第212話
「そうだな……」
「優斗。とりあえず嘘は無しだ」
「分かっている」
嘘は無しだと前置きされたところで、どこまで俺の話を信じてくれるものか……。
「神谷、外に出ていてくれ」
「……分かりました」
「それと盗聴はするなよ?」
「了解しています」
頭を下げて部屋から出ていく神谷がドアから出ていき、ドアが閉まったのを確認したところで、波動結界を展開し、周囲を確認する。
隣の部屋には、都と胡桃の気配を感知した。
「となりに二人とも居るのか」
「ああ。その口ぶりだと説明は受けてはいなかったのか?」
「そんなことはない」
俺の言葉に、純也は頷くとソファーから立ち上がり備え付けの冷蔵庫から炭酸水を2本取り出すと戻ってきてテーブルの上に置くと、ソファーに座りキャップを開けてから炭酸水をラッパ飲みする。
「優斗。お前は、本当に優斗で良いんだよな?」
俺は左右に頭を振る。
「違うのか?」
「そうじゃない。正確に言うなら、優斗と言う存在ではあるが、純也や都、胡桃が知っている優斗という人間ではないと言ったところか」
「どういうことだ?」
「純也は、式神と契約をしたんだよな?」
「――ッ! なんでそれを!?」
「お前に、式神を与えた人物から話しを聞いた」
俺には霊力というモノが無いから、式神という存在を認識することが出来ない。
だが、どうやらパンドーラが言っていたことは嘘ではないようだな。
「見せてもらってもいいか?」
「別に良いと思う――、前鬼、後鬼」
純也の言葉に応じるように、唐突に部屋の中に出現するチワワサイズの仔犬が2匹。
真っ白でモフモフなフォルムから女性受けしそうな見た目だ。
「結構、あざといな」
「この姿の方が霊力消費を抑えられるらしい」
『我が名は、前鬼。主たる峯山純也と契約を結びし焦熱地獄を統率していた鬼の一体』
純也の説明のあとに、自己説明をしてきたのは赤い文様が入った白いチワワ。
『我が名は、後鬼。主たる峯山純也と契約を結びし灼熱地獄を統率していた鬼の一体』
続いて青い文様が入った白いチワワが自己紹介してくる。
「桂木優斗だ」
返事を返すと、赤い文様の入ったチワワが「ふむ。これから、宜しく頼む。桂木優斗とやら」と、語り掛けてくる。
「式神って初めてみたけど話すことができるのか……。俺が、知っている使い魔とは別物なんだな」
「待て待て! 優斗と、前鬼だけで、いきなり話を勧められても、まったく理解ない! それより、順序だてて話してくれ! こいつらは式神って言うのは、教えてもらったし、この科学の世界で式神っていう理解できない代物が存在しているもの、目の前にいる現実が否定しているから、それは、もう無理矢理納得するしかない。ただ――、高清水旅館からの一連の俺達を狙ってきた安倍先生の事や優斗のことをキチンと説明してくれ」
「使い魔には何も教えてもらってないのか?」
『我々は使い魔ではなく、誇り高き式神であり、我らの霊格は神使と同格か、それ以上である。使い魔のようなモノと一緒にされるのは甚だ遺憾である!』
俺の使い魔扱いに気にいらないのか前鬼が抗議の声を上げてくる。
「すまない。別に貶める意図があった訳ではない」
『ふん。わかっておる。――それよりも、我が主の質問に答えてくれると助かるのだが?』
何だか、やたらと上から目線で話してくるな、コイツ……。
女性に人気のチワワで、純也の式神じゃなかったら、ホテルの窓を破壊して外に投げているところだ。
「そうだな……。純也」
「ようやく本題か?」
「まぁな……。俺――、異世界で英雄してた」
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