第229話
「それで神社庁としては、どういう対応をとるつもりなんだ?」
「神社庁としては、今回の呪物は特Aランク呪物と認定しておりましたので、特Aランクの霊能者を当てがっています。ただ、呪物が、かなり危険な代物でして――」
「福音の箱と同じくらいか?」
「――いえ。今回、神社庁が把握している呪物は、福音の箱を模して造られた呪物です。その為、そこまでは、危険だとは認識はされていませんが……、それでも各地に点在している呪物が共鳴しているとなると、予断は許されない状態です」
「なるほど……」
どうも話の内容的には、俺には関係ないとは言わないが、神社庁で対処できる範囲内に聞こえるな。
「桂木殿。福音の箱を返して頂くことはできませんか?」
「……何の話をしているんだ?」
「福音の箱ですが、桂木殿の御友人が所有していると占いに出ていますので、連絡をしました。すでに福音の箱との縁は切れているという事は判明しておりますが、福音の箱は危険だと言う事は代わりありませんので返して頂けますか?」
「占いを信じるとは、神社庁もあれだな」
「神薙の占いは、100%当たりますので、桂木殿と関係性のある方が所有している事は分かっています。バチカンに返却しなければいけない聖遺物ですので、お返しください」
「……あれは破壊する予定だ。あんな危険な代物を世の中に残しておくことは許されない」
「――ですが」
「くどい。お前だって、見ただろ? 多くの損害が出た場面を――。だったら、あんなモノを残しておくのは得策ではないし、俺がいなかったら、とんでもない事になっていたんだぞ?」
「……分かりました。――ですが、どのように保管しているのかを確認させて頂いても宜しいでしょうか?」
「仕方ない――。ただ、問題は起こすなよ?」
「大丈夫です。それでは、そちらにすぐに伺います」
電話が切れたあと、俺は椅子から立ち上がり体を動かす。
「――さて」
山崎に電話をかけて外で落ち合うことを説明する。
部屋から出たところで、パーティションで一室が区切られているだけなので、神谷が此方を見てくる。
「桂木警視監、お出かけですか?」
「所要で出かけてくる。何かあったら携帯に連絡してくれ」
「分かりました」
千葉県警察本部の建物を出たところで、しばらく待っていると車が駐車場に入ってくると、俺の前で停まり――、
「桂木殿、お待たせしました」
「――いや、全然、待ってないけどな。それよりも早すぎないか?」
「福音の箱については、神薙の一部と姫巫女様しか知らない極秘事項ですので――、すぐに伺いました」
「なるほどな」
助手席に座りドアを閉めたところで車は走り出す。
「住良木、稲毛海岸に向かってくれ」
「分かりました。それにしても稲毛海岸ですか? 保管場所に案内して頂けると思っていました」
「まぁ、そのへんはな――」
流石に、銃刀法違反しているような奴の家を教える訳にはいかない。
俺は言葉を濁し――、住良木は、「そうですか」と短く答え車の運転に集中する。
30分ほど、幹線道路を走ったところで、稲毛海岸に到着する。
視線の先には、ヨットハーバーが見える。
車をヨットクラブ横の駐車場に住良木が停めたところで、車から出る。
駐車場を見渡すと、山崎の車が既に停まっているが見えたことから先に到着して待っているのだろう。
駐車場から、防砂堤を抜けて海岸に出たところで、真っ白なサマードレスを来た黒髪の美女が立っていた。
その傍らには折り畳み式のテーブルが設置されており、テーブルの上には白い表面に黒い斑点が入ったエルピスの箱庭が、虫かごに入ったままで置かれていた。
「ずいぶんと待たせてくれたのう。桂木優斗」
「悪いな伊邪那美」
「ふん。まあ、よい。それよりも連絡どおり用意したが――、何か問題でも起きたと言ったところかの?」
「そうだな」
俺は、住良木を伊邪那美に紹介しようと振り向くが――。
「――ま、まさか……」
その言葉のあと、住良木は膝から崩れ落ち砂の上に座り込む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます