第200話
「驕ったわね。神の力だけを与えられた愚かな人の子。私が、裁きを与えてあげるわ」
「御託はいい」
間合いを詰め、俺は女を殴りつけるが――、それを防がれる。
「良い事を教えてあげるわ。今の私は、この結界から無尽蔵の力を得ているの! 神々が作ったパンドラの箱の複製品である福音の箱――、それは無尽蔵の力を私に与えてくれているのよ。だから――」
女が回し蹴りを俺に放ってくる。
それを回避しつつ、足払いで相手の態勢を崩そうとするが上空へと浮き避けてきた。
「私は、幼少期から古流体術を仕込まれてきたわ。神の力を与えられただけの貴方とは戦いの年季が違うの! 見せてあげるわ! 本当の戦闘というモノをね!」
「ほう……」
俺は、体内の生体電流を操作し肉体をさらに強化すると同時に体内で増幅した生体電流により四肢――、五感の反応速度を強化する。
「余裕を見せていられるのも、今だけよ!」
珠江が、空から落下し――、蹴りを放ってくるが、半身の型から足運びで蹴りを避けると同時に一歩踏み込み肩で相手の態勢を崩し、肘を側頭部へと入れる。
「どうした?」
「――ッ! まぐれが上手くいっただけで調子に乗るな!」
憤怒の表情で接近戦を仕掛けてくる相手に対して、俺も真っ向から相手に攻撃を躱し続ける。
「当たらないっ! 攻撃が! コイツの権能は一体!? ――ぶっ」
俺のショートアッパーカットが、珠江の顎を砕き――、更に女自身に舌を噛ませ切断させた。
「あ、あああっ……」
「戦闘中に余計なことを口にするな。常識だぞ? まぁ、すぐに治るんだろう?」
「何を――」
俺は返事をせずに女の顔面を殴りつけるが――、固いモノを殴った感触と共に女は吹き飛ぶ。
そして――、女を吹き飛ばした先へと一瞬で移動し、背中を殴る。
「カハッ!」
血反吐を吐く女の姿を他所に、回し蹴りで女を海の中へと落とし――、髪を握りしめ女を引き上げてから空中に放り投げ顔面から腹まで数百発の拳を叩きこむが、俺は、その場からすかさず移動する。
一拍置き、俺が立っていた場所には数十の炎弾が着弾し、海水が沸騰する。
「ハァハァハァ。力が――、回復が――」
「最強なんだろう? この結界内に居れば――。そう言ったよな? だがな、結界を任意に展開できるってことは、その結界を作るための力を、お前は有しているってことになる。つまりだな……。この結界の力には限りがあるってことだ」
「――なっ!?」
「さっき言ったよな? 最強だと――、強力な再生能力を持っていると――」
俺は、女に近づきながら言葉を紡ぐ。
「――なら、死ぬまで殺し続けるだけだな」
「お前!」
「お前か? フッ――、言葉遣いから余裕が消えているぞ? 小娘が――」
右手を女に向けると共に、生体電流を収束させ原子を反転させ放つ。
女の体を反物質が貫くと共に反物質が着弾した海水は、反物質と反応し巨大なエネルギーを生み出し転換し巨大な爆発を引き起こす。
「――なっ! 貴様ッ! 一体何を――」
珠江が、言葉を言い終える前に、結界が巨大なエネルギーの爆発に耐え切れずに粉々に砕け散る。
まともに――、近くで反物質による莫大なエネルギーによる爆発の余波を受けた俺と珠江は肉体の5割を損失するが、俺はすぐに自身の肉体を再生させたが――、
「どうした? 本当の力を見せてくれるんだろう? ご自慢の結界は、その程度か?」
「……神々の結界を……、神の力で――。ありえない。そんなことは絶対にありえない……。だって、福音の箱は、神々の力を模倣して作られたのだから……、神の力では、絶対に破壊することは――」
「何を驚いている。戦いは、これからだろう?」
一歩近づく。
珠江は、そこで俺が近づいた事に気がついたのか放心状態から、すぐに意識を取り戻し肉体の修復を急ぐ。
「お前は、一体……」
「俺か? 俺は、ただの冒険者だ」
拳を鳴らしながら額から汗を流す珠江に近づき再生が始まったばかりの女の腕を手刀で切断した。
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