第209話
――岩手県警察本部に到着したあとは建物内に入り、対策本部室へと向かう間、何人かの警察関係者から視線を向けられるが止められることなく目的地へと到着した。
「桂木警視監!?」
「神谷か」
対策室に入ると、一斉に室内に入ってきた人物を確認しようとしたのか俺へと視線を向けてくる警察関係者。
そして、小走りで近づいてきた神谷。
「連絡が取れなくなり、心配しました」
「ああ、かなりの激闘だったからな。戦闘時の余波で携帯は全部吹き飛んだ」
「どちらで戦って――」
「その点に関しては分かっているんだろう?」
俺はスクリーンへと視線を向ける。
すると日本海側の衛星写真が映し出されているのが見えた。
どうやら、衛星から俺が居た場所は割り出していたみたいだな。
「大まかな場所は特定できましたが、詳細までは――」
「なるほど。――で、住良木からは連絡はあったのか?」
「住良木さんは、厚木という名の陰陽師を連行してきたあと、仮眠をとっています。あと、御友人と接触した関係者と思わしき人物は、警察で保護後に、ホテルで休んで頂いています」
「そっか」
「おおっ! 戻ってきたかね。この時貞、君の友人を守るために大変だったのだよ!」
「そうなのか?」
「ま、まぁ……」
俺の質問に歯切れの悪い返答をする神谷に、時貞が何か問題発言をしたというのは、分かったが、化け物と化した安倍珠江を一般人が対処できるとは考えられない事から、深くは追及しないことにする。
「――と、ところで桂木警視監。もう大丈夫なのかね?」
時貞が確認するように聞いてくる。
「ああ、安倍珠江については殺したから福音の箱も処分したから、全て終わった」
「――え? 福音の箱を処分って壊したってことですか?」
「そうだが、何か問題でもあったのか?」
「バチカンに返す予定が……」
「戦闘中に、安倍珠江を消し飛ばす時にアイツの体内に存在していたからな。一緒に消し飛ばすしか方法はなかった。だから仕方ないな」
「それなら……」
「なん……だと!? バチカンに返却するはずの物を壊すなんて! 何ていう! って!? 何でもありません」
煩く喚き散らす時貞の首筋に手刀を添えると、すぐに黙る。
余程、死への恐怖があるのだろう。
「神谷。事件は解決した。あとは任せる」
「分かりました」
「それで、都たちが住んでいるホテルと、新しい身分証明書の発行と、出来れば少し金が欲しい。財布ごと全部吹き飛んだからな」
「畏まりました。あと連絡用の通信機器も至急用意しますので、少し待っていてください」
神谷は用意のためなのか対策室から出ていく。
すると、俺の周りには時貞守だけが残る。
「一つ聞きたいんだが――」
「な、何かね?」
「今回の騒動をキチンと解決したのだから日本政府は金を出さないとか、そういう不義理はしないよな?」
「も、もちろんだ」
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