第459話

 保健室で、2日目のテストを終えたあと――、


「それでは帰ります」

「今日は、何か用事があるのですか?」


 そう住良木が聞いてくるが――、


「ちょっと対人関係で色々とありまして……」

「そう。明日もテスト頑張ってね」

「そうですね」


 正直、ここ一週間近くテスト勉強する余裕なんてなかった事から、俺が今まで受けた6教科のテストは、ほぼ壊滅的だと言っていい。

 まぁ、後悔は、あとですればいい。

 チャイムが鳴ると同時に保健室から出る。

 そして、昇降口へと向かっていると、階段を駆け下りてくる純也の姿が目に入った。

 俺は、咄嗟に女子トイレに身を隠す。


「純也、待ってよ!」

「都。遅いぞ」

「そんなこと言われても、階段飛ばしながら、私は降りられないから!」


 女子トイレに隠れていると、都と純也の声が!

 二人は、女子トイレの前を素通りしていく。

 どうやら、俺が咄嗟に隠れたのはバレなかったようだ。

 俺は、二人が保健室に入って行ったのを見届けたあと、小走りで昇降口に向かい、靴を履いたあと、校門へと向かう。

 既に、校門前にはリムジンが到着していて、運転手がドアを開けてくれていて、俺はすかさず車内に乗り込む。


「はぁはぁ……」


 どうして、こんなにスパイの真似事をしないといけないのか。

 だが、何となくだが、純也に捕まったらいけない気がする。

 それは、あくまでも直感であったが……。


「お嬢様。本日は、どうしますか?」


 息を整えたところで運転手が聞いてくる。

 

「そうね」


 答えながら、俺はスマートフォンをカバンから取り出して食べ放題の店をチェックしていく。


「近くのホテルまでお願い」

「ホテルでございますか?」

「ええ。ケーキバイキングに寄って行きたいの」

「お嬢様。お屋敷で、食事の用意をしておりますので、学外でのお食事は――」

「そ、そう……」


 お嬢様と言われても困るんだが……。

 中身は、男だしな!

 ただし、今、リムジンの車内には、女性のボディガードが3人と運転手が居て、誰も、俺の正体は知らない。

 身バレを防ぐ為にも……。


「分かったわ。屋敷へ移動して」

「畏まりました」


 車は、屋敷に向かって走り出す。

 その間に、俺は自宅に電話をする。


「ご主人様か?」

「ええ。そっちは何の問題もない?」

「うむ。それより、ご主人様、四六時中の演技は大変なのでは?」

「ほんと、それね……。とりあえず、一ヵ月間は、帰宅できそうにないから、上手く妹には伝えておいて」

「了解した」


 電話を切る。

 それにしても白亜は、俺の方に式神を飛ばしてきているのか、俺の置かれている状況を的確に正確に掴んでいるようだな。

 

 ――トゥルルルル。


「――ん?」


 着信音が鳴ったスマートフォンの画面を見ると、電話をかけてきた相手は都のようだった。

 おそらくだが、俺がテストをキチンと受けたのかどうかの確認の電話なのだろう。

 仕方ないな。

 今は電話に出る事は出来ないんだよな。

 胡桃たちには、俺が女装している事は他言しないように伝えてあるし。

 俺はスマートフォンの電源を切った。

 そして、もう一個の携帯電話から村瀬に電話をかけた。





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