斗が、テストしか受けにきてないんだよ! しかも、クラスに来なくて! 保健室に登校って明らかにおかしいと思わないの!」


 何で、純也は優斗がおかしな行動を取っていることに気が付かないの?

 優斗のことを親友で、守るとか私と約束した癖に……。

 あの時の約束を忘れたの?


「――いや、いまのアイツは普通じゃないんだから、放置しておいても大丈夫だろ」

「普通じゃないって……、どうして? どうして? どうして? どうして?」

「み、みやこ?」

「えへへっ……。優斗が強いから? そう思っているの?」

「お、おう……。今のアイツは、昔から知っている優斗とは、まったくの別人だからな。だから、多少の問題は自分で解決できるから、そんなに過保護になる必要はないんじゃないか? だから――」

「だから……何?」


 何だろう?

 純也には分からないのかな?

 優斗が、異世界から帰ってきたって教えてくれた時に、何も感じなかったのかな?

 どう見ても、優斗は以前の優斗よりも存在が希薄で、何かあったら消えちゃいそうな程、弱々しくなっていた事に……本当に気が付いてないのかな?


「都?」

「もういい! 私、優斗の家に行くから!」

「――お、おい!?」

 

 純也の腕を振り払い、私は優斗の家へと向かった。





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