第395話 第三者side

「――クッ」


 重さ何十トンとも言える巨竜の巨大な質量。

 それを片手で受け止めた桂木優斗の腕は、粉砕されるが――、彼は高速で肉体を修復していくが、大質量を伴った巨竜の攻撃は、想像を絶する威力を内包していた。

 桂木優斗は、巧みな脚捌きで、大質量の巨竜の破壊的なまでの衝撃を、回りの生存者に向かわないようにと、自身の体で全て受け止め――、歯ぎしりしたところで――、


「早く離れていろ! 戦闘の邪魔だ!」


 肉体を修復を終え攻撃に転じる前に、叫ぶ桂木優斗に、目の前で巨竜が迫ってきた恐怖に身体を硬直させていた神楽坂修二は、頷くことも出来ず生存者の方へ這う這うの体で転がるようにして駆けていく。


「まったく――」


 そう愚痴りながらも、巨竜の頭を掴んでいた左手に力を入れていく優斗は、巨竜の頭部を前蹴りで吹き飛ばす。

 そして巨竜が吹き飛んだ大空洞へ向けて、自身の身を空中へと躍らせつつ、腰からデザートイーグルを抜き放ち――、銃口を巨竜の前頭部へと向け、トリガーを引いた。

 電磁場で加速されたレールガンは、電磁場を――、光りを纏い薄暗い大空洞内の闇を斬り裂き、巨竜の頭に着弾し爆発した。


「ガアアアアアアアアアアッ」


 反撃された事に対する怒りを内包した巨竜の叫びが大空洞内に響き渡る。

 高振動は、岸壁に罅を入れていく。

 崩落が始まる大空洞。

 それに伴い、天井からは数十トンを超える岩の塊の落下が始まる。


「ここでは――」


 あまりにも大規模な崩落が始まったことで優斗は、巨竜から距離を取るために、落下する岩盤を避け乍ら、移動するが――、一瞬だけ岩盤が巨竜の姿を隠す。

 それと同じくして、優斗の前方を隠していた巨大な岩盤が粉々に粉砕される。


「やばいっ!」

 

 咄嗟に身体を空中で回転させる優斗。

 そんな彼の腕を超高圧の水が切断する。

 空中を舞う優斗の右腕――、さらに粉砕された大岩の破片が、次々と優斗の体に突き刺ささる。

 優斗は、体を修復しながら、無事だった左目で巨竜を睨みつける。


「やってくれたな……」

「フシュルルルルル」


 小馬鹿にするかのように反応を示す巨竜に獰猛な笑みを浮かべた桂木優斗は――、


「いいだろう。この俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやる。楽に死ねると思うなよ?」


 一瞬で肉体を――、右腕を修復させた優斗は、空中に100枚を超えるコインを投げると、ショルダーからナイフを二本取り出す。

 そして、空中を蹴り一気に巨竜へと向かう。

 百を超えるコインは全てが電磁場により加速され――、巨竜に殺到するが――、唐突に半透明な壁に激突し全てが空中で爆発する。


「――くっ!?」


 桂木優斗が振り下ろした二本のナイフも、巨竜を全面に展開された壁に接触するや否や粉々に砕け散る。


「神壁だと!?(神言を有する完璧な防御を使うってことは……。神の権能を有しているということか……)」


 反動で吹き飛ばされた桂木優斗は、大空洞内の地面の上に転がりながら体勢を立て直し立ち上がるが、その隙を逃さず100を超える超々圧縮された水の刃が、桂木優斗へと殺到する。

 それらは、易々と身体強化した桂木優斗の肉体を切り刻む。


「はぁはぁはぁ……」


 肩で息をする優斗は、転がっている自身の左腕を見て舌打ちする。

 

「水に続いて、風まで操るのか……。厄介だな……」


 視認できる水の攻撃と、視認することができない攻撃。

 それらを織り交ぜられた複合攻撃に対して、優斗は溜息をつく。


「仕方ない。出し渋りしている状況じゃないか……」


 肉体を修復した優斗は、体内の細胞内に存在するミトコンドリア因子に命令を下す。

 ミトコンドリアは莫大なエネルギーを作り出す。

 桂木優斗は、体内の生体電流を操り、体内の細胞を――視神経を――、肉体の修復速度を限界まで強化していく。

 

「ここからは全力全開で行かせてもらおう!」


 ――『天蓋雷装!!』


 そう、優斗が心の中で叫んだ瞬間――、青白い極光の光と共に、桂木優斗の肉体を、青く神々しく光る雷が、彼の体の周囲の空間を埋め尽くす。


 青く光る雷の軌跡が発生した瞬間、桂木優斗の周囲に存在するすべての物質構成が分解――、蒸発する。

 融点温度1200度の岩盤が――、数十トンもの岩の塊が――、優斗の頭上へと降り注ぐが、それらが、彼の体に触れる前に――、岩の中に内包されていた砂鉄ごと蒸発し気体へと還元されていく。

 その範囲は、優斗を中心に3メートルほど。

 彼が纏っている青い雷は、10万度を優に越していた。


 そして、それを見た巨竜は――、


「ガアアアアアアアアアアッ」


 怒りとも困惑とも言える咆哮を――、神言を唱えると、数百を超える氷の刃を作り出し、優斗に目掛けて放つ。

 その様子を、冷静に――、冷徹に――、視ていた優斗は一瞬で周囲の状況を把握――、解析し手のひら手刀の形へと変えると巨竜へと向け、腕を振るう。

 それだけで10万度を超える雷の刃は、タケミナカタの力を宿した巨竜が放った氷の刃を瞬きすら許さない刹那の時間で蒸発させるだけでなく巨竜のレールガンすら無効化する体すら両断し――、その後方の岩盤すら大空洞の天蓋を含めてすべて纏めて消し飛ばした。





 

 

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