第405話 第三者side

 首相官邸に、秘密裏に作られたテロ対策室。

 対策室には複数の巨大なスクリーンが設置されており、諏訪市全域のインフラが中国のファイアーセールにより落ちている様子が逐一報告されていたが――、


「総理! 千葉県警察の神谷警視長より、諏訪市全域のインフラを桂木警視監が取り戻したと連絡がありました」

「なん……だと……? どういうことだ?」

「わかりませんが、全ての県道、市道、及びガス、水道、電気、警察署や消防署など至るところの電気が復旧していきます。おそらく、神の力で、取り戻したのかと思われますが……」


 警視庁 サイバーセキュリティ対策本部から出向してきた男が、そう語るが――、


「君は、本当に神の力が人間の作りしシステムにまで関与してきていると本当に思うのか?」

「ですが、それ以外は考えられません。すでに打つ手がない状態でしたら。それに、神谷警視長からも報告が上がってきたあと、奪われていたシステムが全てこちら側で取り返せたことを考えますと……」


 夏目総理の険しい表情に、額から冷や汗を浮かべながら答える警察官。

 それを見た夏目総理は、対策室内の全関係者に向けて――、


「とりあえず、いまはシステムを復旧させる事に全神経を使え。諏訪市内の自衛隊官舎、消防、救急、警察にすぐに連絡を。それと――、向かわせている自衛隊は諏訪警察署と連携に、暴動を扇動している中国人を極力殺さないように無力化するように命令をだせ! すぐにだ!」


 日本国首相の指示が飛ぶ。

 先ほどまでは、インフラのシステムを完全に掌握されたことで、御通夜ムードだった様子とは真逆となっていた。


 ――だが……、総理の表情は晴れない。


「(桂木優斗か……。まさか、電子戦に置いても無類の力を誇るとは……、そんなことが有りえるのか? それも神の力だというのか? もしくは――)」


 そこで思考を止め、日本国総理大臣の夏目は頭を左右にふる。

 彼は考えてしまった。

 神社庁の神薙のことを。

 少なくとも、彼が知っている神社庁の神薙は、神と契約することで超常的な力を振るうことはできる。

 ただし、それはあくまでも自然に乗っ取った法則の上でと説明を受けていた。

 電子戦に関しては、神は人が作りしモノには関与はできないと。

 

「(それなのに、桂木優斗は、電子戦において中国からのハッキングに対応して見せた……。しかも、日本国最高のスーパーコンピューターを使った上で、手の打ちようがない追い詰められた状態を逆転してみせた。こんなことがありえるのか?)」


 心の中で自問自答する夏目は――、


「まさか!」

「総理?」

「何でもない。それより関係各所へ連絡急げ! それと、今回、諏訪市にファイアーセールを仕掛けてきたテロ犯たちの所在地の特定をしろ!」

「――わ、分かりました」


 夏目に叱咤された男が、数十台と並べられたノートパソコンへと戻っていく。

 その後ろ姿を見ながら夏目は――、


「(もし、これが神の力ではなく個人の力であるなら、その脅威は世界を――、いや、そんなことはない。桂木優斗が持つ力が、彼本人の力であるなど……あってはならない。そんな事が本当にあるのなら、彼は本物の化物と言う事になる)」


 ありえない、最悪な妄想をして溜息をつくと近くのテーブルに置いてあったペットボトルを手にして口をつけた。




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