第399話
「少しいいかね?」
無言だった中から一人の中年男性が、恐る恐ると言った様子で俺に話しかけてきた。
どうやら、俺の説得で心を鷲掴みにしたようだ。
「何でも聞いてくれ!」
「警察官で、男子高校生で、一般人って、一行で矛盾してないか?」
「……」
中年のツッコミに、ざわつく失踪者の方々。
「たしかに、矛盾してるよな?」
「ええ。そうね」
「警察官って一般人なのかしら?」
「国語力が――」
何故に、俺は、こんなにツッコミを受けないといけないのか……。
おかしい――、明らかにコレはおかしい――、
「ま、まさか――」
スパイが――、桜が失踪者の中にいて、俺を貶めようとしているのでは!?
「優斗君」
どう対処していいか考えあぐねたところで、
「国語は大事だぞ?」
そう、俺に都の親父はツッコミを入れてきた。
どうせ、俺の国語力は0点ですが何か?
「――と、とりあえず、元凶は倒したから、全員を無事に諏訪警察署まで案内する。すでに捜査員も、こちらに向かっているから、安心してくれ」
「アンタ、この国語力の足りない自称一般人と知り合いなのか?」
「ああ。彼の安全は私が保障する。まずは、こんなところから逃げることから始めよう」
保護した人は、都の親父に説得される形で、移動することになり、俺は怪我人の治療を行う。
その度に俺を驚いた様子で見てくるが、細かいことを説明することはしない。
保護した人数は23人。
全員をエレベーターで地上まで送り届けたところで建物から出ると、白い衣装を着た3人組が居た。
「旦那。無事だったんですか」
「……」
「青木ですよ! 青木!」
「ああ。そんな名前だった気がするな。それよりエレベーターを動かすようにしておいてくれて助かった」
「いえ。旦那が、うちらを保護してくれるって約束だったので……」
「ふっ、義理堅いな」
「そんな事ありません。それより神は倒したんですか?」
「まあな。もちろん、こいつも無事だ」
俺は四肢を斬り落とし達磨状態にした男を足元へ落とす。
その衝撃で、男は意識を取り戻したが、すぐに四肢を斬り落とした神経の激痛から気絶をした。
「大僧正様が……」
「問題ない、生きているからな。俺は、尋問は得意だから安心しろ」
俺は笑みを向ける。
何故か知らんが、3人の警備員は顔色が悪い。
「まぁ、お前達も、こうなりたくなかったら、裏切るなよ?」
「ひいっ!」
三人の警備員の内の一人が腰を抜かして後退りしていく。
他の2人は、前後に何度も首肯してくる。
「それにしても……、青木」
「は、はい!」
「諏訪警察署から捜査員は来てないのか?」
「――ま、まだ、来てません」
「ふむ……」
施設内に入ってから、それなりの時間が経過したと思うが、まだ到着していないというのは妙だな?
「まぁ、とりあえず電話して確認するか」
「それが、旦那。少し前から電話が使えないんですよ」
青木が率先して情報提供をしてくる。
「電話が使えない? 携帯の電波が立たないということか?」
「はい。固定回線から、テレビに至るまで全ての通信が利用不能になっているんですよ」
「どういうことだ?」
携帯電話が使えなくなるなんてことがありえるのか?
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